第3話
大量のドラゴンを貪っていたところ、突然目の前に真っ黒い渦が発生し、中から誰かが現れた。
「初めましてだな、大怪獣よ。我は北の魔王、ログルスだ」
『グァァ……?(誰だ……?)』
人型の姿を模しているが、頭からはツノ、背中にはコウモリの翼、腰からは尻尾が生えている生き物がそう挨拶をしてくる。
一応言語の勉強はしたから何を言っているかわかるが、魔王か……。たしかダンジョンはこの魔王が作ったものらしいし、実質親みたいなものか? でも人類の敵だからなぁ……。
とりあえず黙っていても良くないと思い、気さくな挨拶をしてみることにした。
「こんにちはログルスさん! すごい魔法ですね!」と、頭の中で完璧なシミュレーションを行ったが、いざ話そうとしてみると……。
『
「…………えっ?」
頑張って喋ろうとしてみたけど、やはりうまくいかない。ってか今自分なんて言った? 無礼な感じになってなきゃいいけどなあ……。
魔王ログルスは一瞬思考が止まったが、次の瞬間汗が一気にブワッと溢れ出し、距離をとる。
「(し、喋った! いや、それだけではない……明確な殺意を持っていたっ! この世界で一番殺意に敏感なこの我が、それに気がつかなかっただと!!? あ、ありえない!!!)」
『(挨拶してくれたし、実はいい魔王なのだろうか? なら仲良くなれるかなー)』
「(そうか! コイツは殺すということをもはや作業としか思っていない! どれだけ残虐非道な怪獣なんだっ! 駄目だ……コイツは相容れない存在だ!!!」
『(祝初友達、とかか!? ウヒョ〜!)』
※見事にすれ違っていた。
若干テンションが上がっている俺に対し、魔王ログルスは何やらブツブツと呟いている。
そして、宙に浮いて何かを唱えると、手のひらがギラリと輝く。
「万物を燃やし尽くす最高火力の業火……【
『(えっ?)』
すると、ログルスの手のひらから真っ黒の炎が吹き出し、俺の体を包み込む。
鱗が溶け出して耐えられない! ……というわけではなく、特に何も感じずに炎を浴び続けていた。
『(なぜ急に炎を? もしや魔王流の挨拶とかか? ならばこやちらも火を吹かねば無作法……ってやつだな)』
――ゴゴゴゴゴゴ……!!!
胸元が赤く輝き始め、稲妻が走る。十分に充填ができたと感じ、スゥッと息を吸い込み、放った。
「あ――」
『ガァアアアアアアーーッ!!!!』
――ゴォオオオオオオオオオオ!!!!
口から放たれた稲妻混じりの炎は先ほどのくしゃみとは桁違いの威力を発揮し、全てを焼き尽くした。
……やばい、やりすぎた! 手加減しようにもまだ炎を吐き慣れねないし、やるんじゃなかった!!!
『グォオー!(大丈夫ですかー!)』
「はっ……! はっ……!」
『グァァ……!(やった、生きてた!)』
どうやら間一髪で避けていたらしく、すぐ横でヘタリと座り込んでいた。危うく燃やし殺してしまったと思っていたから、生きていて嬉しく感じる。
見つけたログルスに顔を向け、気持ちニコッと笑ってみせた。
「ひ、ひぃっ!?!?」
『(な、なんか怖がられてるような……って、よく見たらこの人の片腕焼け落ちてる!?)』
やってしまった……! 友達になってくれそうな人(?)の腕を消してしまうなんてッ!
この場合どうすれば良いのだろうかと悩み、一つ案を思いついた。
『(よし、人間の街に行って人を呼ぼう! そこで治せる人を探すんだッ!)』
善は急げということで、右も左も分からないまま俺は駆け出す。
「なっ……み、見逃した、のか? 我は、助かった、のか……。ははっ、もう……世界征服はやめだ。世界を統べるのは我ではないと、存分に思い知った……。
せっかく命拾いしたんだ……配下全員で……誰もいない辺境の地で畑でも耕そう……」
残された魔王はポツリポツリと呟いた。
『グォオアアァァァ!!!(待ってろログルス! 今助けを呼んでくる!!!)』
雄叫びをあげながら猛ダッシュする大怪獣。
一国が大パニックになるまで残り数十分。
人間になりたいトカゲ、最終進化で選択ミスって大怪獣になってしまった 海夏世もみじ(カエデウマ) @Fut1
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