ユニコーンの角

 エリザベートはルクレツィアを縦長の食堂へと誘った、部屋の一番奥にユニコーンの角が横向きに木製の台座に鎮座していた。

「これがその角」

「毒薬はどこにあるの?」

「毒薬……あ、蒐集部屋にあるかも」

「ヴンダーカンマーとは別に?」

「別に」


 今度は、蒐集部屋に向かった、その部屋は地下にあった。地下には複数の扉があったがその中の一つが目的の部屋だった。ルクレツィアはほかの部屋も気になったが、今は毒薬が一番だった。

 部屋の扉は少し建付けの悪かった。ひんやりとした地下室にはひんやりとした武器、防具が並んでいた、動き出す気がしたが動き出すことはない。

 武器をもった防具の間をスルスルとすり抜け行くと、更に扉があった。

「ここ」

 また建付けが悪かった。

 その部屋はまるで研究室のようだった。長らく使われていないはずなのに埃一つなかった。よくわからないガラス製の容器とかが多くあった。そして本棚のような棚に本のように納まりよく、瓶が並んでいた。よく見ると瓶に貼ってある紙は全て違う文字だった。

「これが毒薬?」

 文字をのぞき込むようにルクレツィアは聞いた。

「そう、気をつけてね」

「大丈夫だよ……たぶん、どれがいいの」

「どれって言われても……」

 二人して毒薬を探した。

「……これは、ソクラテスの血」

 基本エリザベートの提案に素直に頷くルクレツィアはこの提案にも乗って、

「じゃあ、それにする」


 ルクレツィアは大事そうに瓶を抱えてユニコーンの角の元まで戻った。

 何かに似ているとエリザベートは既視感を抱いていた、暫くなやみ気が付いた。そうだ恐るべき子供たちに似ているだと。

「本物だったら、表面が濡れるらしいよ」

「ほんと?」

「本当だって、そう書いてあった」

「あぁいう本は胡散臭いから……」

 ルクレツィアは蓋を開け、角の近くで瓶を右に左に、暫く動かしたが角は一向に変化なかった。

「やっぱり。返してきな」

 ルクレツィアは結構しょぼくれた。

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城の中の吸血鬼 澁澤弓治 @SHIBUsawa512

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