ちいちゃんとちんどん屋

黒猫

昭和時代の想い出

北海道の真駒内団地。ここに住むちいちゃんは、2歳の可愛い女の子だ。彼女の毎日の遊び場は、団地のベランダに広がるお砂場。お母さんが、ちいちゃんが毎日お外に出かけなくても楽しめるようにと、たくさんの砂をベランダに敷いてくれたものだ。


ある日のこと、ちいちゃんはいつものようにスコップを手に持ち、ベランダのお砂場で山を作って遊んでいた。彼女が一心に砂を掘っていると、突然、10センチほどの長い黒い毛虫が砂の中から現れた。「……。」ちいちゃんは驚きすぎて声が出なかった。人はなぜ驚きすぎると声が出ないのだろうか。不思議な気持ちでいっぱいになりながら、そっとスコップで毛虫に砂をかけて隠した。


その時、お母さんがちいちゃんを呼びに来た。「ちい、玄米パンを買いに行くよ。」

「うん…」

ちいちゃんは心の中でほっと胸を撫でおろし、ちょうど良いタイミングでお母さんが来てくれたことに感謝した。


その後、窓越しに軽快な音楽が聞こえてきた。「ちんちんどんどん、ちんどんどん、ちんちんどんどん、ちんどんどん」

見ると、江戸時代を思わせる格好をした五人グループが太鼓を叩きながらビラを配っていた。「安いよ〜、安いよ〜」ちょんまげのカツラをつけて、着物を着て、まるで遠山の金さんのような集団だ。


「ちい、ちんどん屋が来たよ」

「わぁ〜」

親子で一緒に見たちんどん屋の光景は、昭和時代のほのぼのとした思い出の1ページとして、ちいちゃんの心に刻まれた。


---

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ちいちゃんとちんどん屋 黒猫 @tanokuro24

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る