愚痴

佐藤凛

愚痴

「それでさぁ、マジでむかついて!私の気持ちにもなれって思ったよね。」

「そうだよね、本当だよね」

プツン...

「あいつ殺してやりたいと思ったわけ!」

「殺すの?」

ツー...

「いや、殺しはしないけどさぁ。殺してもいいような存在だよ。」

「まぁそういう人間もいるよね。」

「あぁ、鬱、鬱、鬱なんですけど!」

「そんなこと言わんでよ。」

「もうそうじゃないとやってけないっつーの。」

「そうねぇ、やっぱり殺す?そいつ。」

「マジで殺したいわぁ。死ね!」

「いつも言ってるよねぇ。」

「いつもじゃないし!ねぇ、ちゃんと聞いてる?」

「聞いてるよ、聞いてる。」

キュイッ、シャァアァアア...

「聞いてないじゃん!何?なんか変な音し始めたけど。」

「聞いてるよ、聞いてるって。シャワーの音。」

「あのさぁ、人が話してるのにシャワーなんて浴びる?普通?」

「そういう気分だったんだって。」

ポタッ...ポタ...

「まぁ、いいや。それでさぁ、そのストレスで担当に貢いじゃったよね。」

「まだホスト行ってたんだ。辞めなよ、お金の無駄だよ。」

「はぁ?分かってないなぁ。担当は私に生きる元気を与えてくれるの!」

「あぁ、そう。」

「担当はね、私に頑張れって言ってくれるの。尊いし。こないだアフターまで来てくれて。」

「あんまり、沼らない方がいいんじゃないの?遊びだし。」

「分かってるよ!沼ってないし!ってかなにがあんたに分かるわけ?」

「そうだね、悪かったよ。」

「悪いって思ってないじゃん!そうやって適当に流すんだ。今までもそうだったんでしょ!?」

「...。」

「何も言い返さないってことはそうだったんだ!酷い!信用してたのに!」

「...。」

「もういい!切る!」

そうやって勢いよく通話は切れた。浴槽には私の右手首から流れる血液が流れていた。私はへたり込んで、手首にシャワーを当て続ける。左手には万能包丁が一筋に赤と黒を滲ませていた。

「私の気持ち、考えたこともない癖に。」

私はぼそりと呟いて意識を飛ばしていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愚痴 佐藤凛 @satou_rin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画