EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)49

クライングフリーマン

強行突破

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =======

 ============== 主な登場人物 ================

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。現在は休暇中。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

 本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。

 大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

 神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。

 芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。

 用賀(芦屋)二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。


 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

 佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。通称佐々ヤン。

 花菱綾人・・・南部興信所所員。元阿倍野署刑事。通称花ヤン。

 横山鞭撻・・・南部興信所署員。元大阪府警刑事。通称横ヤン。

 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

 用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。

 幸田仙太郎・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。

 倉持悦司・・・南部興信所所員。

 真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。小柳と一時不倫をしていた。

 友田知子・・・南部家家政婦。本来は、芦屋グループ社員。


 =====================================

 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


 ※『模倣犯』とは、他人が起こした犯罪の手口をまねた犯罪。また、その犯人を指す。

 ※『北新地ビル放火殺人事件』とは、大阪市北区曽根崎新地(通称:北新地または新地)で起った、放火殺人事件で、被疑者自身が重傷、その後死亡した、事件である。


 午後1時。EITO大阪支部。会議室。

 小町が、ごねていた。

「ええか。小町。事件に大小は無いんや。警視の階級を持ってるお前なら分かっている筈やろ。」

 コマンダーこと大前は、説諭していた。単なる火事の場合はEITOが行くよりも消防で充分だろうと言ったからだ。とにかく、例年になく火災は多い。しかし、選別するのは、小柳警視正だ。大前も警視正だが、大阪府警の委託で始まったEITO大阪支部だから、先輩の小柳警視正には、大前は逆らえない。

 尤も、EITO大阪支部を立ち上げたときスポンサーになった芦屋グループの方が府警より『偉いさん』なのだが。

 マルチディスプレイに、その小柳警視正が映った。

「コマンダー。立てこもりだ。事もあろうに、場所は北新地だ。『北新地ビル放火殺人事件』が起ったビルから100メートルほどだ。」

「『北新地ビル放火殺人事件』と言うと、ヤケクソになった犯人、被疑者が『京都のアニメ製作会社の事件』の模倣犯やろうって言われた事件ですな。」

「うん。幸い、火災はまだ起っていない。そのビルは、その事件が起った後、総務大臣が『逃げ場の少ないビルを徹底調査する』って言いながら、数の多さから対処が遅れている物件だ。来月にはテナントが全撤去、取り壊しが決まっている。また、マスコミの餌食になるな。行政の遅れは怠慢だと。府庁に連絡して吉本知事に『事件が起きた周辺から撤去建て替えを進めるべきだったんじゃないか』って、嫌味を言っておいたよ。」

「また、思い切ったことを。それで、住民やテナントの社員やらは?」

「立てこもりしている犯人のいる、4階のクリニック以外は全員引き揚げた。だが、クリニック従業員や患者は、逃げられていない。それと、野次馬がどんどん集まっている。」

「了解しました。とにかく、現場に向かわせます。」と、大前は返事をして、溜息をついた。

「兄ちゃん、間違い無く、EITOの案件やな。」と総子は言った。

「コマンダー。この前の事件と同じようには、いかないと思います。今日は風が強い。オスプレイが不安定です。」と用賀が言った。

「これ、使いましょ。」と、二美が言って、銃の様なものをとりだした。

「本郷君の発明の一つ。『超高速発熱器』よ。あのビルの向かい側に、取り壊し中のビルがある。ショベルカーを借りましょう。今、一美に連絡する。」

「よし、半分以上、野次馬整理に廻そう。南部興信所にも助けて貰おう。」

 午後3時半。New新地曾根崎ビル。

 1階にEITOエンジェルズが到着すると、「お嬢。」と呼び止められた。

 総子と小町が同時に振り向いた。

 そう言えば、京都では、小町はお嬢と呼ばれていたな、と総子は苦笑した。

 体型から推測したのか、幸田が近寄り、こう言った。

「地下鉄の北新地駅出口は封鎖した。駅員と、花ヤンと横ヤンが誘導してる。倉持と所長が交通整理の警備員の応援に入った。4階以外は無人や。被疑者は柏木哲。36歳。傷害のマエがある。更生して入った会社でトラブル起こして自棄になってた。別れた元女房は、現場の今井クリニックの元看護師の薫や。柏木は復縁迫ったが、あっさり断られた。不審に思って柏木の家を訪ねた薫は、柏木が、京都のアニメ会社の事件の資料や、ネットで買った爆薬の領収書や日記を見付けて、警察に通報した。保護司の先生も今井先生もエエ人やのになあ。」

「幸田。あんた、クリニックの電話番号分かる?」「ああ。これで、合図するさかい、電話して。」「気イ反らすんやな。よっしゃ。」

 幸田が離れると、「今日子と弥生以外は、野次馬整理を手伝いに行って。」と総子は指示した。

 午後4時。

 二美が運転するショベルカーが4階に到着した。

 二美の合図で用賀は、ショベルの中から、『超高速発熱器』を宛てがい、スイッチを入れた。

 インカムを通じて作業を察知した総子は緊急用ガラケーで幸田に合図を送った。

 クリニックの電話が鳴る。

 クリニックの留守番電話が反応し始めた。

 柏木は、何が起っているのか、理解出来なかった。5分もすると、装置の熱で窓ガラスが割れた。

「今や!」総子と小町は、メダルカッターとシューターで柏木を狙った。

 メダルカッターとは、押すとプロペラのような刃が飛び出す武器で、シューターとは、うろこ形の手裏剣である。両方とも、銃火器とは縁遠い、一時的な傷が付く程度の武器で、警察ではないEITOの定番の武器となっている。

 柏木は、仰け反って倒れた。

 割れた窓ガラスの破片を蹴り飛ばして、用賀が侵入した。小町と総子は柏木の腕を取り押さえた。

 弥生と今日子は、捕縛されている、院長以下クリニックの職員と患者数名を開放にかかった。

 数分で、用賀は、柏木の腹に巻いたダイナマイトの解体に成功した。

「チーフ。ここにいた人達は全員無傷です。」と、『元看護師』の今日子が報告した。

 総子は、長波ホイッスルを吹いた。

 長波ホイッスルとは、犬笛に似た、人間の耳に聞こえづらい周波数の通信機器で、簡単な合図に用いられる。オスプレイで自動受信した音波データは、EITOの基地と警察に同時に送られる。受信した警察は、警察無線で、現場に合図を送る。

 やがて、警官隊を率いた、佐々ヤンこと佐々刑事と、真壁、一美、そして、小柳警視正が上がってきた。

「ご苦労だった、EITOエンジェルズ。あ、それと、EITOガーディアンズ。」

 用賀に気を遣って、小柳は用賀を褒めた。

 用賀は、警官隊に、ダイナマイトを手渡した。

「あ。これ。」佐々刑事が素っ頓狂な声を上げた。

「警視正。ライター、『しけって』ますわ。」

 小柳は、佐々の肩を叩いて、先に部屋を出た。

 午後6時。総子のマンション。

 友田知子は、赤飯を炊いて、総子を待っていた。

「赤飯炊く程とチャウけどなあ、妊娠してへんし。」と総子が言うと、「すんませんナア、精力小さい旦那で。」と、南部は戯けた。

「ほな、ごゆっくり。」と、笑いながら知子は出て行った。

 友田知子は、本来は、芦屋グループ社員だ。多忙で、料理の出来ない総子を見かねた三美が、マンションと家政婦を用意したのだ。

「あのクリニックな。明日移転するらしい。明日だけ、半日診療で。元々引っ越す予定やったさかい、丁度良かったかな。あの被疑者、有罪?重い?」「まあな。前の新地の事件の時は、京都のアニメ会社みたいに、自分自身も火傷して。結局死んでだけどナア。躊躇ってたんやろな。元嫁さんは、裁判の時に、情状証人に立つって、言ってるけど、準備してた物証があるからなあ。ただ、誰も死んでへんし、執行猶予つくかなあ。『世間の風は冷たい』って言うけど、前科あると、やっぱりキツいんヤナア。」

「世知辛い世の中やナア。外国人は罪犯しても、あんまり罰せられヘンのに。」

「ああ。あの新兵器。バーナーみたいなもんか?」「いや。電波使って熱起こすらしい。凄いなあ。弥生の弟は。」

 南部が、食べ終わった食器を片づけようとした時、手を置いて、「私も熱起きてるンやけど。風邪とちゃうのに。」と、総子は言い、『情熱的な』キスを南部にした。

 南部は悟った。帰り際、知子がニヤニヤしていた訳を。赤飯と一緒に食べたのが、『レバニラ炒め』だった意味を。

「覚悟しいや、寅次郎。」「はい、奥様。」

 長い夜が始まった。

 ―完―




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