第9話 大地の世界(ヴァース)



 ヴァースは、人々を活かすために生贄になった。


 その世界には、崩れかけの大地があったので、人々が生き続けるために丈夫にする必要があったからだ。


 しかし人々はヴァースに何も感謝しない。


 何も思う事が無い。


 怒ったヴァースは、人々を土の上からのけて、大地を空へ高く飛翔させた。


 誰も住めなくなるが、そんなことはヴァースの知った事ではなかった。


 ヴァースは、賞賛が欲しかったわけではなかった。


 大仰に感謝されたいわけでもなかった。


 ただ自分の事と、自分がやった事を忘れられるのが嫌だった。


 しかし人間はそれすらできなかった。


 だからヴァースは人間に見切りをつけて、見返りと言う概念の存在しない動物達だけを乗せて、どこかへと旅立った。



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五つの柱と四つの塔 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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