第5話 今日は終わりです
近況ノートに記載しましたが、ジャンル変更を行いました。
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あれからゆっくりとしたお茶の時間が流れる。相変わらず
「グレン、口を開けてください?」
「自分で食えるって」
「また約束を破ったんですから、私の言うことを聞く義務があるんですよ。」
「…わかった。」
お姉様は師匠の口に、お茶菓子を放り込んで嬉しそうにしている。そんなのを対面に座ってマジマジと見せつけられている私は、お茶を飲んでいるのか、砂糖を吐いているのか、わからない。
「おい、カレットが見てるぞ。」
「あら、カレットさんごめんなさいね。妹弟子を放って置くなんて、はいあ~ん。」
お姉様が手に持ったお菓子を私に差し出してくる。
やめてください、たかが町娘が公爵令嬢に菓子を食べる世話迄させたと知られたら、貴女のお祖父様に何処の戦場に放り込まされるのかわかりません!
だからローテーブルの向こうから必死に手を伸ばしてプルプルしないで下さい。
「普通に受け取ればいいぞ。」
「あ、はい。」
師匠の言葉でお姉様から菓子を受け取る、助かったけどお姉様はちょっと不満そうだ。
「妹が出来きて嬉しかったから、甘やかしたかったんですぅ!」
「はいはい、そういうのは寮に帰ってからやれ。」
師匠の言葉に、お姉様は顔を輝かせる。
「そうですね!カレットさんは寮住まいですか!?」
「はい、そうです。」
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王立魔道学園に通う方法としては、大きく分けて二つある。外部から、つまり自宅や下宿先と言ったところから通う方法と、内部から、学園内にある寮から通う方法だ。
私もこの学園に通うことになって、最初に聞かれたことはどちらから通うかだった。特待生ともなれば、全学費と全寮費を免除、外から通う場合、補助は出るが下宿代や食事代はかかると言われれば、一も二もなく寮に飛びついた。
だけど寮は寮とて凄かった、部屋の選択をする時に、説明してくれるお姉さんが間取り図を見せてくれたんだけど、ほんと凄かった。
なんかタワマン最上階みたいな部屋が並んでいた。
「流石に特待生とはいえ、平民の出身の子に選ばせてあげることは出来ないんだけどね」
「いえ、結構です。」
「ごくたまにいるのよ。「特進クラスなのだから一番いい部屋を用意しなさい!」とか言う子が。」
お姉さんがは明らかにホッとした様子で内情を教えてくれた。
「貴女だったら、この辺りからね。」
「あの、私の実家はこれより狭いんですが…」
そう言って、見せてくれた間取りも凄かった。流石に工房や店舗のスペースを含めれば勝ってるとはいえ、生活スペースだけで言えば完全に負けていた。お風呂だってついてる。
ウチが鍛冶屋で熱源には困らないから、近所でお湯を貰いに来る人が多かったけど、みんな基本お湯で体を拭くだけ。
あとたまに家族で
銭湯?だからそれがサウナなんだって、平民なんて基本埃塗れ、土塗れ、垢塗れだ、そんなんのために態々大量の湯を沸かして湯船にを満たして、ドロドロの平民を湯に突っ込んでドロドロの湯にして、それを抜いて掃除することを考えたら、最初から洗い場と、蒸し風呂に分かれていて湯を抜く必要がないサウナのが効率がいい。
清潔なお湯のお風呂に浸かるとかどこの王侯貴族だよ。
ついでに平民は男女混浴だった、単純にその方が効率的だからだ。お貴族様は知らん。
流石に更衣室と洗い場と別れていたけど、蒸し風呂はみんな湯着を着て、あとは変なことが起きないように、基本家族から離れないようにしていた。
本当にここは乙女ゲーの世界かと思ったものだ。
「お風呂は大浴場もあるからね、清掃時間以外はいつでも入れるから。」
いろんなことを考えていた私に、お姉さんが言う。王侯貴族の世界はここにあったのか…。
そんな中で私は幾つも間取り図を見せてもらいながら、ようやく一つの部屋を選んだ。
「本当にここでいいの?貴女ならもっといい部屋を選んでも文句は言われないわよ。」
「はい、ここでお願いします。」
ビジネスホテルのシングルルームよりは広くて、前世の私の部屋より狭い部屋。ちょっとしたミニキッチンにトイレ・シャワー・洗面台が別、湯船は無い。その代わりベットスペースはちょっと広い、広めの1Kそんな部屋だ。
自分一人で住んで、生活のアレコレを任せることが出来るのならこんなもんだろう。そうして私は自分の住処を決めたのだ。
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「では、今日から一緒に生活できますね!私のお部屋も余っていますし。」
「はい?」
お姉様の言葉に私の頭の中は?で埋め尽くされる。私は入学前に引っ越ししてきて、既に生活を始めている。
「いえ、私の部屋は既にありますけど…?」
「!?」
なんすか、ヤメてください。そのヤンキー漫画で見たような角度でこっち向くのは、あとメンチ切らないでください。そういうとこは相変わらず暗黒悪役令嬢なんですね。
「アホか、寮内で貴族との付き合い方なんかを教えてやれって言ってるだけで、お前の部屋で面倒見ろとは言ってねぇ」
「きゃん」
お姉様の頭にチョップが炸裂する。師匠ありがとうございます。
「カレット、お前もイリスに平民のことを教えてやれ。今まで平民のことなんて気にせずに生きてきたヤツだからな。」
「えっと、いいんですかね。そんなことして。」
「そうじゃねぇと、さっきみたいなことが延々と続くぞ。」
「あっ、はい。」
お姉様に平民のことなんて教えていいものかとも思ったけど、これが続くと困るから了承した。
「あと
師匠、お気遣いありがとうございます。でもチョップが痛かったのか、師匠の膝に顔を埋めてるお姉様の頭を撫でてる姿で色々台無しです。
「お姉様、イチャイチャしないでください。」
「イチャイチャなんてしてませんよ!?」
お姉様は顔だけこっちに向けて叫んだ。
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その後もしばらく会話を楽しんだ後、師匠が声をかけてくる。
「お前ら、いい時間だからそろそろ帰れ。」
「もうそんな時間ですか、そろそろ御暇いたしますね。カレットさん、行きましょう。」
お姉様が立ち上がる、窓の外はまだまだ明るいんだけど…私はとりあえず立ち上がるとお姉様のあとに続く。
部屋を出ると廊下から見える太陽は傾きかけ、夕暮れ前といった様子だった。
「えっ?」
慌ててお姉様を見るが、イタズラが成功したように嬉しそうにしている。
「今日全てを知る必要はありませんよ、これから貴女は共に学んでいくのですから。」
その言葉と手に握られた杖が、私の胸を熱くさせた。
あとそんな薄っぺらい胸が厚くなる訳ねぇだろって思ったヤツは、水魔法で熱々熱湯コマーシャルの刑に処すからな。
そうして私達は寮への帰路につく、正直師匠の部屋へはどう来たのかサッパリだから、お姉様の後をついて行くしか無い。
「師匠の部屋って、なんでこんな変な所あるんですかね?」
「学園側にどこでもいいって言って、貰ってそのままらしいですよ。そのあと何度か部屋の変更を打診されたらしいですが、断ってるそうです。」
仮にも国の英雄だ、もっといい部屋はなかったのかと思ったんだけど、なんか凄く師匠らしくて納得した。
そんな事をポツポツ話していると、私の住む女子寮に到着した。あとはここでお別れすれば1日が終わる。
「カレットさん、今日は一緒にお風呂に入りましょうね!」
お姉様が恐ろしいことをぶっこんできた、いきなり裸の付き合いかよ!
私だって前世の記憶があるから風呂がどういうものかは知ってはいるが、こちらの作法は全く知らない。入寮してからもシャワーで済ませて来たのだ。どうする…
「あの…それは
とりあえず聞いてみることにしました。
「サウナもあったと思いますが、大浴場なので湯船ですね。」
「あの、私湯船に浸ったこと無いから作法がわからないので…」
サウナもあるんかい!と思いながら一縷の望みを賭けてお断りしようとしたら
「まあまあ、それじゃあ勉強しないといけませんね!お姉様が教えて差し上げますからね!」
と、ものすごく嬉しそうにしていた。これもう絶対断れないよね…
「それでは、後でお部屋の方へ侍女に迎えに行かせますから。」
そう言って、お姉様は階段を登っていかれました。
私の一日終わりだと思ったんだけどなぁ…
乙女ゲー世界の主人公に転生しましたが、悪役令嬢がNTR済みで私の前でいちゃラブしてきます 釜屋留間幾二 @neji_
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