めんどくさいのに

「トワ!大丈夫か!」

来ないで欲しかった。 出来ることなら、置いて言って欲しかった。

こんなの本心では無いのは分かってるけど、せめてまだ来ないで欲しかった。

「トワ!怪我はな…… って、どしたの?」 レカは小さくなった俺を見てびっくりしていた。 でも小さい頃は一緒だったから、小さくなった俺でも上手く扱えるはずだ。

「レカ……」 そう言いながらトワは俺にぎゅっと抱きついた。

昔みたいに懐かしんでいると、明らかに怒りの籠った声が伝わってきた。

「レカとミツバはトワと一緒にいて、俺が何とかするから。」

いつもはすべてをめんどく下がっている彼が武器を持った。 それは俺が想像したことも無い光景だった。

「見とけよ。ミツバ こう見えても、うちのリーダー結構強いんだぜ?」

レカにそう言われ、俺はまじまじとシイラを見つめていた。

「なんだ、次も人間のガキか。 どうせ弱いんだろ。戦うだけ無駄だから帰りな。」

リンは明らかに舐めた感じでシイラに言った。 「弱いのはお前だよ。 ほら、できるものなら俺に攻撃してご覧。」

シイラも完全に相手を舐めていた。

「後悔すんなよ!」

そう言い、リンは突っかかってきた。

その瞬間、リンは元いた場所に押し返された。 「お前……まさか!」

リンは先程とシイラを見る目が変わっていた。 まるで、権力に屈するように。

「ねぇ……もうめんどくさいなぁ…… まず謝らないかな? ほら、床に正座してこっちを見て言えよ。 ごめんなさいって。」

リンは若干怯えた表情で言った。

「嘘だ! 攻撃が通用しないなんてそんなチートみたいなことが使えるやつ、いるわけが無い! ふざけるな!俺と真っ向勝負だ。」 シイラは珍しくノリノリだ。

「いいよ。どこからでもかかっておいで。」

そういうシイラは武器をひとつも所持しておらず、何で戦うのか俺からは分からなかった。 「お望みどうりにしてやる!」そう言い、リンは立ち向かって攻撃を仕向けに行った。 しかし、リンはその場から1歩も動かなかった。

「引っかかったね。お馬鹿さん」

どうやらシイラはリンを小さなはこのような透明の場所に閉じ込められたようだ。

「だせ!ここから!!クソが!」

ずっと暴言を吐いているリンを横目にシイラは一人で何かをブツブツ言っている。

「そこで絡めて…ここで加える。 更に強めて、分からせる…。 よし、これで行こう。」 「ひぁっ!?」

突然リンは謎の声を上げた。

「てめぇ…離せ…!」 リンの閉じ込められていた場所の床からツルが湧いて出て、リンに絡みつき、動きを封じ込めたようだ。 「ねぇ…もう俺がどういう能力者かわかったでしょ?」

誰も攻撃出来ない、強い能力を沢山使っても身体に全く影響しない、そして自ら動かない そんなの、まるで━━━━━━━━━━ 「怠惰じゃないか!」 リンは怖気付いたような顔をしていた。 「怠惰の悪魔…! この悪魔…!もしかして人間じゃっ…!?」 リンは口を塞がれていた。 「ねぇ、それ以上言われると困るんだけど じゃないと俺、こうしちゃうよ。」 そういいながら銀色のナイフを取りだしリンの喉元に近づけた。 「っ……! ごめん…なさい!」

リンも観念して謝ったようだ。 「そっかそっか。 所詮そんなもんか…」 シイラは相手を煽るような、少し残念がるような口調でそう言い、どこかへ行ってしまった。

「話を聞いてやる。 話せ。」

リンは完全に勝ち目がないと悟ったらしく、大人しく話を聞いてくれた。

「話もいいけどさ!俺の事忘れてないよなー?」

グイッと、トワがあいだから身を乗り出してくる。

「また、とりあえずこのパーティーにようこそ!リン。 さっき戦ったことは水に流して、仲良くしようぜ!」

トワがニコッと笑いながら拳をリンの前に突き出す。 リンは少し何かを考えたあと、少し口元だけ微笑み、コツンと拳を突き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生したからハーレムできると思ったけど美女に見間違えるほどの美男とパーティーを組むことになりました 大根丸 @12r17

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ