お帰り下さい、織姫様!!!

瑠栄

降って来きたのはお姫様

"ガララッ"


 窓を開けると、夏特有の湿った空気が纏わりついてくる。


「えーっと、あれがデネブだから・・・、ベガはあっちか」


 私は、星好き中学生の紫苑良星しおんらら!!


 今日も今日とて、しっかりと天体観測です。


 7月っていうのもあってか、夏の大三角形が綺麗に見えておりま~す。


「良星ー?」


「お兄ちゃーん?なにー??」


 ドアが開くと、そこには超がつく程の美男子が。


「あんまり長く夜風に当たるなよ、風邪ひくから」


「はーい」


「10時までには絶対寝ろよ?虫歯になっちゃうから、お菓子とか食べちゃダメだからな」


「はいはーい」


「あと、寝る時は暑くてもちゃんと布団を」


「わーかってるってばぁ!!」


 この過保護な超美男子は、私の2つ上の兄・紫苑徳星しおんなるせ


 さっきの会話からもわかる通り、こちらも超がつく程のシスコンだ。


「夏でも、布団は必須なんだからな。お腹出さないように」


「もう良いから、出てってくださーい!!!」


"バタンッ"


"ガチャンッ"


 お兄ちゃんを部屋から追い出し、ついでに鍵も閉めておく。


「ふぅ・・・」


 これで、やっと静かに・・・。


「おい、良星!!良いか、寝る時にはベッドの傍に硬いモノとかはなるべく置かないように」


「へーやーにー、もーどーれー!!!!!」


 近所迷惑にならない程度に叫んで、もう一度息をつく。


「はぁ・・・」


 この重度のシスコン振りも、どうにかしてほしいよ・・・。


 腕を上げて体を伸ばしてから、シャキッと背筋を伸ばした。


(さて、気を取り直して天体観測~!!)


 部屋の中専用の望遠鏡を取り出し、セッティングを始める。


 ええと、まずレンズを・・・。


"ヒュ―"


「・・・?」


 何か音がする・・・??


 何かが落ちてくるような音に、首を傾げる。


"ヒュゥゥ―――!!"


 徐々に音が大きくなり、さすがに不安になり始める。


"バッ"


 靡いていたカーテンをどけると、私は思わず大声で叫んだ。


「わぁぁぁぁぁ!?」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」


 空から降って来たそれ・・は、大声を上げて私の方へ突っ込んできた!!!


"ドシーン!!"


「・・・ったぁ・・・」


 近くにあった掛け布団や紙が舞い、少しずつ私の状態がわかってきた。


 私の上に覆いかぶさるように倒れ込んでいるそれ・・は、小さくうめき声を上げながら、顔を上げた。


 「ってて・・・」


 長い睫毛、くっきりとした瞳、透明感のある真っ白な肌、真っ赤な唇。


 し、至近距離に、超絶美少女が・・・!!!


「って、あれ・・・?」


 今起きた事に対する驚きと目の前のこの世の者とは思えない程美しい少女への見惚れで唖然としていると、少女は私の方を見て首を傾げた。


「・・・誰??」


「いや、こっちの台詞なんですけど!?」


 これが、私と彼女・・・織姫様との出会いだった。

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お帰り下さい、織姫様!!! 瑠栄 @kafecocoa

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