第3章 青蓮

第3章 第1話 文化祭

蓮とあの約束をして早三週間、ついに文化祭当日を迎えた。

あれから結局ぼくらはお化け屋敷を作ることになったそうだ。僕と蓮は同じ衣装担当になったので、わいわいしゃべりながら作業を行っていた。


午前中は受付の当番をのために教室の中にいた。お化け屋敷の入場までの流れは受付前当番から紙をもらって学年組番号名前を記入してもらい受付に出してもらうシステムだった。1年や3年、もちろん同級生たちもお化け屋敷にきた。同級生の中には違うクラスの友達3人も来てくれた。

おおよそ11時くらいだろうか、どうやらクオリティが高いと話題になっているらしく、人の列が気づけば二つ隣の教室までできていた。なのでかみをもらって整理券を渡す作業がずっと続いていてとても忙しくなっていた。紙をもらっては確認してしるしをつけて受付前当番に渡すことが休みなく続く中、ある一つの紙だけは少し目に留まった。そこには


「2 年 4 組 28 番  穂高 叶」


と書いてあった。本来はそれだけ書いてあれば十分なのだが、まだ下に文字が書いてあった。そこには、


「受付忙しいけどがんばってー!」


と書いてあった。急いで書いたからか、文字が少し斜めになっているが、それでもこんなところまで気を遣ってくれる穂高さんはさすがだなと思うと同時に、また彼女への好意は深まっていった。

僕はその紙を受付前当番に渡した。


午前の終わり。

僕はこの日のために決めていたことがある。午後のステージ発表を一緒に見ようと穂高さんを誘う!

実は穂高さんとも担当場所が一緒で、作業していくうちになんとなく仲良くなっていったのだ。文化祭の準備が間に合いそうにないときには一緒に放課後に残って作業をしたりした。その時にいろいろなことが分かった。


バドミントン部に所属しているということ、水泳が苦手で好きな食べ物はホットケーキ。最近出たホットケーキがあるからそれを食べに行きたいということも聞いた。僕が水泳部であることを伝えると凄く羨ましそうな目で、「すご!私水泳苦手やから尊敬するわ〜」と言っていた。


午前の部の終わりの集会が開かれたが、全て聞き流していた。頭の中ではどうやって誘うか、どんな言葉を選ぶかずっと考えていた。


集会が終わり、解散した時に穂高さんを引き留めた。


「あのさ穂高さん、良かったらでいいんだけど」


「うん、どうしたん?」


「良ければ僕と、午後のステージ発表見てくれませんか!」


ん、なんで敬語になった?予定にはなかったし、分からないけど、緊張しか頭になかった。


「え、もちろんいいよ〜」

「私も見たかったんだけど、他の子が興味なくてさ、1人で見る予定だったの」


「いいの!?ありがとう!」


心の中で特大ガッツポーズを決めた。




午後___


(あああああやらかしたあああ!)

(見よって言ったのに嬉しさと安堵で何時にどこ集合にするか決めるの忘れてたあああ!)


僕はやらかしてしまった。



とりあえずステージ発表の30分前から発表が開かれる体育館の前に居ることにした。

男女で違う部屋で昼ごはんを食べるから、こうするしか無かったのだ。



...発表5分前。


(もしかして本当にやらかしたか!?)


頭の中は申し訳なさと焦りでオーバーヒートしそうだった。



...発表3分前。


(仕方ない、これは自分がやらかしたことだ。今回は諦めて1人で見よう。)


そう諦めかけて歩き出そうとしたその瞬間、


「遅れてごめんーー戸崎くん!」


確かに聞こえたのは穂高さんの声だった。

穂高さんは午前とは違う髪型で来た。



「え?来てくれたの!?」


「うんもちろん!ごめんね、髪のセットとかし直してたら遅れちゃった」


「全然大丈夫だよ、僕も場所とか時間とか言ってなかったし」


「確かになんも決めてなかったね」

「とりあえず入ろっか」


「うん!」



笑いながら体育館に入る。



発表が始まると穂高さんはキラキラした目で写真を撮りながら演技に引き込まれていた。その姿を隣で見ていた僕は、希望に満ち溢れる顔の彼女をますます好きになっていった。



発表が終わって外に出る。その時間は一瞬のように感じた。


「良かったねあの発表!」


「うん、穂高さんが居てくれて良かった」

「おかげさまで1人で見ることにならなかったよ」


ほんとははなから見る気なんてなかったのだが意外と良くて驚いた。


「いやいや、こちらこそ1人で見るの寂しかったから助かったよ〜」

「ありがとう戸崎くん」


「いえいえ、じゃあ、穂高さんは友達が待っているんだっけ?」


「うん、そうなんだ」

「だからそろそろ行かないと、バイバイ」


「うん、ありがとう!バイバイ!」


天国のような一時だった。


その後は適当に回って文化祭は幕を閉じた。



そうして家に帰ってきた。お風呂の中で、


(楽しかったなー、文化祭。穂高さんとの距離、もっと縮められるように明日からも頑張ろ!)


と考えながら鼻歌を歌った。



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僕と彼と、大好きな君と。 つづるん @tsutandayo

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