5.イリス、村に入る

私が村の門に近づくと、2人いる門兵家の1人のおじさんが、警戒した様子で喋った。




「おい!そこのお前!何者だ!!」




おじさんは私に向かって槍を構え、問いただした。過激な対応に見えなくもないが、あんな危険な森が、隣りにあるのに一人で少女が歩いてきた。怪しすぎて警戒されて、当然である。




「あの森から来たエルフです。旅がしたくて森から出てきました。」




変に隠すのはやめよう、もともと私は、嘘を付くのが得意じゃない。もしもボロが出たら、返って怪しまれるだけだ。それと、聞いた話だと人間社会では、ハイエルフもエルフも違いほとんどわからんしエルフで良いよねって感じで統合しちゃってるらしいので、自分のことは、エルフと読んだ。本当は、エルフもハイエルフも全く違うぞと言いたかったが。




「なるほどラビドゥスエルフか、、、少し待て嬢ちゃん上と話してくる。」




「あの、ラビドゥスエルフって?」




門兵のおじさんは、私の問いに答える前に門の中に、行ってしまった。




「それについては、僕が答えるよ。」




私の問に答えてくれたのは、隣の門兵のお兄さんだった。ってよく見ると、この子 ちょっと不思議な気配を感じるけど、エルフだ。森を出て早々に同族に会えるなんてラッキーだなぁ〜。




「ラビドゥスエルフっていうのは、森から出て生活するエルフのことさ。他には気狂いエルフや、クレイジーエルフなんかも呼ばれてるな。」




要するに、悪口じゃねぇか。思わず心の中とは言え突っ込んじゃった。まあエルフは、他の種族と比べて比較的に閉鎖的な種族だけれども。




「じゃああなたもラビドゥスエルフ?」




「いや僕は、街で生まれたから、ラビドゥスエルフではないよ。それと僕は、街からここに引っ越しして、まだ2周間なんだ。街を案内しろと言われても無理だぞ。でもいい飲み屋は、知ってる。今度エルフ同士一生に、飲みいかねぇか。それと僕は、プロディ覚えててくれ。」




そう言って手を自分の肩に乗せてきた。それにしてもいきなり、距離近すぎない?そう思わずにはいられない。距離が近すぎるエルフこと、プロディと話していると、上に話に行った門兵のおじさんが帰ってきた。




「無いとは思うが、なにか身分が証明できるものってあるか?森から来たなら分かると思うが、最近街の城壁が破壊された。つまり、最近襲撃を魔物から受けた。身元不明のものをむやみにいれることが出来ない。まあ上のやつは遠回しに、帰れって言ってるんだろうな。すまんな、嬢ちゃん、なにか必要なものがあれば、言ってくれ。用意できる範囲なら用意する。若いもんが、飢え死にする姿は、見たくない。」




「同じ、エルフの仲間ということで入れられたりしない?」




「お前は、身分証があるから入れられたんだ。経験上こういうのを、情だけで許すと後々面倒なことになる。」




どうやら、身分証が無いと入れてくれないらしい。まあ、確かに魔物に襲われた後だし、慎重になるのも無理はない。ちなみに、魔物と魔獣の違いは、人間の街の存続の危機になるかやならないかで判断される。つまり、街をなくすことの出来る存在を魔獣と表す。そして、言語が話せる高度な魔物や魔獣は、魔王、そしてそこに忠誠を誓うものを魔族と呼ばれている。大抵の人型は、魔族になる。それと、人の街では、魔獣がうろちょろしている森で、暮らすエルフは頭おかしい種族と評されている。なんなら、魔族認定してる国もあるくらいだ。


そんなことは、置いといて街に入れない問題が浮上した。自身の持ち物じゃ身分なんか、、、あれまって




「自身の証明ではないですが、これは証明になるかもしれません。」




私は、父が渡してくれた、ペンダントを渡した。




「これは、400年前に使われていた冒険者の身分証じゃねぇじゃか。」




「歴史に詳しいんですね。というかそんな昔のものなんですか?」




「別に俺は、歴史に詳しいわけじゃない。時曲げの魔境に入って亡くなったと思った、高ランク冒険者が帰還してきて大騒ぎとかでこんな辺境の田舎まで伝わってくるんだ。ああ、時曲げの魔境って言うのはこの国の高ランク魔境の一つで、時空を歪ませちまう魔境なんだ。つっても数日とかなんだが、たまに数年とかがあるんだが、極稀に数百年とかのズレが生じるんだ。その上に、中にいる魔族のミラートリックがかなり面倒な上に強いんだ。そんな魔境だから生存確認の難しくて数年帰って来なけりゃ死亡判定を出すんだ。」




「ずいぶんと詳しいですね。」




「俺も昔はヤンチャで、国一番の冒険者になるとか言って出てった時期があったんだ。まあ嬢ちゃんの身元は、確認できた。入っていいぞ。」




「え?いいんですか」




このペンダント一個で通していいの?セキュリティ大丈夫?




「ああ、いいぞ。そもそも昔は加工技術が乏しかったから、こういう物は高ランク冒険者にしか渡せなかったんだ。今でこそ「叡智の魔女ソピア」様のお陰で発展したがな。銅色でこの加工の入った物は、二つ名持ちの物だ。そんな人の子供だ信用に足る。」




どうやらお父さん思ってた以上にすごい人だったみたい。そして、このおじさん思った以上に冒険者オタクだ。さっきから早口だ。それと前々世の私そんなに偉大な人だったの?まぁまぁなお偉いさんくらいの地位だった気がしたんだけど。




「あ、あと注意してほしいことがある。」




「な、なんですか?」




「最近この村で、吸血鬼が出ているんだ。犯人の特徴がほとんどつかめていない。ただ、若い女性だけが吸血の被害にあっているってことだけはわかっている。お前も気をつけてくれ。」




どうやら面倒くさい村に来てしまったみたい。面白い、、、

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