✿ 2話 桜吹雪は突然に ✿
「いやちょっと待っ...え?うちに住むって...?」
「そのままの意味だよー。今日からお世話になります!!」
「いやいやいや、無理だよ。だいたい親もいるわけだし...。」
「宮本くんのお母さんには許可もらったよ!」
え...?母さんマジでなにやってんの???親にこんなこと言っちゃいけないんだけど、バカなの???
「っていうかそっちの親はよく許可出したな。」
「...まあね。」
「...俺の許可がまだだけどな。」
「じゃあとりあえずゲームでもしない?」
だいぶ話をそらされた気がしたが、俺は会話の中で桜木の顔が一瞬曇ったのに気が付いた。おそらく桜木にも色々事情があるのだろう。いったんそのことには言及せず、俺は飲み物を取りにリビングへと向かった。
リビングに行ったとき、テレビを見ていた母の
なんというか...短時間に色々起こりすぎて、俺の頭はパンク寸前だったが、母の許しがあることは確認できたので、受け入れることにした。にしても、色々と問題があるのには変わりない。まず、女子高生が部屋にいる、というシチュエーションだけで問題大ありなのに、一緒に生活するということは、食事や入浴、睡眠を1つ屋根の下でするということだ。おまけに『サクハラ』つき。それを、ただの男子高校生が耐えられるはずもない。
「まぁその時がくればなんとかなるかぁ...。」
俺は甘かった。甘すぎた。
部屋に戻り、桜木とウイイレをしていたのだが...。
「宮本くん。膝枕して...?」
「無理。」
「え〜ケチー。」
頬をぷくっと膨らませ、上目遣いで頼んでくる。チクショーやっぱ可愛い。
桜木は、俺がリビングに行っている間に、制服からネグリジェに着替えたようだ。何がとは言わないが、ちょっとだけ透けて見えて目のやり場に困る。
「...マジでどうなるんだ、俺の春休み。」
「私がずっと一緒だから、最高の春休みになるんじゃない?」
心の奥底に留めておくつもりが、うっかり声に出ていた...。
「いや、それはないな。」
「ちょっとそれどういう意味〜!」
桜木はまた頬を膨らませ、俺の脇腹をくすぐってくる。
「これでもくらえ〜!」
正直ちっとも効かないが、効いてるふりをしておいた。
...ここで仮に俺が仕返しにくすぐったら、桜木はどういう反応をするのだろう。俺はそんな好奇心のままに桜木をくすぐり返した。
「あははー!やめっやめて!くすぐったい!」
予想以上の反応に俺は少し驚いたが、桜木が不機嫌になっても困るので、ここら辺でやめておいた。桜木は少し赤面していたが、悪くなかったと言わんばかりの顔だ。
「桜木、顔が緩んでるぞ。」
「えへへー。だって...だって...。」
油断した顔を見られたのが相当恥ずかしかったのだろう。桜木の顔が更に赤くなってきた。指摘するのはまずかったか?
「ふんっ...。」
一時の沈黙のあと、桜木は頭まで布団を被りスマホを弄り始めてしまった...。完全に拗ねてしまったのである。その後は謝罪の言葉を述べたが返事はなかったので、会話は途絶えた。俺は特にやることもなかったので、床に寝転がって、目を閉じた...。
時刻は午後6時頃、リビングからは夕飯の用意が出来たことを告げる声が聞こえた。立ち上がり、ふとベットに視線を向けると桜木の姿は無い。リビングにでもいるのだろうか。
しかし、リビングには母の姿があるだけで、桜木の姿はなかった。
「桜木どこいった?」
「志乃ちゃんならお風呂入ってるわよ〜。」
「げっ!?」
俺が1番おそれていたイベント、『入浴』。
桜木のことだ、どんな格好で出てきて俺をからかってくるかわからない。
母さんの話を無視して、自衛のため部屋に戻ろうとしたが...時すでに遅し。風呂から桜木が出てきてしまった。
風呂から出てきた桜木は先程のネグリジェを纏っていた。流石に親の前だからというのもあるのかもしれないが、俺はホッと息をつく。
「さちこさーん。お風呂いただきましたー。」
「志乃ちゃん。ご飯出来てるから、座って待ってて。脩もお風呂入って来たら?」
「いや俺は...。」
「そうだよー!私だけ悪いし...。」
いざ風呂場に来てみると...。
「流石に入りづらいな...。」
そう嘆く俺を、桜木は今どう思ってるのだろうか。風呂の戸を開けると、俺の家の風呂なのに、なんとなく違和感を覚えた。そりゃあ、同級生の女子高生が入ったあとだからそう感じるのだろうが...。
「桜木が浸かった湯。」
うわーすげぇキモイ事言ってるわ。
...流石の俺にも理性が働いたので、浴槽の湯には一切触れずにシャワーで体を軽く流して風呂を出た。
『サクハラ』やめてください! 弓倉ハルキ @YumikuraHaruki
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