第8話 涙の世界の物語(ルイ)



 その世界では、人々は、人類を絶望させようとする魔王と戦っていた。


 その巨大な悪を倒すために、少年であるルイは勇者になり、人のために剣を持つ。


 彼は弱虫で泣き虫で臆病。


 戦いには向いていない性格だったが、戦うための才能があった。


 だからルイは、自分を隠して戦い続ける。


 たくさんの敵を葬り、多くの障害を乗り越え、少しづつ強くなった。


 やがて成長した彼は、魔王の前に立つ。


 魔王城で待ち構えていた魔王は、好敵手であるルイの到着に歓喜した。


 そして、魔王とルイは三日三晩戦った。


 どちらかが勝ち、どちらかが敗北する。


 ルイは瀕死の重傷で、魔王はかすり傷程度だった。


 そんな最後の瞬間、魔王は告白する。


 私は、人間の涙が好きなのだ。


 だから涙を流してくれるなら、生かしてておいてやろうと。


 ルイはその提案を断った。


 涙ならもう流した。


 十分すぎるくらいに、と。


 だから少しだって、もういらないのだ、と。


 そして、最後の一撃が決まって、どちらかが勝ち、どちらかが敗北した。


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