呪い

サイキック

呪い

「――くん。」

見覚えのある柵。ここは確か、高校の屋上だったか。4年前、最後に行ったきり、行ってなかった。なんて呑気に考える。そして、柵の前には最愛人がたっている。あぁ、俺はこれを知っている。あの日も、こんな風に冬を伝える肌寒あき風が吹いていたっけ。そうして彼女は、笑顔でその言葉を発する。聞きたくもないその言葉を

「私たち、別れませんか?」

その後確か、俺は縋り着いた。その彼女に、みっともなくも。あの泣くのを我慢しながらも俺に必死に心配をかけまいとするその笑顔を。その顔は呪いだ。俺に一生まとわりついて離れない。そんな呪いだ。

「……」

なにか言葉を発しようとして、そこで目が覚める。どうやらゲームの周回で寝落ちをしていたらしい。

「……再悪」

彼女と別れてからは4年たった。引きずってないはずだが、あんな夢を見てしまう。今になって、彼女の夢を見たのには少しだけ心当たりがある。今周回をしてるゲームのキャラクターが少し彼女に重なる部分があるのだ。しっかりと言語化はできないのだが、雰囲気が彼女に似ているのだ。しかし夢の中の彼女はゲームのキャラクターに近づいていた。彼女ならきっと「私達、別れよっか」と言うはずだ。

高二の秋に彼女と別れて、1年間は同じ高校ですれ違う度に気まずさがあった。しかし、進学先が別々になった今では互いに上手い距離感を保ちながら、友人としてやっていけてると思う。たまに何人かで酒を飲みに行くこともあった。そういえば、この間飲みに行った時は彼氏が出来たとか報告をしてきた。俺はその時どんな反応をしたっけ。

室内に放置されて、常温になった水を飲む。不思議と何故か涙が流れてきた。

「...はは、まだふっ切れられてないのか」

1人の部屋にそんな男の言葉が悲しく響いた。

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呪い サイキック @syjl

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