エピローグ

「柿原さん、柿原理人さん!」


その言葉で俺の意識は引き戻された。

いけない。

こんな大事な時になんで固まっていたんだ。


ソファーから立ち上がり、待合室を出る。

その先にはベッドに横になり、幸せそうに笑う鈴叶すずかがいた。


「おめでとうございます。男の子ですよ」


看護師が優しくそう言った。


「鈴叶!よかった……。ありがとう。よく頑張ったな」


俺のその言葉に妻は落ち着いたようにさらに優しく笑い、「早く抱いてあげて」と返した。

恐る恐る抱き上げた我が子はとても小さく、軽く……。

凄く愛おしかった。

俺は、この子を一生をかけて大切にする。

今まで見ていたあれは夢だったのだろうか。

それは分からないが、確かに俺は小学生に戻り、少年時代を追体験して、大切なものを見つけた。

今はまだ、無力で不安もたくさん抱えているけれど……。

鈴叶と力を合わせて、鈴叶も、この子も、そして俺も幸せに溢れていられるような家庭をきっと築く。

子どもだって、大人だって、みんな等しく必死にもがいて成長している。

だから、俺もなる。

俺もなれる。

妻や子供を幸せにする、格好よくて立派な父親に。




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【毎日更新 全8話】愛に溢れたタイムスリップ 寒川吉慶 @7945

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