第3話 新しい仲間?

 何もしないよりは何か脱出の手掛かりを見つけないと。どのみちこの森の中を進むしかない。


 めいと相談した後、森の中に入って数時間が経った。ここに生えている木々は10メートルを優に超えている。周りに生えているきのこや植物はどれも地球で存在しないもので、空腹を感じつつも毒を恐れて食べる気にはなれない。


(そうだ。食料もどうかしないといけなかった。みず、水がとにかく欲しい)


「…………」

「??めい、どうしたの?」

「ううん、なんでもないよ」


 森に入ってから随分めいと会話していなかった。好奇心こうきしん旺盛おうせいなめいも何故か何も喋らない。まあ、こんな極限状態で変に明るく喋りかけられるのもうんざりだから、静かな方がいいんだけど……



 

——————ガサ、ガサ、ガサ…………




 土と雑草を踏む音……何かが来るっ!




 めいの手を握って、これから逃げようとした瞬間。


「待って西城さん!僕だよ、飯島いいじま健太けんた!」


 姿を現したのは同じクラスメイトの飯島健太。あまり会話をしたことはないが大人しい男子生徒だった気がする。特に記憶に残るような印象がないため、初めて下の名前を知った。


「よ、よかったー。他に誰もいなくて……。てっきり僕だけ違うところに送られたのかと思ったよ」

「……あ、けんたくん!無事だったんだね!よかったー」


 これまでずっと喋らなかっためいが他のクラスメイトに会えて安心したのか、笑顔で飯島との再会を喜んでいる。めいには申し訳ないが他の誰かと行動を共にするつもりはないから、挨拶終わったら彼とはここで別れてもらおう。




 ——————それよりも今気になったことが……






???)




「……雪守さんも一緒だったんだね!元気そうで良かったよ!!」

「もー、"めい"でいいって前に言ったのにー」

「あはは、ごめん。女の子を下の名前で呼ぶのはちょっと恥ずかしくて」

「えへへ、あいかわらずだね」

「…………」


 あのめいが、私以外の人と楽しそうに会話をしている。ありえない、飯島とめいは面識があったの?でも一体いつのうちにこんなにも仲良く……


「し、しのちゃん?さっきからどうしたの?」

「どうしたって、こっちこそ聞きたいわ」

「え?」

「いつの間に飯島と仲良くなったの?」

「……えーと」




 


「………………」






「そうそう!1年生のとき、と、としょいいんかいでいっしょになって、それでいろいろ話を聞いてもらったんだー!それからもたまにしゃべるようになって……」

「うん、確かそうだったね。僕たちが初めて会ったのは図書委員会で同じになったときだね」


(何だこの違和感は……めいはこの3年間、委員会なんかに入らなかったはず。あれ?本当にそうだったっけ?)





「………………」





「あ!そうだ、もしけんたくんがよければ、これからめいたちといっしょに行こうよ!」

「えっ、いいの?自分で言うのも何だけど、僕は男だし、女子の二人にとってあまり一緒にいない方がいいんじゃあ……」

「だいじょうぶだよ!けんたくんならしんよう、できる!ねっ、しのちゃん」

「え、ええ。邪魔しないのなら別にいいよ……」


 まあ、脱出者はまだ7席残っているから一人増えたくらいで今更どうしたこともない。それよりも情報共有が優先だ。


「ところで飯島くんは魔獣ってやつを見かけた?」

「あ、うん。見たよ」

「えっ」



 まさか飯島がもうすでに魔獣に遭遇したとは。それで無傷ってことは気付かれなかったのか、それとも倒す手段があったのか。


「どんな感じだったの?」

「僕が見たのはすごい大きいアリと蜘蛛が合体したようなやつ。そして……他の

人が食われているのを見てしまったんだ」


 飯島は当時を思い出したのか、顔を青くして震え始めた。


「と、とにかく、けんたくんが無事でよかったよ」

「そうね、食べられてしまった人は気の毒だけど、自分の命が一番」

「あはは、ステータスなんてものがあるから僕にも彼らのように力があればなあ」

「彼ら?」

日澤にちざわくんと姫崎ひめさきさんと宮下みやしたくんのことさ。彼らは魔獣を倒しながら途中で見つけた生徒たちを保護して攻略を進めているみたい」


 この3人組は容姿が良く、成績もかなり上位で、コミュニケーションも得意だからクラスメイトだけじゃなく他のクラスの生徒からも好かれている。それぞれなにかしら武道を習っていたからそれで対抗できているのかもしれない。しかし、日澤は私たちのクラスだが姫崎と宮下は他のクラスだったはず。


「どうして姫崎さんと宮下くんまでがいるの?」

「ああ、それはどうやらこのデスゲームに巻き込まれたのは僕たちのクラスだけじゃなくて、3年生の全員みたいなんだ」

「……ということは!!」

「しのちゃん?」

「めい、覚えている?アイが言っていたこと」

「この島にはきょうぼーなまじゅう?がいる???」

「違う。そうじゃくて」


 頭をことんと傾けてるこの子はきっとこの事実に気づいていないな。今は飯島がいるから言うの悩んだけど、こいつは信用できそうだから共有しておこう。


「アイが言っていたのは、"全体の4分の1の人数しか生き残れない"っていうところ」

「あっ、そうか、最初はクラスの4分の1しか生き残れないと思っていたけど」


 飯島もどうやら私の言いたいことに気付いたみたい。


「そう。母数が3年生全員——つまり152人の4分の1、最大38人がここから生き残れる」

「てことはしのちゃん!もっとたくさんの人がここから出れるんだね!!」

「すごいよ!西城さん!」

「喜んでいるところ悪いけど、同時にライバルも増えたことを意味しているの」

「「あっ」」


 競争相手が増えたからには、これからもっと早く脱出方法を探しに行かなければならない。特に日澤達に先を越されないようにしないと。たくさんの新情報でしばらく満腹感を感じているうちに行けるところまで行きたい。


「それがわかったのなら、ゆっくりしてられないわ。早く先に進みましょう!」

「うん!」

「そうだね……」









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名前:飯島健太 lv2

状態:欺瞞の代償

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筋力—18  C 

俊敏—33  C

知力—40  B


スキル: 気配遮断lv1


命運:『夢の嘘語り』

(能力—***)

(代償—使用後はしばらく質問されると必ず真実を答えなければならない。またそのときに嘘で答えたら死ぬ)

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クラスメイト達と異世界転移にあったが、生き残りをかけた戦いが始まりました ほどみだり @kokonatchu

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