ナナたん おかえりなちゃい

オカン🐷

ナナたん おかえりなちゃい

「ナナはどうだったの?」

「もうご機嫌で帰って来たわよ。アヒル隊長になってキッズスクールのみんなが後について来てくれたって嬉しそうに」

「そうか、それは良かった」


 どーたん、どーたん、おーはなな、なないのね、そーよかあたんも、なーないのよ


 ナナはゾウの鼻のように右腕を伸ばしブラ、ブラと振りながら歌った。


 アハハハッ


「ゾウさんの歌っていうより、ナナたんの歌だね。そりゃ」


 へへへ


「ナナはいいよな。何しても楽しそうで」

「ハーにいたん、たのちくない?」

「うん、ばあちゃんの『帝王学』はいらないなあ。『魔王学』ならまだしも」

「ていおー?」


 ルナはオレンジの皮を剥く手を止めた。


「ママったら、まだ早いって言ったのに」

「ルナちゃん、落ち着いて。ナイフ片手に怒らないで。僕からママに言っておくよ」

「うん、説得してね。みんなフルーツはいらないの? メロンもマンゴーもあるわよ」

「ちょっとお腹いっぱい」


 口を大きく開けたナナ。


「あーん」

「ナナたん、何食べる?」

「めろ、たべう」

「もっと食べる?」

「うん、おいちい」


 その様子を見たカズ。


「女の子は小さな頃から別腹があるんだ」





「ナナちゃん、植物園にバナナもらいに行こう」

「うん」


 庭園拝見のとき、植物園でもらったバナナが美味しかったとケントが言った。

 でも、養蜂の蜜を集めている最中で植物園には入れなかった。


「ママにバナナもらう。タイワバナナがおいちいって」

「へー、そうなんだ」


 リビングから入って来たナナを見て驚いたルナ。


「わあ、ナナたん、そんな所から。おかえりなさい」

「たたいま。ママ、ケントくん」


 ナナが後ろを振り返った。


「ケントくんもおかえりなさい」

「ただいま」


 ルナはふと考えた。


「ケントくん、途中でバス降りて、おうちの人、心配してない?」

「バスの先生にいっておいたからだいじょうぶ」

「随分としっかりしているのね」


 身体が大きい分、しっかりとするのかしら。

 ルナは感心してケントを見詰めた。


「手を洗って来て。おやつにしましょ」

「ママ、タイワバナナは?」

「台湾バナナ? 今日は入荷しなかったって」

「えっ、ないの?」


 ケントのがっかりした声。


「ごめんね、ケントくん、明日はあると思うから、また遊びに来て」






「ママ、やたらと機嫌がいいんだ。親父が骨になって帰って来たというのに。帝王学の話も、もうしないって」


 長年、別宅で暮らしていたカズの父親は、心臓麻痺であっけない最後だった。

 もし、何かがあったときは家に帰してくれと秘書に言い伝えてあったらしい。


 フフフ


「最後に帰って来るのはやっぱり私の所なのよね」


 嬉しそうに笑みを浮かべるママだった。




           【了】



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