かつての幸せな日常と取り戻せない後悔を描いた切ない短編です。主人公が失った愛しい日々の思い出に浸りながら、彼女が作ったレモネードを再現しようとする姿が心に響きます。甘い記憶と現在の酸っぱい現実の対比が秀逸で、過去の後悔と愛情がしっかりと伝わりました。読後に感じる余韻が胸を締めつけ、愛していた人への言葉が足りなかった痛みが共感を誘う作品です。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(197文字)
レモネードには、色んな味わいがあって、それを作った人によっても味が変わります。甘かったり、酸っぱかったり、苦かったり。その時に失敗作だと思ったものも、いずれは忘れられない味になる。自分で作っても再現できない味になる。その味はもしかしたら、「ココロ」という隠し味も関わっているのかもしれませんね。読んでいて、優しく元気な彼女の声を耳にしたような気がしました。
このヒロインは自分の恋愛を酸っぱいものだと感じていたのかな。同棲しているときなんてもっと甘い苺とかさくらんぼくらい甘い恋愛だと思っていたけど。 レモネードを作って彼氏に飲ませることで、今のふたりの生活が甘いだけじゃなくて酸っぱいんだよと伝えたかったのかなあ。もしかしたらもっと甘い生活にしようと訴えていたのかも。レモネードを作って彼氏に飲ませるなんてお洒落な神経しているね。彼女の性格が物語自体や文章校構成をより美しいものだと感じさせてくれる酸っぱいお話です。
後悔は苦味に満ちてるもの。だけど、未練は少し違うもの。時間の経過と共に味わいが変わって行く。今は苦い、けどかつては甘かったレモネード。幸せは失うまで大切さが分からない。“作ってもらった”レモネード。レシピ+αです。旨い不味いじゃないんだよね。そう。旨いとか不味いとかじゃないんだ。未練の味。というものでしょう。きっと。
主人公の回想を彼女の会話文を用いてとても鮮明に表現されています。呼んでいるときに僕の頭の中にまで彼女の声が聞こえてくる… そんな『優しい物語』です。