邪魔者を追放したら全部上手くいった冒険者パーティの話

大前野 誠也

第1話 トランの星は陰らない

 Aランク冒険者パーティ【トランの星】はキングという剣士によってなりたっていて、彼無しではDランクが良いところというのが世間での評価だし、キング自身や他の3人のメンバーもそう考えている。


 キング、ジャック、ハート、ダイヤの4人はトランという小さな町で生まれ、年頃も近い事から良く一緒に遊んでいた。所謂幼馴染というやつだ。

 4人は冒険者に憧れていたがトランの様な小さな町には冒険者ギルドなどない。一番年下のハートが10歳になったのをきっかけにトランの町から馬車で10日の場所にあるカルディノの街に赴き、そこで冒険者になった彼らは【トランの星】というパーティを結成した。

 

 冒険者ギルドでは初めに鑑定を受ける。そこで初めて自分の適性ジョブというものが判明する者も多い。トランの星の面々も勿論その時初めて自身の適正ジョブを知る事になった。


 鑑定を受けた結果、


 キング(剣士)

 ジャック(弱化術師) 

 ダイヤ(強化術師)

 ハート(治癒術師)


 というものだった。


 剣士は攻撃と防御に優れた前衛。弱化術師は対象に弱体化魔法をかける事を得意とする後衛。強化術師は対象に強化魔法をかける事を得意とする後衛。治癒術師は傷や状態異常を治療できる後衛。

 つまり前衛1人に後衛3人というバランスの悪い結果だった。


 4人組にの冒険者パーティの場合。前衛2、後衛2または前衛3、後衛1が理想的とされている。


 とはいえ、田舎から出て来たばかりの4人に他にパーティを組む充てなどないし、はじめから4人で組むという約束もあったため、そのままパーティを組んだ。


 結果から言えば、彼らの活躍は凄まじかった。

 たった1年でパーティランクはDに到達。初級ダンジョンを踏破してみせた

 3年後にはCランク。5年後にはBランク。そしてたったの7年でAランクパーティにまでなって見せた。キングに至っては個人でSランク冒険者と認定されている。Sランク冒険者は国全体でみても10人しかいない冒険者最高峰の称号だ。

 ちなみにジャックとダイヤはDランク。ハートはCランクの認定を受けている。


 そんな【トランの星】だが、輝かしい功績とは裏腹に、大きな問題を抱えていた。

 それがキングの増長である。


 「キング!お前、自分が何したのか分かっているのか!?」


 珍しくジャックの怒鳴り声が宿屋に響いた。

 彼はどちらかと言えば温厚な性格で、滅多な事では怒りをあらわにしたりしないのだが、今回ばかりはそうはいかなかった。


 「何って、ちょっとハートに夜の相手をさせようとしただけだろうが」


 キングの手には酒瓶が握られており、大分泥酔しているようだ。


 ジャックは泣きじゃくるハートを自身の後ろに匿いキングを攻める。騒ぎを聞きつけてダイヤもその場にやってきた。


 「マジ?キング、アンタ落ちるとこまで落ちたわね」


 「はぁ?!【トランの星】が活躍出来てるのは全部俺様のお陰だろうが。役に立たねぇお前等が俺様の為に出来ることはそのエロい体を使って俺様を満足させるぐらいだろうが。てーか、俺様に抱かれたがってる女は山のように居るんだ、むしろ感謝しろよ!」


 「だったらその抱かれたがってる女を抱いて来なさいよ。少なくともハートはアンタみたいなクズはお断りだってさ!」


 「テメェ!誰のおかげで金が稼げてると思ってやがる!世間の評価を知ってるか?俺様が居なきゃ、テメェらなんざ精々Dランクが良いところだってよ!」


 「だからってこんなこと許されるワケないだろ!」


 「うるせぇよ!このクソ無能が!!そもそも俺様のパーティにテメェ見てぇな無能野郎は必要ねぇんだよ!俺様のやり方に文句があるならテメェはクビだ!テメェの代わりに前衛をパーティに加えれば俺様のチームはSランクにだってなれる!分かったら荷物を纏めてさっさと出て行け!!」


 キングが踏ん反り返ってジャックに命令するが、ジャックは動かない。


 「俺様のチーム?何を勘違いしているキング。【トランの星】は俺たちのパーティだ。お前のモノじゃない!」


 「は!今テメェを追放したんだから、もうテメェは関係ねぇだろうが」


 「お前にそんな権限は無いって言ってるんだ」


 「はぁ?リーダーがクビつったらクビだろうが」


 キングの言い分に否定の返事で応えたのはダイヤだった。


 「キング。アンタ2つ勘違いしてるわ。メンバーを正式に脱退させるには、本人の意志か、パーティの半数の同意が必要なの。そしてアタイはジャックの追放には賛成しないわ。ハート、アンタは?」


 ダイヤに問われ、未だ泣き止まないハートはジャックの後ろで首を横に振る。


 「わ……わたしも……ジャック君に居て欲しい……」


 嗚咽しながらも必死に喋るハートの心からの思いだった。


 「だ、そうよ。よってジャックを脱退させるのは不可能よ。そしてもう1つ。そもそも【トランの星】のリーダーはアンタじゃ無い。ジャックよ」


 「はぁ?!なんだそれ!コイツはただの腰ぎんちゃくじゃねーか!誰がそんな話認めるか!」


 「アンタは覚えてないみたいだけど、パーティを結成した時リーダーには報告義務、それと有事の際に他のパーティとの連絡係なんかもしなきゃいけないって受付の人に言われて、面倒だからってジャックに押し付けたのよ。まぁ、それはアタイもなんだけど、つまりアンタが認めなくてもギルドが認めてくれるわ」


 「なんだよそれ!くそ!じゃあジャックみたいなクソの役にも立たねぇゴミを追放出来ねぇって事かよ!」


 尚も毒づくキングにダイヤはやれやれと息を吐く。


 「それなら安心して良いわよ。アタイ達だっていつまでもアンタに迷惑を掛けるのは忍びないと思っていたところだから」


 「あん?」


 話の流れが理解できず、首を傾げるキングにハートとから引き継いだジャックが説明する。


 「キング。お前の最近の言動は目に余る。今日を持ってキングを【トランの星】から追放する。反対の者はいるか?」


 「賛成」


 「……さんせい……です」


 ジャックによる急な追放宣言。それに追従する女性陣二人。しかも片方は故郷に居た時から思いを寄せていたハートだ。

 キングは状況が理解できなかった。


 「テ、テメェら気は確かか?俺様を追放なんかしてみろ。テメェらだけじゃ初級ダンジョンだって碌にクリアできねぇぞ。それだけじゃねぇ。Sランクの俺様を追放した馬鹿としてギルド内では良い笑いモンだ。新しいメンバーだって入って来ねぇぞ!」


 「そうかもね。それでも、アンタと同じパーティでいるより遥かにマシって判断したのよ。自分がどんだけ嫌われてるか分かった?!」


 「――――っ!!ああ!そうかよ!!分かったよ!こんな雑魚パーティさっさと止めれば良かったんだ!同郷のよしみで今まで助けてやっていた恩も忘れやがって!このクソども!テメェらなんてゴブリンに捕まって孕み袋にでもされちまえ!!」


 キングは捨て台詞を吐いてその場を去って行った。


 「………孕み袋って、俺も?」


 「ぷっ!あははは、ジャックもたまには冗談を言うのね。どうせ毎日そんな妄想でアタイとハートをオカズにでもしてたんでしょ?それが咄嗟に口から出たのよ。本当、救いようのないゲスだったわね」


 「………」


 ダイヤの下品な発言にハートは顔を赤らめ俯くしか出来なかった。




 翌日、キングの脱退の手続きは滞りなく受理された。

 ちなみに、キングが抜けた事によるパーティランクは再評価され、現在はDランクパーティとなっている。


 「おい、知ってるか?【トランの星】の奴らがパーティからキングさんを追い出したらしいぞ?」


 「はぁ?そんな訳あるかよ。確かにキングは性格に問題があるが腕は超一流だぞ。【トランの星】はキング一人でAランクパーティになったようなもんだろ?


 「大方キングが愛想をつかして出てったんだろうさ」


 「じゃあ何で追放されたなんて噂が出るんだよ」


 「案外残された奴らが腹いせに流した噂かもな」


 「うわぁ、惨めな奴らだな」


 冒険者ギルドの1階。飲食店を兼ね備えたそこでは、朝から冒険者たちが噂話を肴にエールをあおっていた。

 今日の肴は専ら【トランの星】の話だ。


 「ちぇっ、アイツら。何も知らないで好き勝手言ってくれちゃって」


 「そ、それより、これからどうしましょうか?キングさんの言っていた通り新しくパーティに加わってくれる方も見つからないでしょうし」


 「そうねぇ。少なくとも前衛が1人欲しいわよね」


 「新しい人が見つかるまでは俺が前衛をやるよ。2人は今まで通り後衛を頼む。となると、装備も買い換えないとな……キングの散財のせいであまりお金がないのに、痛い出費だなぁ」


 こうして【トランの星】は新しいスタートを切った。






 カルディノの街からほど近い位置にある初級ダンジョン【巨人の寝床】。

 全10階層からなるダンジョンでダンジョンボスと言われる最下層にはトロールが待ち構えている。

 クリア推奨パーティランクはDランク。これはあくまで最下層のトロールを撃破するのに必要とされるランクだ。


 【トランの星】の面々は、巨人の寝床の1階層にやって来ていた。目的は連携の確認のためだ。


 「それじゃ今回は俺が前衛。相手に弱体化魔法を掛けながら、新しく買ったメイスと盾で戦う。ダイヤとハートはいつも通り後衛。ダイヤは俺をメインに強化魔法を、自分たちにも掛けるのと後方への警戒も忘れないように。ハートは持続治癒を俺に、後は状況を見て治癒魔法を使ってくれ、それと灯りも頼む」


 「あいよ」


 「が、がんばります!」


 本来後衛職である弱化術師が持つ武器は杖だ。杖を持つことで弱体化魔法の効果を上げることが出来る。――のだが、前衛になるのならば流石に杖では心もとない。ジャックは弱体化魔法の効果を上げて杖で殴るより、強化魔法で強化された攻撃力をもってメイスで殴り、同じく強化された防御力を持って盾で防ぐ方法を選んだ。ちなみにメイスは杖ほどではないモノの僅かに弱体化魔法の効力を上げる事が出来る。


 「杖無しで強化魔法を使うのも、パーティ全員にバフを掛けるのも随分久しぶりだね」


 今ダイヤが持っているのは弓だ。此方もキングより遥かに劣るだろうジャックの攻撃力を少しでもカバーする為の苦肉の策である。勿論杖を装備していないことにより強化魔法の効果は一段落ちることになる。また、最近はキングにのみ強化魔法を掛けていた。これは碌に戦力にならない後衛に強化魔法を使うのは魔力の無駄遣いだとキングが主張したためだ。ちなみに複数人に強化魔法を掛けても効果が弱くなることはない。


 「い、いざという時は私も戦います」


 ハートが装備しているのもメイスだ。普段は杖を装備しているが本職ではないジャックが前衛の為、魔物を後ろに逸らしてしまう可能性があるので、念の為直接戦闘力のあるメイスに持ち替えている。ちなみに利き腕とは逆の手には魔導松明と呼ばれる魔道具を持っている。これは魔石に貯めてある魔力の分だけ発行してくれる便利な魔道具だ。洞窟なのでは松明を使うより安全だし、長持ちだ。魔石の大きさにもよるが最大まで魔力を貯めてをくと大体8時間は持つ。


 装備と連携の確認をして、すこし進むと直ぐに最初の魔物と遭遇した。


 ゴブリン。

 緑色の小さな鬼、それが4体だ。


 駆け出しの冒険者が初めて戦うのは、ゴブリンかスライムだと良く言われる。

 それほどに弱い相手だ。

 しかし今の【トランの星】からしてみれば油断して良い相手ではない。

 自分たちがどれほどのか、これはそれを知るための戦いなのだ。


 「前方からゴブリン、数は4。ダイヤ、強化魔法を」


 「まかせな、≪オール・アップ≫」


 弓を持っての初めての実践だが、ダイヤは苦も無く強化魔法を使う。前日に宿で練習した通りに。


 「一応ジャックに10、アタイとハートに8で掛けたよ。ゴブリン相手に慎重すぎるかもしれないけど――」


 「いや、ありがとう。俺たちは弱い。出来るだけ慎重に行こう。魔力の心配もいらない。今日は踏破が目的じゃなくて連携の確認が目的だからな。2時間もすれば引き上げよう。ハート、持続治癒魔法を」


 「はい、≪オート・ヒール≫」


 ハートもダイヤ同様、事前の練習通りに魔法を使えた。


 「良し、それじゃ戦闘開始だ!≪オール・ダウン≫」


 目視で確認できる4体のゴブリン全てに弱体化魔法を掛けたジャックが、一気にゴブリンたちの距離をつめた―――


 ジャックが戦闘のゴブリンを思いっきりメイスで殴る。

 上手くいけばこの一撃でゴブリンを仕留められるはず―――

 ジャックのそのよみは当たった。先制の一撃は確かにゴブリンを1匹仕留めたのだ。仕留めたのだが―――


 バゴォン!


 と凄まじい音を立て、ゴブリンは弾け飛んでしまった。

 勿論ジャックは返り血で大変な事になってしまっている。


 「………っは?」


 予想と大きく乖離した結果にジャックも後衛の二人も呆けてしまっている。

 敵を前にしてあり得ないミスだが、こと今に関しては問題ない。

 動けないでいるのはゴブリンも同じだからだ。


 「ちょ、ちょっとジャック。いくら何でもやり過ぎ!ってかどうやったの?!」


 「え?いや、え?」


 「………っは!2人とも、まだゴブリンはいます!」


 最初に正気に戻ったのは意外にもハートだった。

 ハートの言葉に2人は戦闘中だったことを思い出し臨戦態勢に戻る。

 ゴブリンは未だ慌てふためいていて襲い掛かってくる様子はない。


 「よ、よく分からないけど、問題なく倒せるのは間違いないと思う。次はダイヤの弓を試してみてくれ」


 「ええ。と言っても昨日少しだけ試してみただけの素人の弓矢何て牽制にすらならないと思うけど……」


 宿屋の裏にある庭で試してみたところ、一応的に当てれるようにはなっていた。ただし動かない的、それも距離は精々10メートルから15メートル程度だ。

 ダイヤは弦を引き絞って、慌てふためいているゴブリンの1匹に狙いを定め、矢を放った。

 当たれば儲けもの程度に考えて放たれたその矢は、ゴブリンの頭部に命中。

 頭部に矢が命中したゴブリンの、その頭部が消し飛んだ。


 「………えぇ~………」


 少なくとも宿屋の的は消し飛んだりしなかった。というか刺さる方が稀だった。

 それが何故ゴブリンの頭部を消し飛ばす結果になったのか。

 【トランの星】の面々に思い当たる原因は1つ。魔法の効果だ。

 強化と弱体。この2つの魔法の効果が自分たちが思っている以上に高いのではないのか?

 ただそれだとおかしな点もある。

 世間での支援魔法の評価が低すぎる事だ。

 強化魔法も弱体化魔法も、あったらマシ程度の認識で攻撃魔法や治癒魔法に比べると評価は格段に低い。

 ボス部屋に入れるのが4人までというダンジョンの法則があるため、パーティは4人で組まれる事が多い冒険者の世界では、支援魔法使いは他にメンバーが見つからない時に仕方なく入れている程度の認識だ。当然それで活躍して新しくメンバーになりたいと言う攻撃魔法や治癒魔法の後衛が現れたらお役御免となる事が多い。


 だから、あまり存在しないのだ。高レベルの支援魔法の使い手が。


 【トランの星】が活動していたカルディノの街はそれほど大きな街ではなく、かつ、稀に入りたがってくる攻撃魔法の使い手が男であったことから、自分の女(だと思い込んでいる)ハートに近づかれるのが面白くないキングが追い払っていたなどの要因があり、今まで支援職2人というメンバーでやってきたのだ。


 ちなみに、活動初期の頃に一度キングがジャックを追い出そうとしたこと考えた事が有ったが、その頃はまだキング1人だけのパーティなどという周りの評価も無かったため、女性2人が追従してパーティから抜ける可能性を考慮して諦めていた。


 そんなこんなで彼らも世間も知らないのだ。高レベルの支援魔法の使い手がどれほど有用なのかを。


 「ギギぃ?!ギーーーー?!」


 残りのゴブリン2匹が慌ててその場から逃げ去っていく。

 それを見たダイヤが2匹に向かって弓を連射した。

 距離はおよそ60メートル。

 強化無しのダイヤでは届くかどうかすら怪しい距離だ。しかもターゲットは全力で走っている。先ず当たる筈がない。

 それなのに、矢は2本とも見事に命中し、胴体に風穴を開けていた。

 そう、ダイヤが使ったオール・アップという魔法。この魔法実はその名の通り全てのステータスを上昇させる。剣士のキングだけに使っていた時には気づきにくかったが、それは命中などのステータスも底上げされるという事だ。また魔力も底上げされるため、先ず自分に掛けてから味方に掛けると更に効果が高くなる。【トランの星】がその事に気づくのはほんの少しだけ先の話である。


 「……うそぉ」


 ダイヤたちは自分たちの戦果に疑問の声を上げ、風穴の開いたゴブリンと頭部が無いゴブリン。そしてミンチよりひでぇ状態になったゴブリンがあった場所を眺めて呆けてしまった。


 その後【トランの星】の面々は予定通り1階で連携の確認をして、その日はカルディノの宿に戻ったのだった。


 【トランの星】初級ダンジョンから血まみれで逃げかえってきた。

 その日、冒険者ギルドの飲食スペースではそんな酒の肴の話でエールを煽る冒険者たちの姿が多く見受けられた。




 「よう。昨日は【巨人の寝床】から命からがら逃げかえってきたんだって?」


 翌日も【巨人の寝床】に潜る為に冒険者ギルドに申請をしに来ていた【トランの星】は酒臭い冒険者に絡まれていた。


 「連携の確認をして帰ってきただけ。傷一つ負って無いよ」


 面倒くさそうにダイヤが答える。


 「へ、嘘つくなよ!血まみれで返ってきたところを見てたぜ?しかも2階層でお前たちを見たってヤツが1人も居なかったってことは1階層、もしくは2階層に入ってすぐの所でやられて逃げかえってきたんだろ?」


 「昨日は1階層で連携の確認を下だけだ。血はゴブリンの返り血だから怪我を負っていないというのは本当だ」


 ジャックがダイヤの一歩前に出て応える。


 「しょうもねぇ強がり言いやがって。返り血であんなに血まみれになる訳ねぇだろうが。どうだ、キングがいないお前らがどんだけ弱いか実感したんじゃないのか?今なら女共だけなら俺のパーティに入れてやっても良いんだぜ?補充要因だがな」


 「下心が見え見えでキモいんだよ。大体血まみれになってたジャックを見てたんなら分かるだでしょ?防具には破損何て無かったって、それでどうやって怪我をすんのよ?」


 言われて、絡んでいた冒険者は昨日彼らが帰還した時の光景を思い出す。血まみれなのはジャックだけで、盾も鎧も、確かに破損などしていなかった。

 それは今もだ。ジャックは昨日と同じ鎧を着ている。おそらくクリーンの魔法が使える人間に依頼して綺麗にしてもらったのだろうそれは、古い小さな傷が幾つかついているだけで、大きな破損は見受けられなかった。


 では、先ほど彼らが言っていた事は本当なのだろうと考えた冒険者はふいに怖くなった。どうやればあれ程の返り血を浴びることになるのか?


 「分かったらさっさと消えな」


 ダイヤが手でシッシと冒険者を追い払う素振りをすると、彼は舌打ちを一つ残してさっさと去って行った。


 この日、【トランの星】は2度目の挑戦で見事【巨人の寝床】を制覇した。

 3人で初級ダンジョンをクリアしたことから、周囲の評価も少しづつ変化し始めた。


 腐っても元Aランクパーティ。Dではなく、Cランク相当の実力はあるかも知れない。後衛職の中では戦える方なのかも知れない。そんな事を言われるようになった。





 【トランの星】が【巨人の寝床】を制覇したその日夜。


 「まさかトロールまで1撃で仕留められるとは思わなかったな」


 「存外メイスと強化魔法の相性が良かったりするのかもね」


 「それだとダイヤの弓の威力が説明付かないような気がします」


 かれらは宿屋で祝勝会を開いていた。以前なら冒険者ギルドの一階にある飲食スペースで行っていたのだが、そこに長居すると会いたくないヤツに会ってしまう確率が高いためだ。

 ちなみに、この宿屋も以前使っていた宿とは違う宿だ。キングと別の宿にしたいのは勿論の事少しでも安く済ませるため宿屋のグレードを下げたのだ。それでも中級冒険者ようの宿ではあるが。


 「さて、思っていたより何倍も速く【巨人の寝床】を踏破出来たわけだけど、次の目標はどうする?」


 「別の初級ダンジョン?【巨人の寝床】の次に近い初級ダンジョンだと【大蛇の瞳】ね。あそこまで馬車で片道4日掛かるから野営の準備が必要ね」


 「あ、あの。トロールと戦った感じだと中級でも通用しそうな気がするのですが、2人はどう思います?」


 慎重なハートにしては珍しい意見だった。しかし、実はジャックとダイヤの2人も内心そう思っていた。


 「確かに。ダイヤ、【巨人の寝床】を踏破した時の魔力残量はどんな感じだった?」


 「2割も使ってないわね。要するに魔力に関してはまだまだ余裕だったよ。ジャック、アンタは?」


 「俺はもっと少ない。大物以外弱体化は使って無いしな。トロールを除けば使ったのはホブゴブリンぐらいだった」


 「楽しちゃって。ハートは?」


 「私も途中で効果が切れたのでオート・ヒールを掛けなおしたのだけ、つまりオート・ヒール2回分だけなのでまだまだ余裕でした。元々最大魔力量は2人より少し多いですし」


 「そっかぁ…………どうする?」


 どうするとは勿論次に攻略するダンジョンの話だ。


 「……中級ダンジョンに挑んでもいいかもしれないな。野営に掛かる費用や、移動に掛かる時間を考慮すると【大蛇の瞳】はあまり旨くないし」


 ちなみに、一度攻略したダンジョンに挑むには1ケ月空ける必要がある。そうしないとボスが出現しないのだ。これが別パーティだと問題なく出現するのだから不思議だ。また、メンバーを変えても1人でも攻略した人間がいるとボスは現れない。


 「ここから一番近い中級ダンジョンって【牛王の迷宮】よね?」


 「ああ、ミノタウロスが待ち受ける推奨パーティランクCのダンジョンで、中級の中では比較的簡単な部類に入るダンジョンだ。場所は【大蛇の瞳】とは反対方向に、こちらは馬車で3日ほどの場所にある」


 「前に攻略したのは3年ぐらい前ですね。あそこは罠も殆どないのでいつもの様にキングさんにバフを掛けてゴリ押ししましたっけ」


 「マッピングは俺がやったな。ちなみにその時の地図が残っているから迷う心配はない」


 「アンタまだあのダンジョンの地図持ってたの?キングが狭い通路が幾つかあって剣が振りにくくて戦いにくいから2度とあのダンジョンには行かないって言ってたのに?」


 「いつ必要になるか分からないだろ?実際今回は役に立ちそうだ」


 「と、いう事は決まりですか?」


 「俺は次の目標は【牛王の迷宮】で良いと思う。2人は」


 「そうね。冒険者なんだから冒険しないとね。アタイも賛成」


 「言いだしたのは私ですし、勿論私も賛成です」


 こうして【トランの星】は栄光への道を進んでいく。


 


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 一方その頃、キングは1昼夜酒を飲み明かした翌日、丸一日二日酔いで動けず、パーティ追放後3日目にしてようやく新しいパーティを探すことにした。


 キングの名はこのカルディノの街では知らない人間がいない程に知れ渡っている。勿論Sランク冒険者としてだ。よってすぐに沢山のパーティから誘いを受けたがキングはその誘いの全てを断った。

 理由は男ばかりか、好みの女がいないためだ。

 ハートにフラれプライドが傷ついたキングは、ハートよりいい女を自分のモノにしたうえで、自分が入る新しいパーティをSランクパーティにすることを目標にしていた。

 だから大前提として、自分好みの良い女がパーティに居ることが条件になっていたのだ。

 そんな相手を探してギルドで吟味していたキングは、割と直ぐにお目当てのパーティを見つける事が出来た。

 Cランクパーティの【大樹の若葉】という何となく頼りない感じの名前のパーティだ。

 キングにとってCランクだろうが関係は無かった。そこに良い女がいることが重要なのだ。どうせ自分が加入すればパーティランクなど直ぐに上げられるのだから。

 さらに都合の良いことに【大樹の若葉】は男2人、女1人の3人組だった。これが仲良し4人組などだったら名声より仲間を選んでキングを加入させない可能性もあったが、1人枠が開いているなら断る理由はないだろう。


 「ようテメェら、今ちょっと良いか?」


 「え!?キ、キングさん!?」


 こうしてキングは【大樹の若葉】に加入した。


 女はクイーンという攻撃術師らしい。しかも都合の良い事にクイーンの彼氏だった男が先日ダンジョンで命を落としたのだとか。それでメンバーの枠に1つ空きがあったらしい。

 キングは心の中でガッツポーズをする。流石に素面の状態ならばそれを表に出さないぐらいの分別はあるようだった。


 (まるで俺様の為に用意されたようなパーティじゃねぇか。男二人は俺にくっついてるだけランクが上がる。クイーンは男が亡くなった心の穴を俺様で埋められる。初物じゃねーのが少々残念だがそれぐらい寛大な俺様が目をつむってやろう。それで全員ハッピーハッピー万々歳だ)


 そんな前途洋々なキングの耳につまらない噂話が入る。

 【トランの星】が初級ダンジョン【巨人の寝床】をクリアしたというのだ。


 (チっ。いくらアイツらがクソ雑魚でも初級ダンジョン程度はクリア出来たか。まぁ良い。どうせテメェら初級止まりだ。俺様の活躍を指をくわえて見ていやがれ)


 とは思うものの、流石にパーティメンバーの実力やスキル、魔法などを把握していない状態で大きな挑戦は出来ない。先ずは自己紹介をしたうえで、こちらも初級ダンジョンで様子を見ることになった。


 男の内1人は盾使い、大盾を使って攻撃を引き付けるスキルを主に使う。

 もう1人は斥候、ダンジョン内にある罠を見破ったりマッピングが得意だ。

 クイーンは先述したように攻撃術師。特異属性は火だがダンジョンで多用するのは危険なので風魔法を使う事が多い。

 そこに剣士のキングが加わりまさに理想的な前衛2、中衛1、後衛1の布陣が出来上がる。しかも前衛の片方は攻撃タイプ、もう片方は防御タイプとかなりバランスが良い。

 これだけでキングは確信した。


 (コイツ等が育てば【トランの星】なんて目じゃねー。あんな雑魚どもでも俺様がいりゃAランクパーティになれたんだ。この面子なら間違いなくSランクパーティが目指せる)


 悔しがる【トランの星】の面子に嫁になったクイーンの姿。そんな未来を想像しキングは舌なめずりをした。



 【大樹の若葉】の面々は【トランの星】が制覇した翌日に【巨人の寝床】を訪れていた。もちろん連携の確認のためだ。


 「俺と盾が前衛。戦闘中は投擲武器で牽制、移動中は先行して索敵。クイーンは後衛だが雑魚的相手には魔力の消費を極力抑える。これで良いな」


 3人は頷いたが、ここに小さな不満が生まれる。

 クイーンは名前で呼ぶキングが、盾と斥候と呼んだ2人にだけではない。

 下心を隠し切れないキングにクイーンにも不満はある。

 

 しかし、キングがこのパーティを選んだ理由を彼の態度から察している3人はそれぐらいならと不満を飲み込む。それぐらいの不満は飲み込めるほどSランク冒険者であるキングの加入は大きのだ。


 しばらく進むと不満は疑問に変わった。


 連携の確認に来たはずでは?そんな疑問だ。


 キングは1人でズンズンと奥へと進んでしまうのだ。1振りでホブゴブリンの胴体を真っ二つにしてしまう膂力は流石だが、そんなのが通じるのはここが初級ダンジョンだからだ。これでは何をしに初級ダンジョンにやってきたのか分からない。


 一体キングは何を考えているだろう。


 そんな疑問を、しかしSランクの彼に聞く事は出来なかった。


 一方キングも強烈は違和感に襲われていた。


 (おかしい。いつもの半分も力が出ねぇ……どうなってやがる?!)


 最初は二日酔いが未だ抜けきっていないのかと考えたがそんな感じではない。体が鉛のように重く、まるで自分の体が自分の体じゃないような、イヤな感じだ。


 そしてやがて違和感は焦りに変わる。


 もしもこのまま調子が戻らなかったら?そんな焦りが彼に剣を振らせた、少しでも早く調子を取り戻そうと、何度も何度も剣を振る。

 もはや【巨人の寝床】を訪れた目的などキングは頭の片隅にもない。連携何て関係無い。俺の力あってこそだ。俺の―――


 今や彼の目的は調子を取り戻すことにすり替わっている。


 そして気が付いた時にはボス部屋の前に立っていた。

 ふと、キングが後ろを振り返ると【大樹の若葉】の面々が息を切らせながらついて来ていた。


 (チっ雑魚どもが!ただついてくるだけで息を切らせやがって)


 ポタリ


 その時、水滴が1粒地面に落ちた。

 キングの足元だ。

 ダンジョンの岩肌から染み出たのかと思って上を見上げる。その天井は確かに岩肌ではあったが渇いている様に見える。


 ポタリ


 2滴目が落ちて、キングは漸くそれが自分から滴る汗だという事に気が付いた。

 1度気が付くと全身が汗だくで気持ち悪い。

 それに心臓の音もうるさいければ、自身の呼吸音すら不快だ。


 それが疲労なのだと、キングは思い出した。


 (あり得ない!たかが初級ダンジョンで何でこんなに疲れる!?まだボスだって倒してないんだぞ!?)


 休憩も無しに剣を振りながら足早に進めば誰だってそうなる。そう、ダイヤの強化魔法があれば話は別だが。

 オール・アップにはスタミナを上昇させる効果もある。彼女のそれがあったからこそ、今までキングは無理が出来たのだ。


 「キングさん。凄い汗ですよ?少し休憩しましょう」


 キングの次に体力を使っているであろう大盾の男がそう提案するが、これがキングの勘に障った。


 「あ”?!この俺様に初級ダンジョン如きで休憩が必要なワケねぇだろーが!テメェが休みてぇからって俺様をダシにすんじゃねぇ殺すぞボケ」


 「……」


 キングの咆哮に大盾の男も、他の2人も押し黙る。


 「オラ、こんなダンジョンさっさとクリアするぞ!付いてこい!」


 そう言ってイキナリボス部屋の扉を開けて、ズカズカと中に入っていくキング。残りの面々は慌てて彼の後を追った。


 「おら死ねやぁ、糞デブ野郎!!」


 ボス部屋に入ってすぐに現れたトロールにキングが突っ込んでいく。

 もちろんそこに連携などは存在しない。

 初級ダンジョンのボスはキングの調子を取り戻すための生贄として、一振りの元に滅びるはずだった。

 しかしキングの一撃はトロールの命を絶つには至らなかった。

 腹部に大きな傷を負わせたものの致命傷には程遠いその傷を見て動揺を見せたのはトロールでは無くキングだった。


 (は?何で死なない?トロールなんて上級ダンジョンじゃわんさか出てくる雑魚的だぞ?)


 そんなよそ事をしていたが故に、キングはトロールの反撃に対応出来なかった。

 トロールが力任せにただ振るった横なぎの棍棒がキングに直撃し、彼を反対側の壁に吹き飛ばし叩きつけた。


 「がっ、は――」


 久しぶりの痛烈なダメージに、キングは一瞬呼吸の仕方を忘れてしまう。


 (な、なんでトロールの攻撃なんぞでダメージが入りやがる?いつもなら痛くも痒くもねぇ筈だろうが―――まさか、特殊個体?!)


 もちろん違う。言うまでも無いが弱体化の魔法でトロールの攻撃力を下げ、強化の魔法でキングの防御力を上げることで無傷でいられるだけの話である。


 「危ない!!」


 クイーンが叫ぶ。

 トロールがキングに追撃をしようと迫っていたのだ。


 それほど大きなダメージを受けたわけでは無いが、予想外の展開に動揺しているキングは反応が遅れ、とても避けれそうにない。


 慌てて盾使いが回り込もうとするが流石に間に合わない。


 トロールの巨大な棍棒がキングを再び襲った。


 「ぐあっ!!」


 咄嗟に上半身を横に逸らしたので、頭への一撃は避けれたが、右肩に直撃したそれはまたしてもキングにダメージを与えた。


 そこで漸く盾使いがキングとトロールの間に入る。


 本来なら盾使いがトロールの攻撃を誘って、隙が出来たところを他3名が攻撃を仕掛けるのがセオリーだろう。その形に少しだけ近づいた。


 盾使いがトロールの攻撃を何とかいなし、斥候が投擲武器でダメージを与えつつ注意を引く。その隙にクイーンは為に時間のかかる大魔法に必要な魔力を練り、放つ。


 3人の得意としている戦法だ。

 今回はそうして弱ったところにキングが止めを刺す形となった。


 「おいウスノロ!なんでもっと早くに前に出なかった!テメェがノロマなせいで余計なダメージを貰っちまっただろうが!!」


 トロール討伐後、キングから発せられた言葉は謝罪でも感謝でもなく罵詈雑言だった。

 

 3人は、その場は大人しく謝罪して見せたが、その後の行動は決まっていた。

 

 カルディノの街に着いてすぐ、3人はキングを【大樹の若葉】から追放した。

 確かにキングは強かった。が、本当にSランクの実力があるかと問われれば疑問だった。いや、Aランク相当の実力があるかもあやしい。なにより、彼の態度が許せなかった。もし、たまたま今日調子が悪いだけで、本当の彼の実力はこんなものじゃなく、きちんとSランク相当の実力を有していたとしても、こんな人間とパーティを組んでいたくはないと、3人の意見が一致した事による追放だ。


 「くそ!!また追放だと?!どいつもこいつも見る目のない阿呆共が!!」


 キングは追放の理由が自分に有るとは考えない。

 確かに若干横柄な態度を見せたかもしれないが、自分にはそれが許されるだけの実力と実績があるのだと信じてやまない。


 そしてまたすぐに新しいパーティに入り、またすぐに追放された。


 そんな事を数度繰り返すうちにキングを誘うパーティはカルディノからなくなった。


 「どいつもこいつも!!Sランクの冒険者がどれだけの価値があるのかまるで分かってねぇ!!」


 キングは荒れていた。

 冒険者ギルドで昼間からエールを煽り、喚き散らしている。


 「こうなったら別の街にいくか……元々こんな田舎、俺様みてぇなSランク冒険者にゃ不釣り合いなんだ。別の街にいきゃ引く手あまただ。なにせ俺様はSランクだからな……ひっく……」


 「その事でキングさんにお知らせがあります」


 「あん?」


 キングに話しかけたのはギルド職員の女性だ。


 「多くの冒険者たちからの証言をもとに、貴方のランクを再査定いたしました。その結果、キングさんはAランクに降格となりました。こちらが新しい冒険者カードです。今お持ちの冒険者カードと交換させて頂きます」


 「……………は?」


 意味が分からなかった。

 冒険者が降格するのは普通、大きな規約違反が有った時。または立て続けに適正ランクの依頼に失敗し続けた時などだ。


 冒険者たちの証言で再査定?


 そんな事例は聞いた事も無かった。


 「ふざけるな!俺様は依頼を失敗しても無けりゃ規約違反もしちゃいねぇぞ!!」


 「はい、ですのでこの降格は異例と言えますね。貴方と一時的にパーティを組んだ冒険者たちから貴方の実力がSランクに相応しくないのではないかと進言してきました。そこで審査官を冒険者に紛れ込ませ貴方がパーティを探している時に声を掛けさせて、密かに再査定を行いました。その結果貴方の剣士としての実力はBランク相当。ただし、これまでの実績を評価して、1段階ダウンのAランクとしました」


 「ま、待てよ。何だってそんな急に……」


 「急ですか?何度か注意はしましたよ?その度に貴方はSランクの俺様に文句があるのか?ってスゴむばかりで、こちらの話など聞いてはくれませんでしたけどね」


 「あ、いや、それは……」


 「それと、先ほど貴方がひとりごとで言っていた他の街に行くというのは良い案だと思いますよ?もうこの街に貴方とパーティを組みたがる冒険者はいないでしょうからね。SランクじゃなくともAランク剣士なら問題なくパーティに入れて貰えるでしょう。長続きするからは別問題ですけどね」


 そう言ってギルド職員の女性はAランクの冒険者カードをテーブルに置くと、キングの胸ポケットからひょいとSランクの冒険者カードを抜き取って、カウンターの奥へと消えていった。


 「くそ!くそくそくそ!!!!あー良いぜ!!テメェらがその気なら望み通り出てってやる!!スタンビートで滅びろこんな街!!!」


 キングは代金をテーブルに叩きつけて、逃げるようにギルドを出て行った。

 翌日、キングが街から出ていく姿を門番が確認している。

 どうやら彼は北に向かったようだ。




 当然だが人はそう簡単には変わらない。

 キングは新天地でも同じミスを繰り返した。

 やがて新しい街でも誰にも相手にされなくなり、遂に彼は一人でダンジョンに潜るようになった。


 


 中級ダンジョンで1人の冒険者が亡くなったのはそれから半年後の事だった。



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邪魔者を追放したら全部上手くいった冒険者パーティの話 大前野 誠也 @karisettei

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