第2話 足手纏い

 眩しい光が消えると、私とめいは波が穏やかに寄せては返す砂浜にいた。後ろには木々が生い茂っていて地平線が全く見えない。逆に目の前の海は地平線しか見えず何も無い。


 そしてなによりも、教室に30人ほど人がいたにもかかわらず、ここには私とめいしかいない。


「ここは一体……」




『やあ、無事に転送できたかな?これより君たちにはさっき言ったように命を懸けたサバイバルをやってもらうよ。ルールは単純他の人より先にゴールに辿り着ければいいだけ。でも、それだけじゃあ面白味に欠けるから、君たちがいる島に凶暴な魔獣を放させてもらったよ。もちろん、それだと君たちは抵抗できないから、君たちには特別に加護を与えたよ。まあゲームで言うところの"ステータス"ってやつだね。それでなんとか頑張って生き残りたまえ』




「しのちゃん、今の……」

「うん、どうやら、私たちは相当やばいことに巻き込まれたみたい」


 あんな超現象を連続で見させられ、これでこの島に魔獣ってやつがいない方がおかしい。それよりさっきアイが言っていた"ステータス"だが……


「ステータス……」

 

 そう呟くと、目の前にホログラムのような画面が出てきた。


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 名前:西城詩音 lv0

 状態:正常

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 筋力—10 C

 俊敏—23 C

 知力—42 B

 

 スキル:なし


 命運:未取得

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「しのちゃん、目の前になんかでてきたよ。あ、あれ?」


 めいは目の前の何も無いところを何度も掴もうとしている。これはどうやら、他人には見えないらしい。


 色々気になるものが書いてあるけど、とりあえず安全そうなところまで行って隠れなきゃ。別に魔獣と戦わなくても、サバイバルだから隠れ続ければいい。


「めい、これから安全そうなところに移動しよう。いつ魔獣ってのが襲ってくるかわからないし」

「うん!」


 といっても、いかにも魔獣がいそうな森に入るしかない。船さえあればぜひともこのまま海に出てここから離れたいけど、それは難しそうだ。




『そうそう、言い忘れていたけど。ここから出れるひとは限られているよー。脱出できる人数は最大今の人数の4分の1で早いもの勝ちだから、ゆっくりしていたらゲームオーバーだから気をつけてね〜』




「「えっ」」


 まさか人数制限がかかるなんて、これから他の人と協力どころか、潰し合いに発展しかねなくなる。もしかしてアイはそれを狙っているのか?でも何のために……


「しのちゃん、4分の1って、もともと30人だから……5人?……あれ?もっと多いのかな?」

4分の1だから、多くて7人ね」

「ど、どうしよう。みんなで帰れないよ」


(あまりにも少ない、全員で帰ることはできない。必然的にクラスメイトを敵として扱わないといけない状況ができる。でも誰を……)


「し、しのちゃん?」


(…………。生き残るためには優秀な仲間が必要。そして、切り捨てるのは必然的に足手あしでまとい……)


 目の前にいつも私の後ろについてくるだけで、何も利益をもたらさない少女がいる。そろそろこの子から離れてもいいんじゃないのか?私と離れたら、魔獣だけではなく他の人間にも狙われるだろう。そしてドジなこの少女はなすすべなくあっさり殺されるだろう。でもそこに私はいない。私がこの子が殺されたかどうか知らなければ、生きていると思い込めば、罪悪感はなくなるのではないか?


「どうしたの?もしかして具合がわるいの?」


(いやいや、それはあくまでも最終手段。変なことを考えるな私!!)


頭を振りながら、邪な考え払い落とす。とりあえず、めいを安心させなければ。


「大丈夫、ここから一緒に出ようね……」

「うん!」




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