レッツ、パンチ‼︎


 バーバラとのデートを1週間後に控えた俺は、滅茶苦茶萎えていたがお金を少し稼いでおこうという事で再び塔の世界を訪れていた。


 お金には困ってないし、デート代を全て俺が出しても問題ないとは思うのだが、なんかこう........ねぇ?稼げる内に稼いどかないとなとか思ってしまうのですよ。


 何せ、俺は人生で一度も女の人と遊んだことがないんだし。


 小学校の頃から延々と家にひきこもってはゲームばかりをやっていた弊害か、友達もいなければ彼女もいない人生。


 そんな灰色(当時は楽しかったし別に後悔もしていない)の人生の中に突然舞い込んできた薔薇色のイベントとなれば、できる限りの準備はしておきたいのだ。


 多分、今の俺は傍から見たら結構キモイと思う。


 自分でもどうなんだろう?と思うし、バーバラはニコニコしていたが、舞い上がりすぎな気もする。


 そんな興奮を落ち着かせるためにも、ゴブリン、お前一旦面を貸せ。殴らせろ。というわけだ。


「次いでに新しい武器種の実験もしようかな。槍よりも使いやすくて護身用に向いているやつ」


 そんなこんなで、アゲイン塔の試練。


 今回はお金稼ぎがメインのため、一度クリアしている第一の試練に挑戦するつもりだ。


 丁度いいし、武器の性能テストもやるとしよう。


 現在、俺が使用した武器種は三つ。


 片手剣、大剣、槍の比較的簡単な部類のものばかりであり、塔がオススメしてくれたやつだけを触っていた。


 となれば次は、1つ難易度の高い武器種を触ってみようと思う。


 それで来て尚且つ、護身用に使えそうなやつを。


 ミノタウロスを討伐したことによって、多分危ないことに首を突っ込みつつあるからね。


 塔の外ではクソザコナメクジな俺にとって、スキルが使える使えないは割と死活問題に関わるのだ。


 後、スキル強化がなくてもそれなりに戦えるやつがいい。


「持ち運びが便利で、目立ちにくいとなると双剣かメリケンサックになるんだけど........カードも気になるんだよなぁ」


 俺はデッキ構築型ローグライクが大好きな人間だ。


 そんな奴がカードという言葉に惹かれないわけが無い。しかし、こいつだけ難易度が桁違いに高いんだよな。


 1個だけ“超上級者用”って書いてあるし........


「とりあえずカードは後だな。今回はメリケンサックで行ってみよう。」


 流石に初心者用武器がある程度使えるようになったからと言って、急に超上級者用の武器種を手に取るのは無理がある。


 というわけで俺が選択したのは、中級者向けの武器として紹介されているメリケンサックであった。


 メリケンサックと言えば、指にはめて使うパンチ力を高めるための武器。


 四つの穴が空いた銀色のものが有名と言えるだろう。中には先端を尖らせて刺突武器のように使うものもあるが、今回支給されたメリケンサックは誰もが想像するThe、メリケンであった。


「うーん。普通!!中にはグローブのようなメリケンサックとかあるらしいし、もしかしたら後々商店に並ぶかもしれないな」


 そしたらかなり使い勝手のいい武器となる。手袋式のメリケンサックがあれば、常に身につけることも可能だしファッションとして見られるだろう。


 この世界のファッションは奇抜なものが多いし。


 一応ブランド物とかもあるらしいのだが、この世界の物流は地球よりも悪い。


 当たり前だわな。飛行機とか飛んでいるならともかく、この世界に飛行機は無いしなんなら鉄道だってないのだから。


 基本移動は歩きだし、早くても馬車を使う程度なのだ。


 世界的に有名なブランドとかもあるらしいが、それが入ってくることは少ない。


 となると、その国や街ごとに独特なファッションが生まれる。


 やがてそのファッションは個人の中で変化を続け、オリジナルとなるわけだ。


 ムサシのように袴を着た人もいれば、エレノワールのように左右非対称の凄く変わった服装をしている者もいる。


「グローブを手に入れたら、常につけておくかな。比較的治安のいい街とは言えど、危険な目にあうことはあるだろうし」


 俺はそう言いながら、早速メリケンサックのスキルを確認。


 メリケンサックはかなりシンプルなスキル構成となっているらしく、かなり使い勝手が良さそうであった。


 ──────


 リーチ、範囲が狭い代わりに、基礎能力が高い。機動力も高く、通常攻撃も早い。


 スキル1 オラァ!!

 魔力消費極小

 クールタイム極小

 ただのパンチ。突っ込んでいく。


 スキル2 ぶっ飛べ!!

 魔力消費極小

 クールタイム極小

 殴った相手をノックバックさせる。距離は威力によって変わる。


 スキル3 ラッシュだ!!

 魔力消費小

 クールタイム小

 めっちゃ殴る。範囲が少し広くなる。


 スキル4 気合いだ!!

 魔力消費?

 クールタイム中

 全てのステータス上昇。魔力が切れるまで持続(任意のタイミングで切る事も可能)。


 ──────


 つまり、殴って吹っ飛ばして、めっちゃ殴れということである。


 スキル4に関して、今まで無かったバフ系統のスキルだな。


 倍率がどの程度なのまるで分からないから強いのかどうか分からないが、全てのステータス上昇という事は、俺の情けないパンチも強化されるのかもしれない。


「何気にノックバック系のスキルも初めてか。相手を強制的に動かせるってのは強いよな。使い方次第では滅茶苦茶化けそう」


 スキル1はただ殴るだけだが、スキル2はかなり面白そうな効果をしている。


 ノックバック。


 つまりは、相手を強制的に弾き飛ばすという事。


 正確に言うと、アクションゲームでキャラクターが攻撃を食らった後の行動不能状態の事なのだが、今どきは攻撃を受けた時に発生する後ろへの強制移動の事を指すだろう。


 それで言っちゃうと、スタンとかもノックバックとして扱われちゃうしね。


 のけぞりとも言われているか。


 今までも魔物に対して一定以上のダメージを与えると、相手の攻撃がキャンセルされたり少し後ろに下がったりと隠れた仕様が見え隠れしていたが、今回ははっきりと“ノックバック”と明記されている。


 これは効果に期待できるし、使い方次第では滅茶苦茶な悪用ができる可能性もあるだろう。


 一応、状態異常系のスキルに分類されるかな?いやー今から使うのが楽しみだな。


「スキル2の挙動の確認は絶対だな。今後重要になるし。んで、スキル3の説明が雑すぎないか?なんだよ、めっちゃ殴るって........」


 そして、スキル3の説明が雑すぎて困る俺。


 出たよ、塔の悪い所。


 めっちゃ殴るって、どのぐらい殴るんだよ。


 オラオラですか?それともボラボラですか?あ、無駄無駄か!!


 某黄金の戦士達の事を思い出してしまう。個人的には結構好きな漫画だったよ。特に好きなのは四部だね。


「っと、じゃなくて、どうなのこれ。どのぐらい殴るんだ?」


 説明が細すぎても困るが、雑すぎても困る。


 世の中のゲームはそこら辺の塩梅を上手くやっているんだなと俺は、深く感心した。


「まぁいいや。今回はお試しだし、色々と試しながら進むか。第一の試練はそこまで難しくないしな。もう慣れたし」


 結局、スキル3がどの程度殴るのか分から無かったので、取り敢えず攻略を始める。


 ちなみに、ポイント強化された能力値を適応するのかしないのかという選択肢が出たので、適応するを選択しておいた。


 多分一度攻略した試練は、ポイント強化の適応を無しで遊べそうだな。自分で難易度調整も出来てしまうわけだ。


「さて、行きますか!!」


 俺はそう言うと、メリケンサックをガン!!と合わせて新たな武器を試すためにゴブリン君の元へと遊びに行くのであった。


 レッツ!!パンチ!!




 後書き。

 アリアリ入れ忘れた。

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異世界ローグ〜異世界転移したらローグライクができるらしいので、上振れ理論値を出して気持ちよくなりたい〜 杯 雪乃 @sakazukiyukino

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