【あとがき――という名の簡単な解説】



 はじめましての方ははじめまして、そうではない方はいつもお世話になっております。吹井賢です。


 ……という挨拶はお決まりのものですけど、依頼者さんははじめましてではないので、代わりに「いつもありがとうございます」という言葉を書いておきます。

 ご依頼いただき、ありがとうございました。

 改めまして、吹井賢です。


 こちらの『ある雨の日に』は、Skebの依頼を元に書かれた作品です。お題は「姫子が准と一緒にプレゼントを選び、霖雨にサプライズで渡す」でした。……渡すところまで行ってねーじゃねーか!! 本当にごめんなさい! でも、この話はここで終わる方が余韻が良いと判断した結果なので、どうかご容赦くださいね。

 話としてましては、なんと言いますか、姫子と准が相談しているだけなのですが、『犯罪社会学者・椥辻霖雨の憂鬱』シリーズが椥辻霖雨の一人称小説である以上、本編ではありえないお話です。二人だけだと、こんな感じなんですね。

 この話は、姫子の「椥辻霖雨に向けた、まだ名前のない感情」についての話であり、その感情が根底にある“思い遣り”こそが、最高のプレゼントだ……というものなのですが、その実、准の話でもあります。冒頭詩はかつての准の回想であって、霖雨が遭遇したあの事件の直後なのでしょうね。こちらもこちらで、ちょっと一言では言い表せない距離感が出ていて、個人的に凄くお気に入りです。この話が准の話だとすると、何故最後に、彼女が「准は何故か眩しそうに眼を細めて、また笑った」のかは自明で、姫子が羨ましいんですね。姫子は、椥辻霖雨のことを知らないが故に、今から知っていくことができるけれど、准はそうじゃない。何せ、霖雨のことをよく知ってしまっているから。解答の話で言うなら、彼女は正解が分かってしまっているので、もう、「霖雨は何を貰ったら喜ぶだろう?」と考えることができない。だから、姫子のことが少しばかり、羨ましかったのです。

 「言葉は三角、心は四角」という言葉がある通り、感情って一言では言い表せないものですが、彼女達の感情に思いを馳せていただければ、とても嬉しく思います。


 この作品が、皆様の一時の楽しみになれば、それが作者にとって最高の喜びです。

 それでは、吹井賢でした。


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ある雨の日に 吹井賢(ふくいけん) @sohe-1010

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