第27話 大国第3騎士団
アルキドビア王国第3騎士団は、250名程の治安部隊だ。
主な任務は都市の治安維持と魔物討伐を担当している。
魔物討伐は、基本冒険者ギルドが担っているが、上級冒険者でも手を焼く狂暴な魔物がいる場合は騎士団が対応する。
そのため第3騎士団の兵士は剣技のレベルも高く、魔法も使える騎士が多く、魔導士部隊もいる心強い集団でもある。
その中で騎士団長オルフォースは水魔法を、副騎士団長のアドアルトは火魔法を得意としている人物で、騎士団の中でも一目置かれている人物である。
城壁都市レイフォースは、カルロス辺境伯が所有する都市で、アルキドビア大国と隣国ロアード大国の境界線に位置する戦略上重要な都市である。
一年前に当主のカルロス・アルベルト辺境伯が死去してから、後を継いだ嫡男がまだ8歳の子供の為、後継者として叔父に当たるドナード伯爵が管理していたが、ポーションの横領や横流しで私服を肥やし、隣国のロアード大国に内通しているのではと噂があり、その証拠が見つかった為都市の管理をはく奪されたばかりだ。
国王としてはカルロス辺境伯は信頼できる側近だった為、嫡男が成人するまでの間大国が管理し、上位貴族の取り合いから領地を守る手段として大国第3騎士団が派遣された経緯がある。
ニーデル商会のお店を出たオルフォース率いる第3騎士団は、その後主な店を回り騎士団の宿舎に戻った。
「トントン・・・失礼します。」
オルフォースが自室に戻って一息入れていたら、1人の若い騎士が入って来た。
「お疲れ様です。報告書を持ってきました。」
「ご苦労・・・そこに置いておいてくれ。」
「着任早々、問題が山積みで大変ですね団長!」
「仕方ないさ!前任者の不祥事は貴族間の派閥争いに利用されかねない。」
入って来た騎士は第3騎士団副団長のエドアルトで、オルフォースと同じく広大な 土地を所有する伯爵家の嫡男である。
年齢も同じで団長と副団長の違いはあるが、親友であり何でも相談できる間柄である。
「それに国王直々に頼まれているから尚更だな!」
「国王とカルロス様は戦場ではいつもご一緒されていた間柄だと聞いています。」
2人は国王の期待に応えたいという気持ちがあった。
「早急に対応しなければならないのがポーションの確保だな!」
オルフォースは報告書に目を通しながらエドアルトに確認する。
「ポーションを扱っている店はニーデル商会の他に3店あるが、どこも在庫数が少なく治安部隊どころか冒険者にも行き渡っていないのが現状だな。」
オルフォースはポーションの重要性は理解している。
騎士団にも魔導士はいるが魔力には限りがあり、ポーションの有無で部隊の存続に影響する。
「各店舗には初級ポーションのみの販売で中級ポーションは無く、マジックポーションも置いている店は無かった。」
エドアルトは各店の状況をさらに詳しく報告した。
「深刻な問題として、各店舗にある初級ポーションの性能に格差がある事だ。」
「回復量にバラツキがあるという事か?」
「一番大きい店舗は在庫を多く持っているが、性能は35~50HPの回復量で品質が一番悪く、他の2店舗はほぼ同じ在庫量で45~60HPで一般的な品質だ。」
「ニーデル商会はどうだった?この都市では唯一工房で作っていると聞いているが!」
「ニーデル商会の初級ポーションは65~70HPで最高の品質だが、一番在庫数が少ない。」
「他の3店舗は違う場所で作成して輸送してくる関係で、ポーションの劣化が影響していると推測するが、それだけが原因とは考えにくいな?」
「その辺はこれから調査するとして、ニーデル商会の在庫が少ないのは主な冒険者はニーデル商会で購入しているからだろうな!」
直接命に関わるポーションなら、品質の良い物を購入するのは当然だろう。
第3騎士団も一般的な初級ポーションと、僅かではあるが中級ポーションの普及版と魔力を回復するマジックポーションを携帯している。
自国には上級ポーションを作れる錬金術師がいない為、中級ポーションには作成時に材料を変えて作る普及版と上級版ある。
普及版の性能は150HP前後、上級版は200HP前後の回復量がある。
さらにポーションは体力の回復量だけではなく、聖魔法と同等の怪我の損傷も直す効果があり、初級・中級・上級で効果も変わる。
「もう一つの問題が魔物の異常発生があるが、ポーションの件で冒険者の数が少なくなっているとギルドから訴状がきている。」
「ポーションの件が落ち着けば冒険者は増えてくるので、それまでは騎士団で定期的に討伐をしないと被害が大きくなるな!」
「明日からは周辺の魔物の討伐に行くとしよう!」
オルフォースは試供品としてもらったポーションを手に取り、じっと眺めた。
「オルフォース様、そのポーションはどうされましたか?」
「うむ!ニーデル商会でポーションの試供品を頂いたんだ。」
「団長に試供品を渡すとは、何事ですか!騎士団をなめていますね!取り潰しますか?」
「オイオイ、物騒な事は言うな!」
「少し変わったお嬢さんからもらった物なのだが、今まで見たことのない色のポーションなので気になっているんだ。」
「普通の色と変わりがないようにみえますが?」
エドアルトが言うように同じ色に見えるが、透明度が違う。
薬草の種類か、今までの錬金術師のレベルが違うように感じる。
今まで見た製品と比べると同じ製品とは考えにくいが、取り敢えず試作品の検証が先だな!
オルフォースとエドアルトは、今後の計画を夜遅くまで話をしていた。
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