第3話 怪しい動き
「私は一夏。こっちは雷夢。あなたは?」
「美鈴(みすず)です。ここは…?」
その質問は、私の方がしたい。
「私もわからない。雷夢はわかったりしない?」
「知らん。」
全くこいつは…。
「一緒に動かない?一人だと危ないと思う。」
「いいんですか!?」
初めて見せた、喜びの顔。私もつい、ふっと頬がゆるむ。雷夢もこの反応は予想外だったみたいで、ピクッと肩が動いた。
女の子が仲間に入るのは、雷夢と二人きりより、ずっといい。
昔から、男の子が嫌いだった。
男の子で唯一好きだったのが、兄だった。
昔から、女の子が好きだった。
いつでも、自分は家族関係で困っていると分かってくれて、気遣ってくれた。
だけど一番好きだったのが、姉だった。
兄と姉の優しい笑顔を、私はずっと忘れられない…。
しばらく辺りを三人で散策した。
美鈴ちゃんは6歳のときに生き残って、今は12歳だという。
ピアノの全国コンクールでTOP10に入るほど、ピアノが上手だったそう。
「すご!」「えぐ。」
私と雷夢の声が重なる。
「うちは、親がどっちもピアニストだったから、少しでも失敗すると、すぐ怒られて、辛かった。」
私も親を憎んでいる。でも…、
「そっか。」
この言葉しか出なかった。
誰かが歩いている。
整った茶髪。髪の一部だけ染められている。赤色と紫色。そして何より特徴的なのが、彼の持つ赤と紫のオッドアイ。身につけているのは、帽子付きのマントと洗練されたブラウスとズボン。見た目はいいところの男子と言ってもいいだろう。
そして何より、彼は人面ロボットなのだ。別名 実験体001
目の下にはロボットのような線がある。
彼は考えていた。この戦いに勝つには、どうすればいいかを…。
その近くで、あの割れる音がした。
「なんか、ポケットに変な紙が入っているんだよね。」
珍しく雷夢から口を開く。たしかに、なにか入っている。
「地図かな?」
美鈴の言う通り、たしかに地図っぽい。一夏のボトルがあった場所が、赤いマーカーで塗りつぶされている。そして北の方にあるのが、バツ印。
私が思わず声を上げる。
「ここに行けば、何かあるかも!」
「行ってみようよ!」
「二人ってほんとにてるよな…。」
確かに。わたしたちはそれぞれの顔を見て、笑った。雷夢も少し口角を上げる。これがずっと、続けばいいのに…。
何考えてんだろ、わたし。ついさっきまで死にたいとか思ってたくせに…。
「あ?誰だテメェ?」
ボトルから出てきたばかりのグエンは自分の前に立っているあの茶髪の謎の男を目の当たりにして言う。
「俺はシーラ。お前は?」
「なんで言わなきゃいけねぇんだヨ!」
悪ガキのグエンはとっさに持っていたでかい骨(武器)をシーラに向かって振り下ろす。しかしシーラはそれを簡単に手で受け止める。
「はっ…?」
「クラッシュ・ファースト」
彼の手から、奪った骨がどんどん天に消えていく。
「貴様ァ…俺の武器ィ…どこにやったァァァァッ?」
殴りかかってくるグエンの拳も片手で受け止めて、シーラは言う。
「クラッシュ・ファースト」
その瞬間から、グエンはどんどん消えていく。
「貴様ァ!手ェ離せェ!!!」
シーラは顔色一つ使えずに、グエンの手を離さない。
ついにグエンの目から涙がこぼれる。
「痛い!離せェ!」
そして彼は天に散って行った…。
「ついた…!」
「やった…!」
「やっぱ反応似てるわ。」
「あはは。」
「えへへ。」
「笑い声もなんか共通性あるな。」
ようやく地図のバツ印についた。
そこにあったのは鉄製の…大きな建物だった。
入ると、ベッドが4つ、ある。そして人が入りそうな機械。
「何この機械?」
「入ってみたら?」
言われるがままに美鈴は入り、
「部屋着モードだって!」
といってボタンを押す。
機械の扉が閉まり、10秒たって開く。
「わ!」
そこにいたのは髪を下ろした美鈴。無地のピンクのワンピース。黒色のズボン。すごくかわいい。
「かわいい!」
「すご、この機械。」
「まずは、かわいいって行ってあげなよ?」
思わず反論しちゃった。
「あーはいはい、可愛いです。」
ほんと相変わらず他人には興味ない人だ。
各自、部屋着に着替えた。
雷夢のは流石にワンピースではなく、普通の無地の黄色いやつだったけど。
そして変なのが、私のヘアバンドが外れていないことである。髪はほどけているんだけど。
「へえ、地図入ってんだ。」
シーラは地図を眺めている。
「何だろこれ?」
バツ印を見つめる。
「シェルターかなんか、か。ま、俺にはいらないし。」
そう行って地図を持ち直す。
「クラッシュ・ファースト」
地図は粉々に天に飛んでいく。
「さあて、まずは…?」
そう行って、シーラは歩き出した。
デルタの星 KISEKINOHOSHI @KISEKINOHOSHI
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