第60話 3D化を目指そう!

 

 撮影も終わり鷲尾さんと帰ろうとしたところ、大きな扉が開かれた。俺と鷲尾さんも一度利用した事がある場所で、出てきたのも。

 

「あ、雅くん」

「お、奈月くん」

 

 多分ダンスレッスンをやってたんだろう。汗が滲んでる。

 

「鷲尾さんも」

 

 雅くんは会釈する。

 

「どうも、金華さん。今は休憩かな?」

「そうです。飲み物なくなっちゃったんで」

 

 空のペットボトルを持ち上げながら言う。

 

「お二人は撮影ですか?」

「そうだね」

 

 鷲尾さんに続けて「さっき終わったところ」と伝える。

 

「そうなんですね。そういえば前回の動画観ましたよ」

 

 編集もあってか、それなりの物にはなってたのを俺も確認してる。やっぱりこう言うのはプロって全然違うんだと痛感したね。

 

「グラタンでしたっけ? 美味しそうでした、鷲尾さんのやつ」

 

 鷲尾さんは表情の変わらない雅くんを何秒か見つめてから「ありがとう」と。どう言う感情で言ったか探ろうとして、諦めたんだと思う。

 そして、雅くんは多分普通に感想言っただけだと思う。

 

「奈月くんのはオレとしては遠慮したいですけど」

「いやいや俺だって成長してるから」

 

 グラタンは特殊すぎるだけだし。

 と言うか、そういう雅くんだって作れないんじゃないのか。

 

「……そうだ。ダンスレッスンでしょ?」

 

 と言う事は、だ。

 清水さんも居るはずだし。

 

「清水さんとは仲良くできてる?」

 

 俺が尋ねてみると「……頑張ってるよ」と答えが返ってくる。

 

「そっか」

「うん。最近は水野さんからメッセージ来ても二分以内で返せるようになったんだよ」

 

 胸を張って言う雅くんに対し鷲尾さんは首を傾げていた。

 

「あ、飲み物買いに行かないと。レッスンも再開しちゃうし」

「ごめん。呼び止めちゃって」

「大丈夫」

 

 雅くんは走り去っていく。

 

「奈月くん、僕たちは帰ろうか」

「そうですね」

 

 そういえば雅くんにも姉ちゃんのプレゼント何が良いか聞きたかったんだ。雅くんならメッセージでの方が良いかもしれない。

 

「……それにしてもVtuberでダンスとかってなると3Dだもんなぁ」

 

 鷲尾さんが歩きながらに。

 

「やっぱり清水さんも、金華さんもトップで活躍してるし、売れてるんだよね」

 

 言われてみると、俺は凄い人と話せてるのか。

 

「よし。僕たちも3D化目指そうか」


 3D化はVtuberの目標としてアリかもしれない。

 ただ。


「……とんでもない事やらされそうな気がしますけど」

「あはは」


 笑ってるけど、本気で考えてるだろうなってのは分かる。デビュー前からそれなりの付き合いになってるし。

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【朗報】ヒキニート高校生からVtuberに転職しまして…… ヘイ @Hei767

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