これはおっさん冒険者が仲間たちと共に普通に、そしてちゃんと、しっかり冒険者する話です。
これだけ聞くと「普通じゃん」だが、ポイントは「冒険をする」ではなく「冒険者をしている」という点。
昨今では、舞台は異世界、主人公の職業は冒険者なのに、ちゃんと冒険者していないものばかり。
それも悪くはないけど、ちゃんと冒険者をしてくれていると、そこから色々な息づかいが伝わってくるのです。
例えばそれは処世術であったり、生活感。ちゃんとそこに生きてる人がいるんだなぁと感じさせてくれます。
あー、自分もこんな感じの書きてー
無理ーーー!
まだ七話目までしか読んでないけど、おっさんにはこの先も、冒険者してもらいたいものです。
物事には「若いうちでなければできないこと」「歳を取ってもできること」「経験を積み重ねてはじめてできること」があります。本作で描かれるのは3番目。冒険者として歳を重ね、戦い続けること30年。主人公は40代半ばのおじさんで、本作はこのおじさんの冒険譚です。
華がないこと夥しいのですが、しかしこのおじさん、無駄に歳を食っているわけではありません。
後輩たちの面倒を見る優しさがあり、戦い続けた経験があり、経験に基づいた勘があり、経験を活かしたコネがあり、コネを的確に使うしたたかさがあります。おじさんには絶対的な強さがあるわけではなく、経験も勘も優しさもしたたかさも、なにか「数値としてはっきりと出てくる」という類のものではありません。
それでも、こういった「数字では計れない・計りきれないなにか」がおじさんをベテランとして成り立たせ、窮地にあっても生き延びさせ、そして周囲からおじさんを信頼させる原動力になっていることが、丁寧に描かれています。
華々しさはなくとも経験に見合う実力を身につけたおじさんの周囲の人物たちも、おじさんと同じように若くはありませんが、やはりおじさんと同じように年輪を積み重ねなければ出ない味わいを出していて、物語に幅や奥行きが加えられています。
きちんと作られた背景世界も、ストーリーの前面に出てくるところはありませんが、要所要所でチラ見せされて物語の背後に流れるものを感じさせるという、できのいい料理の下味のような役割を果たしています。
本作は現在、第1章が完結したところ。32話・10万字少々と、一気読みするにもお手頃の分量です。
いずれ始まるであろう第2章を待ちながら、あなたもおじさんの魅力を堪能してみませんか?
ある意味ではとてもオーソドックスな、そしてどこか懐かしい、おそらくとてもありふれた、しかし今はあまり見ることのなかったファンタジー。
何か特別な力があるわけではなく、地味に、しかし確実に仕事をこなす、まさにベテランと呼ぶに相応しい冒険者の姿がそこにあります。
三十年愚直に歩んできた冒険者の、リアルな実力と巧みな、リアリティのある演出が、とても素晴らしく、まさに『地に足の着いた』という印象を受けました。
特に90年代のファンタジー小説が好きだった人には、とても懐かしく、しかしどこか新しい物語として映るのではないでしょうか。
でも、なんかあちこちフラグを立てては折り損ねてるのはご愛敬?(笑)