チップは私、奪ってご覧なさい

 少ない小銭を握りしめ、平民行きつけの場末の酒場で安い料理を食べる。

 まぁ嫡男じゃなかったし……贅沢とかできる状況じゃないし……。

 貧乏貴族ってだいたいこんなもんだしな。


「エド、今日はなんでまた……」

「やぁ……男爵になってね」

「は?平民になったんじゃなくて?」

「いいや……」

「男爵になったらいいもん食えるだろ」

「いいや……」

「なんか今日は客が多いしさ……まぁ常連だから席空けてやるけど……」

「ありがとう店長」


 見渡せば侯爵子息やら我が家より潤っていた男爵一家やら……元がつくのかもしれないが……。

 安いけどうまいしいいんじゃないか?不満そうだけど普段何食べてたんだろう。

 やっぱこう……わからんな、偉い人は何を食ってるんだろうね?鶏肉とか食べないのかね?

 野菜と鶏肉炒めたやつで十分だと思うけどな……。

 普通の貴族って食べないのか?


「こちらにおられましたか」

「レイズさんですか」

「とりあえずは……公爵閣下からの伝達です。以降は公爵の側近として寄り子の面倒を見るようにとのことです」

「側近?」

「側近ですね、それと本はしばらく没収ということで」

「没収……?」

「側近より反応がいいですね……」

「……」


 どうすりゃいいんだよ……。


「お食事が終わったら公爵邸へ来ていただけますね?」

「あ、はい……」


 食事位はゆっくりさせてほしいと思いムシャムシャ食べ終わるとはらっておいたとかえされ、なんかもう1つ頼んでおけばよかったと思った。






「よく来ましたわね、スケベ……エロドワード」


 飄々としたノミ男爵をみてやはり計算であのような手段に出たのだろうと確信する。


「エドワードです、ギャンカス公爵」

「いい、エロ?」

「せめてエドでお願いいたします」


 これで愛称で呼べるますね。まぁ貴方の想定通りでしょうけども。


「エド、これからは私の側近として働いてもらいます。新参寄り子のまとめ役、派閥参加貴族の見極めが主な仕事です」

「荷が重いのでは?」


 あら?随分下手に出ますね。謙虚なわけではないですし……。

 言質が欲しいということかしら?

 いいでしょう、多少は匂わせて差し上げましょう。


「もしも功績を上げれば……貴方の欲しいものを与えるチャンスを上げましょう」

「欲しいもの?」

「ええ、欲しいものです。今は手が届かない、それでもあなたが恋い焦がれ、憧れたものが手に入る機会を差し上げましょう」

「それは……」


 鋭い眼光、ええ……そうよ。

 私を手に入れさせてあげます。


「何でも良いのですか?」

「なんでも?貴方が求めるものは一つのはずでしょう?」

「……そうでしたね」

「励みなさい、レイズ。資料を渡して送って差し上げて?私の側近ですもの」

「はっ」


 背筋を伸ばして帰るエドに男気というものをみた。

 そこまでして私が欲しいとはね、ここまで求められるとは思いませんでした……。

 いいでしょう、やってご覧なさい。機会は与えましたよ。

 私を落とせるかどうかの賭けをしましょう。

 レイズには私のことに詳しい貴族のリストを渡しました、利用できるなら利用しなさい。






 まさか、家族を救える機会がこうもあっさり来るとはな。

 確かにみんな賭け事で破滅してしまったが……それでも家族だ。

 必ず救ってみせるぞ


「ノミ男爵、こちらを」

「レイズさん……これは?」

「貴族のリストです。貴方が求めているもののために役立つでしょう」


 家族を助けてくれるであろう人たちか。

 あの場で勝っていた人も、家族が差し押さえられた人もいるな。

 なるほど、彼らと関係を深めていく必要があるわけだな。

 俺が欲しいものは失った家族だ!

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賭け金は私、存分に勝負なさい @masata1970

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