この作品には、ものすごい吸引力のあるホラー性が備わっています。
「かさとそ様」と呼ばれる、「こっくりさん」に似た怪異が中心となったストーリーで、インターネットのサイトで「かさとそ様」という謎の存在に質問を入力すると、それが瞬時に答えてくれるというのが主な内容です。
このストーリーは、ある瞬間を持って一挙に不穏さが噴出します。
とある質問を入力した後、一見意味の通らない、「謎の文字列(全て平仮名)」が登場します。
小説を読みなれている人間ならば、真っ先にここで「一つの解読法」を試してみたくなります。
「大体はこのパターンだと、このやり方で」と文字列を解読しようとし、「なんか、単語っぽいのが出てきたな。でも、どういう意味があるんだ?」と、解けそうで解けない、更なる謎が出てきます。
そうして読み進めたところで、『作品の仕掛け』が強烈に発動するのです。
『暗号』を解読しようと知性を働かせたことで、そこからぐいぐいと「恐怖の連鎖する事態」に引き込まれていきます。
そういう緻密に計算されたようなホラー性があり、強烈な没入感を持ってラストまで読み進めさせられる作品です。
久しぶりに、「あぁ、ホラーだな」と思うものを読んだ気がします。
「かさとそ」……言葉の響きだけで、そこはかとない恐怖感が伝わってきますね。
今でこそ、対話的なインターフェースを持つAIソフトの普及によって、ニアリアルタイムで応答が返ってくるようなサービスも珍しくありませんが、かつてはそうではありませんでした。
そんな時代にネットのアンダーグラウンドの世界にひっそりと存在していたサイト『かさとそ』。
「かさとそ様、」の後に続けて質問を打ち込むと、何でも瞬時に答えてくれるのです。
その正体と、主人公と、主人公の友人のFちゃんがどうなってしまったのか……その答えは是非、本文で確かめてほしいと思います。