クラスメイト達と異世界転移にあったが、生き残りをかけた戦いが始まりました
ほどみだり
第1話 選別の始まり
世界で平等が唱われ始めてから長い時がたった。現在の社会では男女は平等で、人種・生まれで差別されることは非常識的になった。
平等と言えば聞こえがいいが、もちろん平等であるため弱者を優遇することもない。さすがに病人や怪我人に対しては気を遣うが、平等と見なされている障がい者たちにとっては生きづらい社会になったと昔の人々はそう言う。
「ねえねえ、しのちゃん。今日はなんだかすごいことが起きそう!」
「めい、どうしてそう思うの?」
「うーんと、なんでだろう??」
めいは子供もような喋り方をするけど、決してイタズラで嘘はつかないし、昔からこうして何か理屈では説明できない何かを感じ取ることができるから、今日はきっと何かあるんだろう。もしかして、高島がようやく退学するのかな?
「よお、
言ってる側からやってきた、口には出していないけど。
「ガールズトークに口を挟まないでくれる?」
「そんなガキみたいのと長年いるやつは言うことが悲しいなあ」
「どう言う意味?」
「お前が他の女子と喋るところをほとんど見ないぞ。ガキの相手をして何が楽しい
んだ?」
「めいをガキって呼ばないでって言ったでしょ」
高島のようにめいのことを馬鹿にする人はこれまでたくさんいた。これは障がいを持っている人を平等として扱う、つまり自分と同じ基準で見ているため、自分と同じ年齢なのに何歳も下のような言動をしているめいが気に食わないらしい。もっと
普通の人が普通の人をいじめるように、障がい者も平等にいじめられる。あくまでも差別ではないと。こういった詭弁はまだ良心を持った年配の評論家たちの中で問題視されている。
「お前、大人になってもそいつと一緒にいるのか?」
「そうだけど」
「はあ。お前だって分かっているだろ?このままじゃあ、いつになっても同じだぞ」
「だからなに?」
私だっていつまでもこの子の相手をすることができない。このまま大人になって仕事をしてめいの相手をして、結婚もできず一生この子の面倒を見ないといけない。そんな私の人生って一体何のためにあるのだろうか?そろそろ頃合いをみて、この子から離れたほうがいいのかな?
「わーわー、ふたりともけんかは良くないよ」
幼いときに誓った思いも薄れていきそうなときに、隣からめいの声が聞こえて頭が冷静になる。
「別に喧嘩なんてしてないよ」
「そうなの?じゃあ、仲直りのはぐー」
ぎゅーー
「わあっ、私とめいは喧嘩してないでしょ」
「えへへ、いやだった?」
「い、いや、そんなことないけど……(柔らかい)」
そうよね、今はまだこの幼い子を守ってあげなければ…………
そして、教室内は突然の静寂に包まれた。
「なんか静かじゃない?」
教室の誰かが発したその言葉で、みんな今の異常に気づいた。
外から音がしない。授業が始まる前のこの時間ならいつも聞こえてくる登校中の談笑や車が通る音、それらが一切しない。まるで周りの時が止まったかのように。普段から雑音だらけの環境で生活しているから、それがあまりにも不気味に感じる。
「し、しのちゃん……」
「大丈夫、めいのことは私が守るから」
何が起きてもいいように、めいを抱き寄せる。
「気味が悪りいな。外を見てく……(なっ、体が)」
高島が教室の外に出ようとした瞬間に体が固まった。声をかけようとしたが、喋れない。
(これはっ、体が動かない?!)
頭すら動かせないからめいとお互いに顔を見ることができないがきっと怯えた表情をしているはず。
私たちがこれから起こることに対する不安と恐怖を感じ始めたとき、それは語りかけてきた。
『やあ、成人前の子供たちよ。ボクはアイと名乗っておくよ。急に拘束させてもらったのはちょっとしたお願いを聞いてほしいからだよ』
脳に直接語りかけてくるような中性的な声。人間のように話しているのに、その声はどこまでも無機質。これはおそらく高度なAIが喋っているのだろう。
(AIの暴走?いやそもそも今の科学にこんな技術はない。まさか異世界の力ってやつ?)
いくら考えても説明ができないこの金縛りとテレパシーは漫画とかによくある異世界の力だと思えば不思議に納得できる。だが実際にそのような目に遭うとは全く思わなかった。
『うんうん、君たちが困惑している様子がよくわかるよ。でも言ったよね。ボクはただ君たちにお願いを聞いてほしいだけだよ。ボクからは君たちに危害を加えるつもりはないから安心してよ』
人を縛り付けてお願いするなんて、それはお願いではなく脅迫とも言える。それに妙に引っかかる言い方となんとなく胡散臭さを感じるような喋り方だなあ。
『君たちにはこれからボクが送り飛ばす世界で生き残りを賭けたサバイバルをしてもらうよ』
————なっ!?
その言葉とともに真っ白な光が私たちを襲い、残酷な生存競争が始まった。
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