仕舞い込んでいた時計の針が、再び鼓動を響かせた

滴る汗
水桶に冷やされた大きなスイカ
蝉の声響く、小道の木陰
逃げ水──

これらは作中語られてはいません
そんな文字は必要ないのです

作品から感じる息吹を浴びて
私の脳裏に描かれた情景には、
それらが鮮やかに映し出されています

ふと、舞い戻ったふるさとの大気の下で
不意に再会した、男の子と女の子

あの頃とは違う匂いと、
変わらない面影

動き出した時計の針は
まだ錆び付いてはいないみたいですよ

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