第30話 チートスキル【衝撃魔法】
少し冷静になったグレイは【衝撃魔法】がいかにチートスキルであるかを説明した。
「ステータス画面を見てわかってるかもしれないが、魔法の強化に繋がるような項目はない。RPGでお馴染みの攻撃魔力のようなステータスは無いのは変だと思わなかったか?」
グレイの問にベイブは素直に感じたままを答える。
「いや、それがあんまり。【回復魔法】って回復力を参照するから、他の魔法もわかりにくいだけでなんかのステータスを参照してると思っていました。もしかしてペペロペーの法則でわかったんですか?」
「それ知ってんのか。それでも証明されてるが、もっと単純な理屈だよ。レベルアップしたのに魔法スキルの威力が頭打ちになったんだよ。スキルは使って馴染ませると本来の威力を発揮する。魔法スキルもその過程で威力は上昇するから勘違いされてたんだが、使い慣れたスキルの威力が変わらないってのですぐにわかったんだ。ペペロペーの研究で魔法に関連するステータスにおいて攻撃的な威力上昇に関連するステータスはないと結論づけたわけだ。」
「でも待ってください。魔法スキルのスキルツリーを解放していけば強力な魔法が使えるようになりますよね。だからステータスアップで魔法を強化するよりそっちの方が簡単だし、威力もステータスに依存しないから最初から強いですよね。」
ベイブは当然の疑問を投げかける。
何せスキルの解放に必要なポイントはすべて1だ。10ポイントもあれば、特定のスキルのみを解放して強化できる。ベイブのようにその素養がわからないスキル出ない限り、さっさとスキルツリーを深くまで解放すればいい。
「そんな簡単にいくかよ。強力なスキルはそれに似合っただけの魔力がいる。鍛えれば大きくなるとはいえ、乱発できるようになるには「魔力操作」と「魔力変換」のステータス上昇が必須だ。スキルを使うための魔力のコストの減少やスキル発動所の変換ロスを抑えなきゃ無理だな。」
「それなら僕の【衝撃魔法】は千回くらい連射できるんだけど、かなり軽いし、威力も上がり続けるなら完全にチートじゃないですか。」
「そうだよ。レベルが上がれば最終奥義を初期魔法のコストで乱発できるんだから。これからツリーを解放するたびに実感するぞ。他のスキルもまあまあ強いし、お前を倒すなんて今の時点で襲撃するくらいだな、穴場でレベルアップしきったらもう並みの奴じゃ倒せないようになるから。」
「どうしよう。悪役っぽくいい感じに退場したかったのに。」
「無理だね。主人公がよほど頭良くないと追い出しルートにはならないからあきらめた方がいいな。」
俺の悪役プランは消え去った。主人公と敵対するなら頭脳戦ということか。
それなりに隙を作ったり、やばい奴とつるまないといけないな。
そうだ、もっと聞かないといけないことがある。
「グレイ、二つ聞きたいことがあります。まず原作での本編開始のタイミングと主人公が誰か教えてください。悪役としての体裁は何とか整えたいので準備期間を把握しておきたいんです。相手もわからないとどうしようもないですから。」
グレイは眉間にしわを寄せ、うつむき、額を手で押さえる。
覚悟を決めた顔になると、ベイブからの質問に答えた。
「まず、本編の開始時点での年齢は二十五歳で。王都の学園の教師をしている。そこで俺とお前は同僚というわけだ。そこに入学してくるのが主人公であるお前の弟、エリックだ。」
「エリック?誰ですか?まだ生まれていないですよね。」
「ああ、まだ生まれていない。王都の学校の入学年齢は十四歳になる年だから、あと四年後くらいに生まれる。母親はアルビダだ。」
あーなるほど、と言いたいが飲み込めない程のすごい情報量だ。
本編の開始時期、入学年齢だけでなく、アーサーとアルビダが上手くいくことまで分かった。
しかも俺がアルビダの子と敵対すると言う事はドラゴネアス家はドロドロのお家騒動になるのだろう。
ベイブは大きなため息をつき、グレイに応える。
「少し考えたんですが、元ネタのタイトルから考えるとドラゴンと恋に落ちるシナリオだと思うんですよ。ドラゴネアス家は森に潜むドラゴンを倒す事を目標に掲げています。本来ドラゴンを倒すべき人間がドラゴンに恋をするシナリオという事は、もしかして僕って世間的には悪役じゃ無いですよね。」
グレイは鼻で笑うと「どうしようかな」と話し始めた。
「どこまでネタバレしていい?人によるだろうし、知りすぎるとつまらないだろうし。」
「では僕が質問した範囲で回答をお願いします。僕がネタバレの範囲をコントロールするので、わざとでなければ全て僕の責任で大丈夫です。」
「分かった。じゃさっそくだが、ベイブは世間的には悪役ではない。ドラゴンを狩ったものとして次期当主としても期待されてる。」
「わかりました。エリックはドラゴネアス家では落ちこぼれですか?」
「そうだな。ドラゴンを倒すだけの能力があり、世間的にも評価は悪くない。ただ、アーサーを筆頭にベイブとマクシミリアンが優秀過ぎて比較すると落ちこぼれ扱いになる。正直エリックの世間的評価にはベイブの活躍ありきの部分が有るのも良くないだろう。」
俺の活躍がエリックの評価につながる?
「もしかしてエリックはベイブと同様に珍しいスキルの持ち主ですか?剣や槍を扱う様なものでは無く、例えば【光魔法】みたいな感じのスキルで最初はただ手が光るだけとか。」
「珍しい魔法スキルという点は合ってるし、初期スキルが使い所が無さそうなのも合ってるが、想像している様なスキルじゃ無い。はっきり言ってゲームのジャンルから変わってる。」
ジャンル?美少女ゲームとはいえ、ベースはRPGだろうから、そこからジャンルが変わっても魔法を使うとなるとシミュレーションゲームかな。それだとあまり大差ないか。TCGの変な魔法を再現する感じかな。TCGでの効果を再現するよりは背景ストーリーのイベントシーンを再現するイメージなんだろう。
「なるほど。おそらくTCGですよね。所謂、魔法カード的なやつのシーン再現ですよね。」
「それもそうだが、メインは召喚スキルだな。モンスターの召喚とそれに関連したイベントシーンの再現だな。ソシャゲのプレイヤーみたいな感じだ。」
「召喚されるモンスターってエリックのレベルやステータスに依存しないですよね。魔法スキル扱いだから。そうなると時間がかかるほどエリックに勝ち目はないゲームってことじゃ無いですか。クソゲーですね。」
ステータス固定のモンスターと無限に強くなる攻撃魔法、システムを理解したら戦闘で勝てないのは直ぐに気づく。
「まあな。一応ステータスを参照するスキルもあるがそれはモンスターへのバフだ。エリックのステータスを何倍かにして、モンスターに付与するからレベルアップは無駄じゃない。」
「でも、召喚とバフがけは同じターンに出来ないですから、召喚した直後から攻撃したら問題ないですよね。気をそらす策がないと。」
「そうだな。ベイブは基本三回行動だからヒロインをかき集めたハーレムルートじゃないとそもそも戦いにならないな。」
「それよく売れましたね。僕は知らなかったんですよ。」
「だって盛り上がったのはメーカーの信者と古のエロゲ界隈だもん。入口はカジュアルにしようと頑張ったけど、結局は難易度が高くて追放ルートは発売してからニヶ月して見つかったからな。」
悪役ブタ貴族に転生したので、悪役として死にたい B.U.M @bust-up-magic
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。悪役ブタ貴族に転生したので、悪役として死にたいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます