間話 少女 後編

ここしばらく感じていなかった、喧騒とした雰囲気に懐かしさと煩わしさを同時に感じる。人の温もりに飢えてはいたが、それとこれとは別である。夢とは思えないほどリアルな感覚に戸惑いはするが、どこまで行っても夢は夢なのである。


ここはどこかの街なのだろうか。あまり発展しているとは思えないが、たしかに人で賑わい活気がある。


老若男女問わず多くの人で溢れ、道脇には露店が入り乱れ、楽しげな声がこだまする。祭りのような雰囲気である。


「おかーさんーあのお菓子食べたーい。」

「しかたないねぇ。今日だけ特別よ?」


この喧騒の中で、誰とも分からない家族の声だけがやたら明瞭に響く。決して大きな声で話しているという訳ではないがたしかに目立って聞こえる。


「やったー!!あのお菓子みんな食べたいって言ってたの!明日自慢しちゃおーー!」

「ふふふっ。ほどほどにしなさいね。」


なんて事ない家族の会話。知らない家庭ではあるが、仲睦まじいことが手に取るようにわかる。


「おとーさん、今日早く帰って来る日だよね!!これお土産にするっ!!」

「あら。きっと、お父さん大喜びするね。」


ズドンッ


突然、どこかで何かが落ちるような音が響く。

今まで誰が何を行っても分からないほど賑わっていた街並みが、途端に音を失う。


ズドンズドンッズドンッ

響く音は次第に大きくなり、街のあちこちで鳴り響き始める。


キャーーッッ!!

誰かの悲鳴を皮切りに、街に音が戻る。

何が起こっているか理解出来ず慌てふためる声、どよめき、泣き叫ぶ声が街に溢れ出す。


動揺が広がり、その場から離れるように、一人また一人と動き出し、その流れは大きな渦となりさらなる混乱を生み出す。


「おかーさんあれなんだろ?」

「そんなこといい!ここから早く離れるわよ手繋いで!!!」


周りの慌ただしさとはかけ離れたような、おっとりとした声で女の子がそう尋ねる。その声に影響されてかされずか、空を見る人が増える。


空を見ると黒い人影がぽつんと見える。明らかに空を飛んでいる。きっと魔法なのだろう。なんとなくそう感じる。


人影から次々と氷の槍が放たれ、町一帯に降り注ぐ。


人影に気づいた者はより焦り、気づいていない者にもその焦りが伝播し、もはや止めようが無いほどに大きな混乱になる。

人が人をおしのけ、我先にと逃げ惑う。先程までの楽しげとした場所と同じ場所とは思えないほどの地獄絵図へと一瞬で変貌した。


氷の槍は無作為に人も物も貫く。血飛沫が飛び散り、家の屋根を貫通する。露店をめちゃくちゃにしながら無数の氷の槍が降り注ぐ。

みんな自分が大切で、他人の様子を気にする人なんて一切いない。


「おかーさん。。いこー?。。。」

「....」


女の子の声だけが静かに響く。


「ねー。おかーさ....」



そこで夢の世界はプツリと途切れる。


はあはあ

女の子の声が途切れた瞬間に目が覚める。


嫌な夢だった。声しか聞こえなかったが、その後の結末なんて容易に想像出来てしまう。


眠ってしまう前に居たはずの女の子と魔力で作った猫はすでに消えてしまっていた。

まるでそれすらも夢だったのではないかと感じるほどに、跡形もなく消え去っていた。


少女が消えた場所から、少し移動した先に古びた小さなお墓があった。

苔がはえ、周りは背の高い草で囲まれ、誰かが来たような形跡はまるで無い。ましてや、こんな森の中に一体誰がお墓を立てたのだろうか。しかし、先程の少女が脳裏によぎる。何も関係ないのかもしれないが、もしかしたら、、、と立ち止まりお祈りをする。少しだけの物悲しさを胸にまたどこかを目指して進み始める。




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こんばんは。久しぶりの更新失礼しました。

また気が向いた時に続きを投稿したいと思います。(・v・)

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(仮)跳梁跋扈な世界にゴーストとして転生したけど、スローライフを目指す。 らいちう @raitiu

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