Bonus track 猫カフェデートしよ
(駅の雑踏音。足音、改札の音など)
「おーい、こっちだよー! こっち、こっち」
(彼女が駆け寄ってくる音)
「相変わらず、待ち合わせ時間ぴったりに来てくれるね。助かる~」
「今日はこの前のお礼ってことで、私の行きたいところに付き合ってくれるんでしょ? 楽しみだなぁ」
「ん? どこに行くのかって? ふっふっふっ、それは着いてのお楽しみです」
「多分ね、好きだと思うよ? すっごく癒されるところだから。ヨシヨシもいっぱいできるし」
「……って、なんでちょっと嬉しそうな顔してんの? あ、もしかしてまたヨシヨシしてもらえるかもって期待した? ざーんねんっ。今日はヨシヨシされる側じゃなくてする側なの」
「とにかく行こ! はい、手出して」
(彼女と手を繋ぐ音)
「えへへ、恋人繋ぎしちゃおう。ぎゅー」
「それじゃあ、レッツゴー!」
◆
(カランカランと扉のベルが鳴った後、にゃーと何匹もの猫が鳴く)
「到着! 今日のデートスポットは猫カフェでした!」
「来るの初めて? 私もなんだぁ。ずっと行ってみたかったから、一緒に来られて嬉しい」
「見てー! 可愛い猫ちゃんがたくさん。アメリカンショートヘアに、スコティッシュフォールド、マンチカン、ロシアンブルーもいる~。可愛い!」
「おいで、おいで~」
「あう……逃げられちゃった。まだ警戒されてるみたい……」
「ソファーに座って、来てくれるの待ってよっか」
(ソファーに腰掛ける音)
「それにしても、お店の中、綺麗だね。ふかふかのソファーに広々としたテーブル。あっちにはマッサージチェアまであるー」
「向こうにドリンクバーもあるよ。飲み物取って来るね。何がいい? ホットコーヒー? おっけー」
(彼女の足音)
(ソファーに座って待っていると、足もとでにゃーと猫が鳴く)
(猫が足にすりすりしている音)
(彼女が戻ってくる足音)
「あー、ズルイ! 猫ちゃんに懐かれてる! いつの間に~?」
(彼女がソファーの隣に座る)
「この子、スコティッシュフォールドだね。耳がたれてて可愛い~。全体の毛色は白で、耳と尻尾だけがクリーム色なんだぁ」
「あそこに名前が書いてある。なになに~、この子は、ササミちゃんだって!」
(猫がジャンプして主人公の膝の上に乗る)
「あ、膝の上に乗った。いいなぁ」
(猫を撫でる音)
「ふふっ、頭ナデナデすると、気持ち良さそうに目を閉じるんだね。可愛い」
「ねえ、私も触って良い? 怖がらないようにそーっと触るからさ。……いい? ありがとう!」
「ヨシヨーシ、いい子、いい子」
(猫を撫でる音)
「わぁ~っ! 毛並みがふわっふわ。気持ちいい」
「ヨシヨシ、可愛いね~」
(猫を撫でる音)
「ん? 近いって? だって近付かないと触れないじゃん」
「あっ、目開いた。きょろきょろしてる。どっか行っちゃうかな?」
「行かないで~。もうちょっとここにいて~。お願い~」
「あ~、待って、待って、駄目~。……あーあ、行っちゃった」
「ざーんねん。でも、可愛かったね」
「見て、店員さんが餌皿持ってる。ご飯の時間なんだぁ。だから膝から降りて行ったんだね」
(金属の餌皿を並べる音、カラカラと餌が揺れる音)
(にゃー、と猫が鳴きながら餌に集まってくる)
「きゃ~、見て! 猫ちゃんが一列に並んでご飯食べてる! 可愛すぎる~!」
「近くに行ってみよっか」
(猫がカリカリと餌を食べる音)
「か、可愛すぎる~! 一生懸命、ご飯食べてるね」
「みんないい子だね~。たくさんご飯食べられて、偉い、偉い」
「はぁ~、癒される~。ずっと見ていたいくらいだよ」
「さっきのササミちゃんも一生懸命食べてるよ。可愛いね~」
「あっちの子は、食べ終わって爪とぎしてる」
(猫が爪とぎする音)
「あっちの子は玩具で遊び始めた」
(猫が床を走り回る音)
「ふふっ、ササミちゃんは食いしん坊だ。他の子が残したご飯を食べようとしている」
(猫がカリカリと餌を食べる音)
「食べ終わったみたい。見て見て! ササミちゃん、またこっちに来てくれるよ。嬉しい!」
「おいで、おいで~」
(にゃー、と猫が鳴く)
「ここ座ろっか。よいっしょ」
(ソファーに腰かける音)
「え? 今度は私の膝に乗ってくれるの? いいよ。おいで」
(猫がジャンプして膝に飛び乗る音)
「わっ、結構重たい。でも、ふわふわで可愛い~!」
「頭触ってもいいかな? 失礼しまーす」
「ヨシヨシ。いい子、いい子」
(猫を撫でる音)
「可愛いねー。ふわふわだねー」
「ヨシヨーシ。いい子だねー」
(猫を撫でる音)
「いい子、いい子、ヨシヨーシ」
「……ん? どうしたの? そんなにまじまじと見つめて」
「触りたい? いいよ、触っても」
「え? 触りたいんじゃないの? じゃあなに?」
「何でもないって……えー、気になるじゃん」
「言ったら引かれるからって? 別に引かないよー」
「じゃあさ、ここで言いづかったら、耳元でこっそり言って? それならどう?」
「うん、引かないからなんでも言って?」
(ソファーから少し立ち上がり、彼女の傍に近付く音)
「……え? 猫ばっかりヨシヨシされてズルイって……」
「ふふっ……くふっ……あっはっはっは!」
「待って、待って! そんなこと思ってたんだぁ」
「笑い過ぎ? ごめん、でも、おかしくって!」
「猫ちゃんに嫉妬しちゃったんだ。そっか、そっかぁ」
「馬鹿にしているわけじゃないよ? 可愛いなぁって思っただけ」
「言わなきゃ良かったって? ちょっとー、そんなに落ち込まないでよー」
「平気だよ? こんなことくらいじゃ引かないもん」
「ごめんね、寂しい思いさせちゃって」
「ほら、そんなに暗い顔しないで。……そうだ、ちょっとだけ耳貸して?」
(ソファーから少し立ち上がり、彼女の傍に近付く音)
「お家に帰ったらさ、たくさんヨシヨシしてあげる。頭撫でて、ぎゅーってして、一緒に寝るの。今日はお泊りセットも持ってきたから、朝まで一緒にいられるよ」(耳元で囁くように)
「だからそれまで我慢しててねっ」
(主人公がソファーから立ち上がる音)
「ん? どうしたの急に?」
「……ってちょっと! 今すぐ帰ろうとしないで! まだ時間余ってるんだけど!? もっと猫ちゃんをヨシヨシしたいよー! ねえ、聞いてる?」
(にゃー、にゃー、と猫たちが騒ぎ出す。カランカランと店を退出する音)
「わ……本当に出て行っちゃったよ。もう、勝手だなぁ……」
「はぁ……これじゃあヨシヨシ中毒だよー……。困ったなぁ……」(溜息をつきながら呟く)
「でも、そんなところも大好き」
~おわり~
◆
最後までお読みいただきありがとうございます!
本作は、第3回「G’sこえけん」音声化短編コンテストに参加中です。
「音声化したヨシヨシ彼女に癒されたい!」と思っていただけたら、★で応援いただけると嬉しいです。
落ち込んだ時にひたすらヨシヨシしてくれる年下彼女が尊いんですけど。 南 コウ @minami-kou
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