蘭月怪異譚〜2024〜

Day13 定規

「ヒトを物差しで測ってはいけないように、怪異ちゃんくんも物差しで測ってはいけないのだよ。ハジメくん」

　と、弔路谷怜（ちょうじたにれい）は語る。

　訳知り顔で。

「ヒト基準は特にいけない。ヒトは怪異を舐め腐っているからね！」

　いや、舐め腐ってはないだろう。

「いいや、舐めてる！　ペロペロキャンディーやアイスバー並に舐めてる！　『ポマード』を三回唱えれば怯むとか、べっこう飴が好物だから有効とか。馬鹿か！　サッちゃん、ポマードの匂い好きぞ!?　べっこう飴なんて大好物すぎて『もっと頂戴！』って追っかけてくるし、めちゃくちゃ足速いかんな!?　ボルト顔負けで走るからあの子！」

　そうなんだ。……じゃあ、弔路谷基準で一番怖い怪異って何だろう。

　そう思い、訊ねてみた。

　弔路谷は能面のような顔をして「ない」と言い切る。

　そして「強いて言うなら、」と続けた。

「人間かな」

「うわ、普通の答えだ」

「普通が一番怖いのよ。だって『普通』とか『当たり前』なんて誰も疑わないでしょ？　それに何より、人間は無限に怪異を量産するからね。一番ヤバいよ」