短編として制限された中の展開と描写が美しい、すぐに読めるので一読を
滴る汗水桶に冷やされた大きなスイカ蝉の声響く、小道の木陰逃げ水──これらは作中語られてはいませんそんな文字は必要ないのです作品から感じる息吹を浴びて私の脳裏に描かれた情景には、それらが鮮やかに映し出されていますふと、舞い戻ったふるさとの大気の下で不意に再会した、男の子と女の子あの頃とは違う匂いと、変わらない面影動き出した時計の針はまだ錆び付いてはいないみたいですよ
夏、久しぶりの帰省、都心より少しだけ澄んだ空気。なつかしいアルバムから見つけた思い出の写真。ふと思い出す、子供時代の淡い恋。今また止まっていた時間が動き出す――そんな掌編です。不思議とこの題材、夏だからこそ情緒を感じる。うるさいくらいに響く蝉の声や、真夏の日差しこそ、ぴったりなのです。夏って良いものだったよね、と思わせてくれます。猛暑もポジティブに捉えられるようになるかも!!
断捨離の最中、とある写真を見つけます。そこに写る懐かしい思い出。和むような想いを馳せて。それは過去と分かっていても、今、この瞬間から未来へと繋がるような体感を覚える。ひと夏のドラマ、素敵な一作です。