第13話
「さあて、今日は何をしようかなあ・・・」
今日は地球から飛ばされてきてちょうど250年たったようだ。
こちらに一緒に来た会社携帯はなぜかずっと起動し続けており、なぜかこちらの時間で時を刻んでいたのだが、今ではむしろ時計機能だけを使用するようになってしまった。
「まあ、ぶっちゃけ時計を見る必要なんてないんだが、昔の暮らしを思い出せなくなるのも嫌だしな。」
「渡会さんとの連絡もとうの昔に途絶えて、今でも食料だけは送られてきているがどうやら対応しているのはAIのようだし。」
「まあ、食料の形状がどんどん知らないものになってきて形状はカロリーメイトみたいなものしか送られてこなくなったから、もしかしたら地球の現状は全然違うんだろうな。」
渡会さんと昔会話したときに6400年だかなんだか行きますよとか言っていた気がするから正味3年くらいしか時間は経過していないんだろうけれど、時計の進む時間はどんどん早くなりどんどんやることもなくなり今ではとりあえず朝目が覚めたら何かしら気になることをやる超絶暇人人生を送るようになっていた。
「とりあえずカロリーメイト(仮)を食べて考えますか」
崖の縁に木製の家がある。この250年の間に4回は建て直してどんどん容量がよくなりもはや大工職は板についている。今回の家にはウッドデッキを作り外でご飯を食べれるようにダイニングテーブル(一人用)も自作してみた。
椅子に座りいつものようにぼんやりと眺めていると後ろから声が聞こえてきた。
「ちょっと、椅子の数が足りないんじゃないかな、僕はどこにすわればいいのさ。」
250年誰とも話していないせいか、初めその声を聴いてついに幻聴が聞こえてきたのかと思った。
「そりゃあ長いこと一人でいるしな、むしろ今まで聞こえてこなかった方がおかしかったかも」
「ちょっと!!なんで無視するのさ!宙を向いて話してないでこっちを見てよ」
先ほどの声がより大きくなりこちらを向くように要求してくる。
「ずいぶん自己主張の強い幻聴だな。」
「幻聴じゃないって!!!」
テーブルの上に誰かが乗った。その勢いと音で思わず椅子から転げ落ちてしまう。
「うわあ!なんだ!だれだ!?」
「やっとこっちをみた!、もうどれだけ無視してくれるんだよ」
そこには人のような存在が座っていた。
人のような四肢を持ち体格は大人だが体の表面がほのかに光っており、人ではない印象を受ける。
「おまえは、だれだ?」
「ああ、ごめんごめん。とりあえず自己紹介をした方がいいよね。」
「僕の名前はアイン、簡単にいうと神のような存在だね。」
「神?」
「そう!ずっと君を見ていたんだ。」
「見ていたってどこから」
「どこからといわれると難しいね、物理的に言えば空からだし、時間的尺度でいえば君がこの森の中に現れたときからかな」
つまりは250年の間、俺のことを見てきたことになる。
「こっちに来てからずっとってことか。」
アインは笑顔のまま頷く。
「ずっと君と話ができると気を待っていたんだよ。そして、ついにその時が来たんだ」
こちらとしては何にも変わらないただの一日の始まりだったわけだが、どうやら自称委神的にはどうではないらしい。
「実はね、こちらの世界に君を読んできたのは僕なんだ」
「え、いやそれは違うだろ。」
「否定されるとは思わなかったね、読んだ本人がそう言っているのに」
それはおかしい、現に、昔渡会さんから今回こちらの世界に来たのは何とかという部品の故障のせいだときかされていた。(あの部品の名前なんだったかな)
「うん、うん、そうだよね、そうなるようにしたんだ。」
「そうなるようにした?」
「そう、この世界はね、君のいた世界と違ってエネルギー量が小さいんだ。これは君が昔話していた彼が言っていたことであっているよ。でもね、だからと言って人間を運べるほどのエネルギーを放てるかというとそんなわけないんだ。」
「じゃあ、なんで俺はこの世界に。」
「そう!よくぞきいてくれました!!」
アインは右手の人差し指を点に掲げて得意げにしている。と同時に空中に映像が映し出された。
「うお、なんだこれ。」
「今からスライドを使って説明するね。」
スライドとか久しぶりに聞いたぞ、プレゼンでもはじまるのかよ。
「あ、そうそう、このフォーマットは君のいた世界で使われていたパワーポイントというものだよ。分りやすいかと思ってこの方法にしたんだ。」
確かにわかりやすいかもしれないが、なにぶん250年も経っているからどんなものかも忘れたし、パワーポイントが空中に映し出されるという光景が、進んでいるのか遅れているのか文明の矛盾を感じてしまった。
考えているうちにスライドショーが始まる。
”この世界について”
地図が映し出される。どうやら割と大きな大陸のらしい。
「この世界はウーデクセンといいます。これは君も知っているね。
で、大陸のように見えるかもしれないんだけれど、どちらかというと島国に近いんだ。といっても一つの大きな国があるわけではなく島のあちこちに集落が点在していてコミュニティの大きさによっては国ようなところもあるって感じかな。」
「ただね、ここ最近は戦争がひどくて文明がいほろんじゃったんだ」
「いや、滅んじゃったんだって・・・」
「いやあ馬鹿だよねえ、詳しくは言えないんだけれど文明を維持するための人口が戦争でいなくなっちゃったんだよね。そこから文明レベルも人口も減りに減っていって現状、生き残った人類が保てる文明レベルで推移しているってわけさ」
かなり軽い感じで説明しているがそんなんでいいのだろうか。
「でね、ここからが本題なんだけれど。」
スライドが2ページ目に映る。
「君に文明の再建をお願いしたいんだ!!」
「・・・いや、お願いしたいんだと言われましても。」
「なんだよお、テンション低いなあ。」
「そういわれても理解が追いつきませんよ、スライドも1枚だったからパワポの意味もないし。」
「う、まあまあそれはパワポの件は置いといて、とにかく文明の再建をお願いしたいんだ。でも無理は言わない、今あるところから人類が滅亡しないように手を貸してくれれればそれでいいよ。このままいくと人類はもう少しで滅びてしまうんだ。」
軽いんだよなあ、言葉が。本当に信頼してもいいのかしら。この神(仮)
「とりあえず、アインさん?私はこの森の中でしか生活をしてきていないからほかの人類とかかわりがないんだけれどそんなやつが文明の再建なんてできないと思うんですけれどね?」
「そんなことないよ、君はこの250年の間に普通の人間からちょっと普通じゃないん人間にジョブチェンジしているんだから」
「いや、名にその安易なジョブ。いやなんだけれど。確かに長年生きているから普通の人間ではないけれどかといってもともとは普通の人間なんだけれどな。」
「うん、うん、そうだよね。そう思うのもむりはないか。でも君も数十年前に人を見ていると思うよ?わすれちゃったかな?川のそばとかで」
そういわれてみるとそうだ、、もう何十年も前に崖の一部が崩れ外の世界があらわになったことがある。だが、なぜか雪の壁に覆われており冬場は雪で、そのほかの季節は雪が溶けたせいで大きな川になって外界に出ることはかなわなかった。
そんな時に川の向こうで人影らしいものが動いていた時があった。どうやら畑を作っており、カロリーメイトしか食べていなかった俺はうらやましそうに見ていた気がする。
「どう?思い出した?」
「思いだした。だが、彼らは数年もしないくらいにいなくなった気がする。」
そう、彼らを見かけたのは5年くらいの間だった気がする。そのため、記憶から消えていたのだ。
「そうだね、あれから50年は立っているかな。ちょうど文明が崩壊し始めた時なんだ。彼らは戦争から逃げ延びて森の中を開墾して生活を始めたころの人類だよ。
逃げてきたからあの土地を使っていたんだけれど、もともと人の住める土地ではないから数年で撤退してしまったよ。」
そうだったのか、まあ確かにこの辺は森と川があるが地面はほぼ岩でできている。
川の近くに少し土があったから畑を耕したのかもしれないが本来は適した土地ではないのであろう。
「そうだったのか」
「とりあえずこれで人類がいることはわかったね。で?どう?やってくれるかな?」
山奥の修練者 @Noborifuji
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