第10話 黒江真由 改その2

再びアニメ3期を見たので、その上で真由について書いてみる。


①久美子への好悪感情

プールへ行った回で好き嫌いが無い人間を好きになる事は無いと言っており、それは暗に自身だけでなく、自身への本音を明かさず距離を曖昧に濁す久美子に向けての言葉でもあった……のだろうか?ちなみに投票オーディション直前の会話でも自身と久美子に似ている部分があることを認めている。ともかくこのプール回の終わりはバックの曲も含めて不穏な感じで終わっており、真由の久美子への姿勢が今後は変わってくる、というのを予告してる感じだった。


投票オーディション会話で真由が言ってた通り、久美子が真由にならずに済んだのは久美子が麗奈に出会ったからであり、切磋琢磨し合える相手だったからこそ、『上手い人がレギュラー』を掲げ続けてくることもできたのだろう。

ただもう少し穿ってみてみると、技術レベルの高い麗奈といることで久美子は建前である『上手い人がレギュラーになる』と麗奈との親和の両立が可能だったとも言える。真由から見て久美子はその建前を建前と気付けずに(勿論、建前の中にも真実はあるが建前だけで現実が済むわけではない)今に至ることが出来ており、そういう経緯の末に建前を通そうとする久美子が憎かったというのもあるのではないかと思った。

どちらかと言うと真由を好悪感情(仲良くなりたかったのに拒まれたから憎い)よりも、そういう視点で見る方が私には理解し易かった。


ともあれ緑輝が海月と評していた通り、皆で楽しめれば良いという割に、それと相反する久美子に対しては勝負を放棄することなく倒してしまう、という、真由はそういう気質のキャラだった。


②アニメの中では説明し切れない執拗な精神攻撃

結局、真由から久美子へ行われた執拗な精神攻撃は作中で理由を説明できていなかったという印象は覆らなかった。


『私が勝ってしまったら、貴方も結局私から去っていってしまうんでしょ、昔のそういうトラウマをもう繰り返したくないの』辺りが真由の本音であり、それを台詞として表現した結果、『私、辞退しようか』になったのだろうという所までは考えた。だが肝心の過去を秘したまま、かつ、その提案の繰り返しが久美子にどういう影響を及ぼすかを真由が想像できなかった、という事実を踏まえて物語を見ていると、真由はやはり都合良く動かされてるきらいが強い、もしくは精神的に幼い、としか見れない。


皆と楽しくやれれば良いという割に久美子の精神状態に無関心過ぎるわけで、それは皆と楽しくやりたいのではなく、彼女が音楽を楽しむ(周囲に彼女を不愉快にさせる人がいない状態で音楽を楽しむ)のを邪魔しないでね、の方が正確に思える。価値観で対立する久美子との勝負を辞退するのではなく負かしてしまう辺りも、コンクールメンバーは誰がなっても良いと言っていた真由の台詞からは遠い。


ちなみに作中で「迷いながら」みんな動いているのかもしれないという話が出ていたが、これを免罪符にしてしまうと出来上がった物語は結局制作者に都合が良いだけで登場人物たちがふわふわ、それこそ海月のように脈絡なく漂うだけの話にしかならないと思う。どうにも真由の振る舞いには納得がいきづらい。


本題②に戻るが、制作側は「音楽に嘘を付けないんだよね」や「投げかけてくれてた」という台詞で説明したことにしてしまっていたが、これらで執拗な精神攻撃を説明する事は不可能であり、結局作為的、あるいは真由の精神攻撃の意図が不明のままなのである。


それならば冒頭で書いた通り、いっそのこと久美子が憎かったと真由に言わせてしまった方が分かり易かったと思うのだが、そこは明確な発言を真由はしなかった。真由にこれ以上視聴者のヘイトを集めさせたくなかったのだろうか?あの執拗な精神攻撃の懺悔無しに、久美子と真由の和解を描いても上っ面にしかならない。真由というよく分からないキャラに久美子のソリが奪われてしまった感が強く残ってしまう物語だった。想像すれば真由の憎悪に辿り着くから描かなくて良いは違うと思うのだが……。物語前半~中盤でそこまで憎悪むき出しの真由を描けなかった(それをしてしまうと響けらしさを保った青春群像劇でなくなる?原作の真由から離れる?)ので終盤も結局そのイメージを崩すわけにいかず憎悪感情に触れられずに話を終わらせてしまったのかなあ、と邪推した。


何だかやはり滝先生のキャラ・判断能力のブレとか真由というキャラの曖昧さでもって物語の矛盾を含めてしまおう、辻褄を合わせてしまおうとした作品、という感想だ。



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響けユーフォニアム3期への感想 @gulugulu

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