関係構築、甘美な踊り子

🚃


「行平、久しぶり。連絡ありがとう」

「ああ、久しぶり」


 僕は勇気を出して、自分から行平に電話を掛けた。心臓が跳ね上がりそうになる程緊張するのを何とか深呼吸で抑えて、僕は行平と話す。


「あのさ、今度のことだけど僕は問題ないから」

「ああ、ありがとう」


 行平の声は、以前と何も変わらないように聞こえる。本当に、僕が彼に気持ちを打ち明けたあの日のことを冗談だと思っているのかどうなのか。


「行平」

「何?」

「この間のことだけどさ」

「……」


 電話口の向こうで、行平が黙った。


「僕はどうであろうと、行平と仲良くしたい」

「……え」

「でも、行平がそれは無理だって言うなら、僕も無理は言わない。だから、あの日のことをなかったことにはしてほしく、ない」


 偽らざる言葉を、ぶつけた。僕もまた、欲張りなのかもしれない。


「どう、かな。僕はまた行平に会えるの、楽しみ」


 言いながら、跳ね上がろうとし続ける心臓を抑えつける為に自分の胸元をぎゅっと掴んだ。


「俺も」


 電話の向こうから、行平の小さな声が聞こえた。


「俺もお前とまた一緒に遊べるの、楽しみ」

「──うん」

「じゃあ、また」

「うん、また」


 そこで通話が切れた。僕と行平、どちらの方から切ったのかは定かでない。



💃


 舞台の上で、裸体が舞う。

 美しく、芸術的で、妖艶。揺れる乳房に目を釘付けにする客も、興奮した様子で目を地走らせる客も、その美貌や優美さにうっとりとする客もいる。

 ──そして、僕のようにその姿に勇気付けられる人も。

 舞台上の踊り子は、音楽に合わせて胸を張り、股を大きく開いて、ちらりと舌を見せる。それを観客の無数の拍手が盛り上げる。

 その姿は、まるで舞い散る華のようだと僕は思った。誰もが賞賛するような咲き誇るものでも、ただ綺麗なだけの造花でもなく。もしかしたら、散り落ちた後に踏みつけにされるかもしれなくても、その姿をもって、見る者を虜にする。

 何度来ても、僕は彼女に魅せられる。舞台の上で舞うその姿を見て、客は色々な意味で元気付けられる。

 音楽が止むと同時に踊り子はニコリと笑いかけ、舞台の照明は暗転する。

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舞い散る華 宮塚恵一 @miyaduka3rd

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