認知症で介護施設に面会にゆく、孫が主人公。
そう書くと、暗い、葛藤、切ない、などが思い浮かぶでしょうか。
たしかに切ない、老いの寂しさ、もあるのですが、不思議とこのショートは、光があふれています。
ひとつは、この作者さまの情景描写の的確さ。
ぼんやりした、認知症特有の表情に、す、と光が宿る瞬間。
そういった繊細な瞬間を、美しい描写で切り取るのが、お上手な作者さまです。
ひとつは、「夏のあの日」の陽光の眩しさ。
ひとつさ、おばあちゃんの穏やかな性格。
この3つから、読者は、するするーっと最後まで淀みなく読めてしまいます。
読了後は、老いの切なさと、あふれる光が胸に満ちます。
読みにくい事は、けしてありません。
ぜひ、ご一読を!