青春の苦虫ども

あのときのあたし

第1話 あたしと先生

先生が週刊誌に撮られた。


レインニュースを見て心臓が止まるかと思った。


あたしたちの平和な日々は急に閉ざされたんだ…





おそるおそる顔をあげる




お母さんが泣いてる。


お父さんは怒ってる。







ああどうしよう。消えたい。消えたい。


さっきまでの日常に戻りたい。






なんでこうなっちゃったのかな。


何から話せばいいのかな…





始まりは幼稚園の頃……

もしかしたら生まれた時からかもしれない。


*****



お父さんは大企業のサラリーマンで


お母さんは専業主婦。



一番古い記憶は、

お化粧台に向かって

お母さんがお支度してる後ろ姿


本当に綺麗で、いい香りで。



それをよく眺めてた

眠気まなこのまま

あたしは静かに


ただ眺めてた。



あたしもあんな風に

大人になると思ってた。







それから幼稚園に入って、

何か習い事をしようとお父さんに誘われた。



サッカーとかそういうのを期待されてたかもな

あたし小さい頃から力が強かったし

走るのも早かったし、体も大きかったから。


でも絶対に砂だらけになりたくなかったの。



お父さんごめんね。





みんなに「綺麗」って思われたくて

こないだテレビで見た「綺麗」って思った競技を始めたいと言った。







周りでそれをしている子は

いなかったから、

お母さんは必死になって通えるところを探してくれた。


私はその努力を知らないけど

遠いところまで一緒に通ってたから、きっとそう。


お母さんは、いつもあたしの味方だった。





通い始めてからは、みるみる実力をつけてきた。

これだけは自分でハッキリ言える。

あたしは、本当に頑張った。



だって、テレビで見てた「綺麗」って思ったあの人から

指導を受けてるんだから。








****


あたしは綺麗かな。





綺麗ってなんだろう。


これでいいのかな。







綺麗ってことは、

お母さんと それから先生に教わった。




お母さんは、お父さんが家に帰って来なくても


いつも、あたしの「普通」を守ってくれた。



本当に綺麗な人。





先生は、愛に溢れてる人で


あたしのことを愛してくれた。



もしかしたら、

本当のあたしに一番初めに

気づかせてくれた人かもしれない。



お母さんは、

あたしのために、ずっと、今も

気づいてないふりをずっとしてくれてるから。




お母さんと先生は

あたしにとって綺麗な人。


こんな女性になるんだって

素敵な目標。そういう人たち。








もう高校生だけど、まだ高校生。

わからないことばっかりで、

ただ目の前のことを一生懸命

がむしゃらにがんばってきた。


そうやって、今、

先生とこうして二人三脚をしてるの。



ここにくるまで辛い思いもしてきた。


「あたし綺麗」って思える瞬間が

少しずつ増えてきた。






*****


なのになんで、


いつもみたいに

お母さんと先生と

3人で遊びに行っただけなのに

週刊誌に撮られた。



先生は、いけないことをしてたみたい。


あいつらにとっては。










あいつらは

なんでみんなでそうやって



勝手に話し合って



勝手に勘違いして





話を進めるんだろう。





大人が、社会が嫌になる。



あたしは本当の自分のこと



大好きなお母さんにも


お父さんにも



話してない。



いつか話すつもりなのかもわからない。





だから、お母さん泣かないで。

本当に感謝してるの。



お父さん、怒らないで

1つずつ伝えられたらいいんだけど












あたしと先生の 本当の関係。


















(あとがき)


とあるニュースを見て着想を得ました。

実在する人物や団体とは何の関係もございません。



ただ、事実かわからないことに対して

外野がガヤガヤとデカい声で、憶測で、

物を言う世の中に嫌気がさしていることだけは

私の中の事実です。


私の心の中にある

青春の苦虫どもを1匹ずつやっつけるために


腐った大人の物語を文字にしたいと思います。

していきます。



腐った大人にならないために。



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