少し待ってて、ミルキーウェイ
義為
本編
「俺、この戦争が終わったら」
「言うな!縁起でもない!」
「地元に残してきた彼女と結婚するんだ!」
7月6日、緑は深さを増す。この国でも、人間の営みと死など関係なく、何億回と繰り返した夏は盛りを迎えつつある。その緑に溶け込む3人の兵士たち。彼らは祖国の独立を守るべく手に銃を取った同志、戦争がなければ出会うこともなかった男たちだ。唐突に結婚宣言を叫んだのは、戦争前から兵士であった小隊長の青年。陽気な冗談と的確な指示で小隊を掌握する若き軍曹。今日響く笑い声は2つ。
「そういうの、俺の婆ちゃんの国では禁句なんだぜ」
先ほど遮ろうとした中年の小男が首をすくめる。この男はかつて妻子を持つプログラマーであった。近代戦の概念を1段階押し上げた最新の戦争は、彼のような普通の男をも兵士に仕立て上げた。
「おっちゃん、それ、俺の国じゃん!」
最年少の青年が片言で応じる。彼は留学生であったが、この国に命を捧げることを選んだ、かつて少年だった男。
「言った人間は絶対に生きて帰れないって」
その言葉を受けて、軍曹は破顔する。
「俺の足は地雷を踏みつけている。明日まで保たせるさ。お前らの国なら、遠くの恋人に会いに行ける日だろう?」
少し待ってて、ミルキーウェイ 義為 @ghithewriter
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