第5話 誤解
「ねえねえ、あの人たち見てよ」
「うわぁ、美男子と美少女じゃん......」
「すご、オーラがやばすぎる!」
「ああ、私もこういう人と付き合いたいわぁ」
「「・・・・・・」」
うぅ、もうなんなんだよ......
さっきから周りの人の視線が熱い......
特に、女子からは......
もしかして、美少女と俺じゃあ釣り合わないとか言ってないよな......
俺も、今の顔だったら結構自信あるのに......
そして、隣にいる朝霧はというと......
「・・・・・・」
さっきから、全然喋ってくれないんですけど......
で、でも、朝霧が誘ってきたんじゃん。
もしかして、シカトされているのか.......?
まあ、それもあながち間違いではないかもしれない。
だって、俺をいじめていた美少女たちの一人だからな......
まあ、だけど、このまま気まずい時間が続いてもな......
「あ、あのー、朝霧さん?」
「____何?」
「えっと......」
うぅ......さすがは【氷の美少女だ】
言い方が怖いというか、滅茶苦茶塩、塩対応だな......
いや、言い方だけじゃなくて顔もだいぶ......
「ど、どうして俺と登校しようと思ったんだ?」
「____た、ただの気まぐれ......」
「ああ、そうか......」
うぅ、こういう時ってなんていえばいいんだ!?
もう、さっきから全然表情が変わっていない......
な、なにかいい方法は......
あ、そうだ。
確か、研究書ラノベにこういう時の対処方が書かれてた気がする......
よし、
「俺は、嬉しいな!こんな美少女と一緒に登校できて!」
「____えっ......」
どうよ、この名言は!
この言葉は、【さっきから塩対応な幼馴染を惚れさせてみた!】67pに書かれているものだ。
しかも、これは作中一番の名シーンといっても過言ではない。
絶対惚れてしまうやろ!
「____えっ、あ、ありがとう。黒瀬君もかっこいいよ......」
「ど、どうも......」
あれ......おかしいな......
多少は、朝霧も顔を赤めたが思っていたほどではない。
やっぱり、ラノベって現実的じゃないのかな......
あ、ていうか、もう学校についちゃうじゃん。
はあ、結局、気まずいままで終わってしまった......
もしかして俺って、平凡なままなのかな......
ん?待てよ......
朝霧と登校している姿を見られたら......
「ご、ごめん、朝霧さん、また学校で会おう」
「____えっ、あっ......」
そして、俺は足早に校門に行き、玄関へと向かった。
「ふぅ、危うくみられるところだった......」
ん?あ、あれ......なんで、見られたら駄目なんだ?
もう、俺デブじゃないじゃん.......
あ、もしかしてやっちゃったやつ!?
あー、もう絶対、なんで先に行くの?とか思われてるじゃん!
今、戻ってももう遅いよな......
もう、最悪だ。
朝霧にあったら、謝ろう......
♢♦♢
____キーン、コーン、カーン、コーン......
「よーし、数学の授業を始め___って、おい、黒瀬?具合でも悪いのか?」
「あ、いや、ちょっと胃の調子が悪いだけです......」
「辛かったら、ちゃんと先生に言うんだぞ」
「わかりました......」
や、やばい.......もう最後の授業じゃん.......
さっきから、一回も朝霧に謝れていないんだけど......
うぅ、やばい、どんどん胃の調子が悪くなってくる。
本当は、今すぐにでも謝りたいのに......
さっきの休み時間では、女子からの質問攻めをくらって廊下にも出れなかったし......
絶対、怒ってるよな......
うーん、どうしたものか......
「よーし、黒瀬ー、この問題の答えを言ってみろ」
「あ、え、えっと......」
ヤベ、さっきから考え事してて全然頭に入ってなかった。
えっと......あれが、xで、うーん......
うん、全然わからん。
よし、完璧の印象が崩れるが、仕方ない......
「す、すいません、わかりません......」
「黒瀬でもわからないのか......よし、じゃあ椎川、答えて見ろ」
ん?椎川......
「はい、y=-4xです」
「正解だ。さすが、学年二位!」
「ありがとうございます」
そうだった......俺のクラスには自分をいじめてきた美少女の一人、椎川楓音がいるんだった......
彼女は、成績では俺の次の順位、誰にでも優しい?スポーツはまあまあできるということから、通称【学園の天使様】と呼ばれている。
ちなみに、俺はこのあだ名を聞くときはいっつも吹いてしまう。
なぜか、この学校では美少女たちにあだ名をつける風習があるらしい......
はあ、俺にも優しくしてくれたらな......
そんなことを思いつつ、ふと俺は椎川のほうを向いた。
「あっ......」
やべ、たまたま、椎川と目があってしまった。
なぜだろう......いじめをされたのにもかかわらず、めちゃくちゃ今、ドキドキしてるんだけど!?
やばいやばい、心臓がバクバクしすぎている......
まあ、そりゃあそうだろ。
だって、いじめされたとしても、椎川という美少女と目が合ったんだから!
というか、目が合ったということは、椎川もこっちを見ていたってことだよな......
だって、席、結構離れてるし、椎川のほうが前の席だし......
本当に、女心って全然わからん.......
よし、これも勉強しとくか!
♢♦♢
「よし、これで授業は終わりだ!もう帰ってもいいぞ!」
先生がそう言うと、一斉にクラスの女子たちが俺の周りに集まってきた。
「ねえねえ、放課後話せる?」
「私たちとカラオケ行こうよ!」
「やば、黒瀬君って、本当にイケメンだね!」
「すご、腹筋割れてる......」
「ご、ごめん......ちょっと、俺、用事あるから......」
やっぱ、イケメンは最高す、じゃなくて、早く朝霧に謝らないと......
えっと、確か、朝霧の教室はと......
「おーい、黒瀬ー?」
「あ、蓮......」
すると、突然蓮が現れた。
しかも、背後からだ......
「どうしたんだ?そんなに走って......」
「い、いやー、探し物だよ......あるいみね......」
もう、こういう時に限って、蓮って喋ってくるんだよな......
少しは、俺の気持ちも考えてくれよなぁ......
「へぇ、モテる奴って大変だな」
「いや、お前も少しはモテるだろ!」
「ふん、まあな」
う、うぜぇぇ......
本当は、縁を切りたいくらいだけど、仕方ない。
一応、少しは優しいやつだからな......
「あ、そうそう、お前にいいこと教えてやるよ!」
「ん?何?」
すると、蓮は、にやりと表情を変えた。
これは、まさか......
「なんと、あのグラビアがまさ___」
「はい、そういうのもういいんで!」
はーい、やっぱり来ました!
このお約束!
「くそー、お前っていうやつは!ケチだな!」
「ケチは、何度も言われてる!とにかく、俺は急いでるんで!」
「はーいはい、わかりましたよ、イケメン君」
「一言余計だわ!」
もう、今の無駄な会話で、何分がたったのだろう......
早く、行かなけらば、もう帰ってしまうじゃないか!
えっと、確か、ここだよな......1-2組......
よし、
「あのー、朝霧さんはいますか?」
「えっと、その人なら今さっき帰りましたよ?」
「えっ......帰った?」
「はい、帰りました」
な、なんだと......!?
今、帰ったっていったよね?
う、うそでしょ......
【復讐】という言葉にかられ続けて三か月、俺は完璧イケメンに生まれ変わっていました〜なので、俺のことをいじめてた?美少女たちを惚れさせようとしたのだがすでに好かれていたらしい 柳御和臣 @syousetuzyuunn
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