85話 沙羅の両親

 神谷が学校に来なくなって一週間が経った。


 春香達では無く何故か真理から聞かされたのだが、どうやら神谷は家から全然出ようとせずにいたので、両親に無理矢理連れ出さられて田舎の方で暮らしているらしい。

 

 その話を春香達に聞こうとしてももう神谷の話はしないでと言われた。

 今回の件で三人はそれほど嫌な思いをしたのだろう。

 まぁ、俺自信神谷がどうなろうとそこまで気にならないので良いんだけどね。


 因みに俺は今家で春香、愛、沙羅と一緒にいる。


「平和だな……」


 俺は最近まで神谷の事でずっと気が抜けない状態だったのでふとそう呟いた。


「どうしたの急に?」


 俺の呟きに春香がきょとんとした顔でそう答えた。


「いや、不安要素が全部なくなってようやく落ち着いたなって思ってさ」

「そうね……やっとって感じね」

「ふふふ、そうでだね、私も最近は凄く楽しい」


 愛は安心したようにそう言って沙羅は笑顔でそういう。

 

 これからは本当の意味で楽しめ……いや待て、不安要素あるじゃねーか。

 俺ってまだ沙羅の両親と話して無いじゃん……


「なぁ、沙羅?」

「ん?なに?」

「そういえばさ、俺ってまだ沙羅の両親と話して無いんだけど……」


 俺の記憶だと沙羅の両親は超親バカだったはずだ……


「あ、あぁ、そうだったね……忘れてた」


 沙羅は少し引きつった顔でそう言った。


「沙羅の両親か……大変そうね」

「ふふふ、沙羅ちの両親って凄い沙羅ちの事好きだもんね」

「はぁ、そうなんだよね……」

「因みに俺の事はどの位話したんだ?まだ会わせるのは早いって言ってたけど」

「実は彼氏が出来たって事と名前と愛ちゃんと春香ちゃんと同じとしか言ってない……」

「えっと、どんな風に関わってるとかも?香織さんと真理の事もか?」

「うん……」


 思ったより全然話せてないんだな……


「まぁ、沙羅の事だからあれでしょ?恥ずかしいのと親が過剰反応しちゃうとかでしょ?」

「そうなの、悪琉君の話をしようとすると直ぐに大丈夫なのか?とか騙されて無いか?とか清い付き合いをしてるのか?とかを凄い勢いで聞いて来るから凄く話しづらいの」


 この世界の清い付き合いがどの位の事なのかは分からないが、前世と同じなら出来て無いな……


「ははは……沙羅ちの両親なら簡単に想像出来るよ」

「そうね……でも大丈夫じゃないかしら?最悪私達も話すし」

「まぁ、どちにしろ遅かれ早かれ話さないとだし、そろそろ挨拶に行きたいけど……大丈夫か沙羅?」

「そうだね、もう私だけだもんね……うん、それだったら今日話してみるよ!」

「あぁ、お願いな」

「頑張って沙羅ち!」

「もし何かあれば言ってよね沙羅」

「うん!」



★相沢沙羅(side)


 私は家に帰ってる途中考えていた。


「傑君の事があってすっかり忘れてたよ……」


 私の親は昔から良く親バカって言われていた。

 その理由は私が凄く引っ込み思案だったのが原因だろうけど……


 私は春香ちゃん愛ちゃん傑君と出会う前までは友達が居なく凄く心配されていた。

 それ故に両親が人一倍私を心配するようになったんだよね。

 三人に出会って両親は凄く喜んでくれた覚えがあるから。


 お父さんとお母さんは傑君の事を凄く気に入っていて私が彼氏できたって言った時は傑君だと信じて疑っていなかった。

 その事を自分の事の様に喜んでくれていて嬉しかったのだが、傑君じゃないのでどうしようかとも思った。

 その後傑君じゃないと伝えたら凄く驚いていたし、騙されてるんじゃないかと心配されたしね。

 愛ちゃんと沙羅ちゃんもそうだと伝えたら多少ましになったけど。

 まぁ、私が傑君以外の男の子と話す事が無かったからそのせいもあるんだと思うけど……


「大丈夫だとは思うけど少し心配だな……」


 傑君の事件について説明した時は酷く落ち込んでたしな……

 流石に悪琉君ともうエッチな事をしたなんて事は絶対に言えないよね。

 ていうか香織さんと真理ちゃんの話も出来てなかったよ……

 

「まぁ、私が本気で思いを伝えれば信用してくれるよね……それに悪琉君と会えば絶対に信用出来る人ってわかるだろうし」



 私は今両親と机を挟んで話している。


「ねぇ、お父さん、お母さん……話があるの……」


 私がそう言うと二人は真面目な表情になった。


「彼氏の事か?」

「うん」

「そうね、そろそろちゃんと話さないとね……」

「まぁ、俺達がしつこく聞き過ぎて話しづらくなったのはすまなかった……」


 ふたりもその事を気になってたんだ……


「うん、それで悪琉君の事なんだけどさ、今度挨拶に来たいらしいの」

「そうだな……けどその前にその悪琉君の事を聞かせてくれないか?」

「そうね……」

「わかった……」


 私は悪琉君と出会ってから今までの事を香織さんと真理ちゃんの事も含めて話した。


「そうか……本気なんだな……」

「うん、本気だよ」

「本気なのは沙羅の顔をみれば伝わって来るわよ……」

「そうだな……やっぱり沙羅が変わったのって悪琉君のおかげなのか?」

「うん……そうだよ、愛ちゃんと春香ちゃんの影響もあるけど大きい要因は悪琉君だよ……悪琉君と一緒にいたいから変わりたいって思ったの」


 改めて両親にそう話すのは流石に恥ずかしい……

 でも今まで抱えていた事を全部話せて凄くスッキリした。


「実は前回沙羅の話を遮ってしまった時に二人で話し合ったんだ……沙羅が変わり始めていた事も気付いていたし、楽しそうにしていた事にも気付いていたが心配で二人して慌ててしまってな」

「うん、それは分かってるよ……二人が私を心配してくれてるって事はね」

「それで、次話す時はしっかりと聞いて、そこで判断しようしてたんだけど大丈夫そうだな……」

「そうね、それに香織さんもなんでしょ?」

「うん、将来的にはね」

「そう……香織さんも春香ちゃんも愛ちゃんも信用してるなら安心出来そうだしね……」

「じゃあ、呼んでも大丈夫?」

「あぁ、俺達も話してみたいからな」

「そうだね……私達もきちんと話さないとね」


 良かった。意外とあっさり認めてくれた!

 悪琉君に会えば絶対に良さを分かってくれると思うし!


「それじゃあいつ呼んでいい?」

「そうだな……明日でも大丈夫そうか?」

「ちょっと待ってね、確認してくる」


 私は浮足立って部屋に戻ってスマホを手に取り悪琉君にLIMEを送った。


『悪琉君!』

『どうした?』

『今お父さんとお母さんに確認したら会ってくれるって!それで急だけど明日って空いてる?』

『明日だったら空いてるぞ』

『それじゃあ明日の午後私の家に来れる?』

『あぁ、行けるぞ』

『それじゃあ、明日お願いね!』

『気合を入れて頑張るよ』


 悪琉君とのやり取りを終えた私は再び両親も元に戻った。


「お父さんとお母さん!明日大丈夫だって!」

「そうか、楽しみだな」

「そうね」


 私が笑顔でそう言うと二人は微笑んでそう返事をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼馴染だからと言って余裕かましてる主人公とエロゲ竿役として転生した俺 青猫 裕 @aoneko_yuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ