第40話


 食事が終わると生産者ギルドの5人が工房長の所に来た。


「この建物も従業員も生産者ギルドの傘下になれ。そうなれば安定する」

「個人でやっていくのには無理がある、傘下になった方が身のためだぞ」

「意地を張らずに一緒にやって行こうではないか」


 生産者ギルドの言っている事が色々おかしい。

 5人がかりで丸め込もうとしている。

 経営が厳しいんだろうな。


 今この工房で作った燻製肉は冒険者の間で流行っている。

 もうここの燻製肉しか食べないと言っている冒険者までいる。


 対して生産者ギルドは肉を買い占めて価格の高騰と工房の取り込みをする計画だったが見事に失敗した。

 肉を買い占めたつもりが工房が生産者ギルドよりもおいしい肉を流している。

 加工している分値段は高くなるがそれでも売れている。


 で、工房は解体した肉を前より少し安い値段で売り始めた。

 生産者ギルドは肉を街に流すしかなくなり、更に前の販売価格より安い値段で売るしかなくなった。

 そして冒険者ギルドが生産者ギルドに肉の販売を制限した事が決め手となった。


 生産者ギルドは思うように利益を上げられなくなった。


 工房長は毅然とした態度で生産者ギルドの誘いを断ると生産者ギルドは向きになって工房を取り込もうとまくしたてるがそれも断って帰っていく。


 生産者ギルドのあの必死さ。

 金銭面で苦しくなったんだろうな。


 生産と販売に力を注ぐ工房。


 生産だけじゃなく、根回しに金を使う生産者ギルド。


 コスト競争ならここで働くみんなが勝つだろう。


「生産者ギルドって経営が苦しいのかな?」

「あくまで噂だが、苦しいまでは行かなくとも利益率はかなり下がっているようだ」


「もっと、事業を拡大します?」

「出来れば、そうしたい」

「分かりました」


 この工房は街に必要だ。

 生産者ギルドにはライバルが必要だ。

 生産者ギルドが独占すると高い買い物を余儀なくされる。


 しばらく素材を流そう。


「配当はまだ払わず事業を広げましょう。料理、美味しかったです」

「ありがとう、本当にありがとう!」


 俺とスレイアはギルドに向かって歩く。


「ノワール、嬉しそうだね」

「ああ、俺の前世って会社員だっただろ?」

「うん」


「会社では働けば働くほど怒られて難易度の高い仕事を押し付けられた。後輩は皆辞めてしまった。やる気はなくて義務感だけで働いてた。でも工房は動けば動くほどみんなが喜んでくれて、嬉しかったんだ」

「そっか、私もこの街が、好きだよ」


 その言葉を聞いて思った。

 スレイアは俺の想いを分かっている。

 それが心地いい。


 ギルドに帰るとサブクエで前に助けたおばあちゃんや他のみんながいた。


「ど、どうしたんですか?」

「ノワールさん、今日は休み何でしょ?」

「はい」


「皆で料理を作りたくて、受け取ってくれるかしら」

「喜んで」

「良かったわ。でも、たくさん作っちゃいそうで、それでもいい?」


「はい、おばあちゃんの美味しい料理をみんなにも配っていいですか?」

「ええ、みんなにも食べて欲しいわ」


 おばあちゃんは不規則にギルドに現れて受付嬢や冒険者にアップルパイを配りに来る事がある。

 おばあちゃんの料理は好評だ。


 サブクエで助けた人の多くは錬金術師だ。

 錬金術師は素材さえあれば自分で生活を立て直せるためサブクエと相性がいい。

 そして錬金術師は料理がうまい事が多い。

 調合や鍛冶は絶妙な配合やバランスで成り立っている為料理も出来る事が多いのだ。


 みんなが喜んで帰って行った。

 モモが帰って来るとモモの髪はきれいに切り揃えられいつもより可愛く見えた。


「モモ、可愛い」

「うん、可愛いよ」

「えへへへへ、ありがとうございます」


「今日の夕食は奉仕依頼をしたみんなが食事を作ってくれるから一緒に食べよう」

「はい、いただきます」


 おばあちゃんが一足早くやって来た。


「食事の前にアップルパイを作って来たわ」


 おばあちゃんがストレージからテーブルにアップルパイを出す。


「え! 8つも!」


 テーブルには8つのアップルパイが並び1つだけでも大きい。

 冒険者から「うまそうだな」と声が聞こえる。


「モモ、スレイアも食べよう」

「その前に、アップルパイを切りますね」


 おばあちゃんがアップルパイを切り分けていく。

 そしてモモとスレイア、俺の順に更に乗せた。

 モモが今にも食べたそうにアップルパイを見ていた。


「モモ、スレイアも食べよう。これ絶対美味しいやつだから」

「いただきます」

「私は紅茶と一緒に食べようかな」


「うん」


 俺は紅茶を注文しつつ受付嬢に切ったアップルパイをホールで渡した。


 そして冒険者にも「おばあちゃんが作った美味しいアップルパイです」と言って配ると「ノワールはまだ食べてないだろ」と笑われた。

 甘いものが苦手な人以外全員に配ってから俺も1切れ食べる。


「うん、美味しい、おばあちゃんの作る料理は全部美味しいです」

「良かった」


 そして他のみんなも次々と料理を持って来る。

 俺は料理を配ったが途中で酔っ払った冒険者に捕まり話を聞く。

 モモはたくさん食べて眠そうにしていたので宿で寝て貰う事にした。

 今もモモは育ち盛りだ。



 こうして夜になった。

 俺は貰った食事をつまんでみんなに配り話を聞いた。

 この街はまだ細かい問題はいっぱいあるようだ。

 こんなにたっぷりと人の話を聞いたのは久しぶりな気がする。


 ……今まで休みを取ってこなかったから皆が遠慮していた事が分かる。

 休みも重要だな。


 真夜中になりギルドで一番いい部屋に入るとベッドでモモが寝ていた。


 チャイナ服のような魔装、


 スリットから見える太もも、


 モモは本当にきれいになった。


 でも、育ち盛りでもある。


 たくさん食べてたくさん寝る。


 それがモモの為になる。


 でも一緒の夜を過ごしたかった思いもあった。

 モモは結局今日どう思ったんだろう?

 俺が好きな事が錯覚だと気づいたのかもしれない。

 現にモモは寝ている。


 寝ているのは一緒の夜を過ごす事を断わる言い訳にもなる。

 今日は無理か。

 

 俺はモモの体にシーツをかけた。

 その瞬間にモモが目を覚ました。


「おはよう、ございます」


 モモのとろんとした目が酔ったようにも見えてとても魅力的だ。


「モモ、無理に起きなくていいぞ」

「ノワール、私はノワールの事が好きです」

「……」


「私を、抱いてください」

「いいのか?」

「はい、私を抱いてください」


 モモがチャイナ服の魔装を解除した。

 下着姿になったモモの胸が揺れた。

 

「分かった、うん、俺もシタいよ」

「私もシタいです」


 モモが前かがみになってブラを外す。

 そしてパンツを脱いでいった。


 俺は両手を差し出すモモに右手を差し出した。

 モモが俺の右手を引っ張りベッドに引き寄せる。

 夜が始まる。



 ◇



 夜のモモはいつもより野性的だった。


 おっとりした見た目だがベッドの上では声が大きく反応もいい。


 そしてうまかった。


 子供の頃からそう言ったことは教えられてきたらしいが中々進化をせず使う機会が無かったようだ。


 モモはスタミナがあり朝日が昇る直前まで抱き合い、朝日と共に眠る。


 俺は今満たされている。


 思えば前世も会社に入る前は家族も、友達とも楽しい時間を過ごしていた。


 会社に入って辞めた後輩から転職の誘いがあった。


 でもその時の俺は何かをする気力も無かった。


 後輩は何度も俺に言ってくれた。


『先輩、疲れてるんですよ』


『今頑張って動けばブラック企業から抜け出せますよ」


『先輩! 信じてください、今動けば後で楽になります、あの会社よりは絶対マシになりますから!』


 後輩は俺の事を思って言ってくれていた。


 俺はあの時、それでも手を取らなかった。


 前世の人間すべてが悪かったわけじゃない。


 でも、人は追い詰められると新しい事を始められなくなる。


 サブクエで助けた人はそう言った人達だったように思う。


 俺は簡単に盗賊を倒す事が出来た。

 あっけないほどに簡単だった。

 でも、事前に訓練をしていなければ余裕ではなかったように思う。

 ……点と点が繋がるような感覚があった。


 俺は力を手に入れ成長が止まった。

 モモも、スレイアも、ギルドのみんなも、サブクエで助けた多くの人が善人だ。

 今日話をして色々出来る事があると知った。


 前世の会社員時代、仕事を押し付ける人が得をして難易度の高い仕事をやればやるほど損をするのが嫌だった。

 俺が求めていたのはその逆だ。


 悪には悪で、善には善で、それがこの世界に合っている。


 隣で眠るモモの頬の撫でる。


 何でもあり、その方が俺にとっては都合がいい!




 あとがき

 筆が進まず弾切れです。

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パーティー追放する悪役に転生したけど俺以外のパーティーもみんな転生者だった~ストーリーがぶち壊れた世界でそれでも俺は死なずに奴隷ハーレムを作る~ ぐうのすけ @GUUU

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