第25話 新しい朝(エピローグ)
クレイはヘブンの件を
「今回
「そのパイロットの頭は大丈夫か? 一度病院で
「そうですね。ではきちんと報告しましたよ。お忘れなく」
「わかった」
クレイはほっとした。
そのころ、ヴィンセントのオフィスでは変なうわさが出ていた。
「ヴィンス、知ってるか? 例の爆発の調査で
「面白いね」
「宇宙の
「それはたいへんだな」
AEMの開発が終わりフィル・ライアンはサラとリンの元に戻って一家三人の生活が始まっていた。そこへエミーとサーシャが十四歳になったアナを連れてきた。これで四人家族に戻る。
「アナ!」
サラが泣いて抱き着いてきた。
「お母さん、久しぶり」
アナの方は落ち着いている。
リンは初めて見る年上の姉をまじまじと見つめる。二歳上だが自分より少し背が高く大人びている。正直自分よりきれいだ。誇らしくもあり羨ましくもある。
なんともきみょうな感じだが、心にあいていた穴が満たされていく感じがする。
アナはリンやフィルともだきあって、家族が完全に元にもどった。
リンがアナにたずねる。
「アナの記憶ってどうなったの? あとヘブンで何を覚えた?」
アナは答えた。
「色々詰め込まれているよ。私の4歳までの
フィルが笑った。
「まだまだ人間の記憶容量の5%くらいしかないよ。これから人生の楽しい記憶が一杯追加されていくよ」
サラも笑った。
「そうね。色々経験するといいわ」
アナが言った。「そうだ、リンの記憶をもらっているからパイロットもやりたい」
「どうぞ。リンと鳥の巣に来るといいわ」
フィルが少し離れたところで笑顔で立っているアンドロイドをちらりと見て付け加えた。
「小さいアナもいるよ。スターバックに最高級のアンドロイドにアップグレードしてもらった。これで5人家族だ」
アナが笑った。「そうだね、こっちにおいで、小さな私」
大きなアナが小さなアナを抱き上げているのを家族は微笑ましく見つめた。
AEMを使った新しい社会システムがついに完成した。AEMは誰もが豊かになるような優れた政策を次々と採用した。学校のあり方も大きく変えた。
子供達は好きな時間に好きな学校に行くことができるようになった。絵を描いたり、本を書いたり、好きな事ができるようになった。
訓練に行く途中でエミーがアレックスに言った。
「スターバックが言うには、ここのところのAEMによる進歩で、地球はレベル6に近づき始めたそうよ。雰囲気が変わってきたよね」
「確かに、経済が安定化してきたとか貧困が改善されたとか言っているし、犯罪も病気で苦労する人も急激に減ってきた」
「直接関係ないけど、アレックスも体が随分動くようになったんじゃない?」
「ああ、車いすだった頃が今では信じられないよ」
最近ではリンに加えアナが訓練生となり、サーシャまでが時々遊びに来る。みな女の子でアレックスをこえる腕前である。
「パイロット技術は私やミアだけじゃなくていろいろな子に追いつかれそうだけどね」とエミーが言う。
「いいや、そこはまだ負けてない。あの子達のやり方は
「強がりね」
「大体、エミーのアバターだって実際操作していたのはエメラルドだろ。直接アバターを動かすなんてずるいよ」
「アレックスもヘブンのサポータを作った方がいいね」
「いやだね。俺は正々堂々と勝負する」
「そうだ。リンとカイルが新しい操作方法を次々と編み出しているよ。知ってる?」
「ああ、少しな。考え方が
「いいコンビね。リンもいいお兄ちゃんができたって感じ」
「カイルは世話好きだからちょうどいいよ」
「リンはお姉ちゃんも戻ってきたからうれしいよね」
「いっぺんに二人もな。大きなアナと小さなアナ」
「なんだかんだ言って、アナがずば抜けているかも。パイロット操作はもちろんだけど、ヘブンの知識がすごいよね。もうびっくり」
「あれ、お前もヘブンのエメラルドと知識融合しているはずだけど、随分差があるな」
「どういう意味よ」
「アナはレベル7っぽいけど、エミーはレベル5でしっくりきている感じ」
「ばかにしてるな!」
「いやいや生粋の地球人って感じなだけだって」
「絶対ばかにしてる」
「怒るなよ。エミーも見た目だけならアナといい勝負だって」
「中身に差があるって事じゃない。あったまきた」
「怒るなって、さあ訓練いくぞ」
アレックスはダッシュして逃げた。エミーが後ろから追いかけていった。
― 了 ―
エメラルド(SF 子供向け改訂版) 🌳三杉令 @misugi2023
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