第28話 命拾い

 冒険者仲間のアデルと一緒に薬草の採取に来た明菜は、自分を庇って毒ヘビに嚊まれたアデルを助ける為、一生懸命傷口から血を吸い取っている。

「これぐらい血を吸い出せば、大丈夫だよね!」

 アデルは気を失ったまま意識は無いが、青ざめていた顔色は元の血色に戻っており、 黒ずんでいた腕は元の色に戻りかけていた。

「今度は毒消しのポーションの作り方を教えてもらおうかな!」

 今回薬草以外の物も採取できたから、色々出来るのではと考えていた。


「さて、気お失っている男をどうやって連れて帰えろうかな?」

 四つん這いでアデルの処置をしていた明菜は、後ろに振り返ると目の前にいるフェンリル姿の勝也と目が合い、急に恥ずかしくなり顔が赤くなってしまった。

「後ろ見えてた?・・・さっきの姿は見なかったことにしてね!」

 (いままで何十回も勝也に見られてる明菜は、嫌がるよりは見せてるようにも取れる態度がある。本人は気付いていないようで、彼だけには無意識に気を引こうとして行動し、そしてすぐ忘れる特技を持っている。)


 冒険者ギルドの一番奥の一室に仮眠室があり、そこのベットの上で一人の男が寝ている。

「失礼しますよ!いつまで寝ているのかしら!」

 ギルド職員のミラは、突然運ばれてきたアデルをこの仮眠室に寝かせていた。

 ミラの言葉で気お失って寝ていたアデルは目を覚ました。

「ここは・・・」

「アッ!アデルさん!やっと目を覚ましましたか!」

「俺・・・」

「もう大丈夫ですよ?ここは冒険者ギルドですよ。」

「俺・・・助かったのですか?」

「アキナさんがここまで運んでくれたんですよ。」

「アキナさんが?・・・助けてくれたんですか?」

「そうですよ!アキナさんに感謝しなさいよ!」

「アキナさんはどちらにいますか?」

「採取した薬草を持って、工房に帰りましたよ。」

 アデルが目を覚まして安心したミラは、ギルド長に報告する為部屋を後にした。

 暫く頭の整理をしていたアデルは、ベットから降り仮眠室からギルドの受付場所に出向いた。

 フラフラした足取りで歩いていると、周りの冒険者から笑い声が聞こえる。

 受付嬢のミラを見つけると、カウンターに詰め寄った。

「ミラさん、アキナさんはどうやって俺をここまで運んできたんですか?」

 俺を担ぐにはアキナには無理であるはずだ!

「アキナさんの彼が運んできましたよ!」

「エッ!・・・アキナさんの彼氏があの場にいたんですか?」

 アデルはアキナに彼氏がいるとは思いもしなかったし、あの場所には誰も居なかったはずだ。

 でも確かに俺はここにいる。

 どう見ても彼女が運べるわけがないから、彼氏と言うのは間違いなさそうだ。

「お礼を言いたいんですが、どこにいましか?」

「さあ~どごにいるのでしょうね?普段はアキナさん1人で行動していますし、アキナさんが呼べばどこからか現れるようですよ。」

 ミラの言葉は、アデルは理解できなかった。

 アデルはアキナの彼氏が伝説のフェンリルとはまだ知らなかった。

「アデルさんが採取していた薬草は、運搬料としてアキナさんがすべて持っていきましたので気お悪くしないで下さいね。」

 ミラはアキナの容赦ない行動を思い出して、ただ者ではないと感じていた。


 アデルを載せて冒険者ギルドまで運んでくれた勝也と別れて、ニーデル商会に戻った明菜は一目散に身体を洗う場所に向かった。

 タライいに水を入れて、服を脱ぎタオルで体を拭く。

「お風呂に入りたいな~日本人はお風呂でしょう!」

 ないものねだりだとわかってはいるが、口にだしてしまう明菜であった。


 身体を洗い終わり、服を着てからキャロットがいる工房部屋に向かった。

「キャロット~ただいま!」

 部屋に入ると、キャロットが1人ポーション作成をしていた。

「アキナさん~お帰りなさい、どちらかいかれていましたか?」

「チョットそこまで薬草を取りに行っていたわ。」

「一人で行かれたのですか?」

「そんなわけないじゃないの!」

「そうですよね~頼れる彼氏と一緒ですよね!」

「勝也ではないわ!でも帰りは一緒になったけどね。」

 キャロットはアキナの言ってる意味が理解できない表情をしていると、アキナは詳しく説明してくれた。

「ギルドで同じFランク冒険者のアデルと一緒に薬草採取にいったけど、毒ヘビに噛まれて大変だったわ。」

「今何ていった!」

「私と同じFランクの冒険者~アデルって言ったわ!」

 キャロットの顔色が一瞬で青ざめていく。

「アデルは大丈夫なの!生きているの?」

 急に大きな声を出し、私に詰め寄る。

「あれっ~アデルはキャロットの彼氏?」

「違います!友達です。それより今彼はどこにいるんですか?」

「ギルドに運んだから大丈夫だよ~」

「生きているのね・・・ありがとうアキナさん!」

 キュロットは私の手を握って、涙を流している。

「安心していいわよ!自分で毒消しのポーションを飲んで気絶しただけだから!」

 私はキャロットを優しく抱きしめ、安心させた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎週 土曜日 05:00 予定は変更される可能性があります

異世界で大聖女は克服したい! 鬼瓦 @sazanka84

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る