week1
week1-1
初夏に差し掛かり、窓際からの風が少し涼しく感じられる、そんな休み時間。私と
「もうすぐ夏休みだねー」
「そうだね。瑞希どうする?」
教室でそんな会話をする私達。それを遠巻きに見ている2人の男子に気づくはずもなく、話は進んでいく。海に行こう、花火を見に行こう。確かに楽しみではあるけれども。
「ていうか椎名達何?こっち見て」
「いや?楽しそうだなーって」
瑞希の声で近くまで来た
「てか2人だけじゃ危なくない?大丈夫?」
「あー……私は大丈夫だけど桃がねぇ……」
「私?」
なんでここで私の名前が出てくるのか。全く分からない。危険かどうかと問われると私だけじゃなく瑞希だってそうだ。そこは明野くんに同調する。
「いや桐崎さんだけじゃなく橘さんもなんだけど」
「そうだよ!私だけじゃないよ瑞希!」
「え?私は大丈夫だよ」
椎名くんと明野くんはスポーツが得意で、女子から人気もある。そんな彼らが私達とよく話すのは誰とでも仲良くなれる瑞希がいたから。私1人だったら絶対話すことすら無かった人達。
「桐崎さんは夏休み楽しみ?」
「そうだね、私夏が好きだから」
椎名くんに話しかけられちょっとどぎまぎしながら返す。私は季節の中では夏が1番好きだ。特に好きなのは夕暮れ時。思い出も沢山あるし。
「俺も夏の夕暮れは好きだな」
「椎名くんも?私も夕暮れ好きなんだ」
思わぬ共通点。嬉しくなって思わず声が弾んでしまう。声、大きくなってないかな。不安になりながらも少し当たりを見回してしまった。すると横から方を誰かにつつかれた。いや、誰かじゃない。瑞希だ。
「ちょいとお二人さん。盛り上がってる所悪いけどもうすぐ休み時間終わるよ」
「本当だ。またね、桐崎さん」
「あ、うん。また……?」
思わずまた、と返してしまった。なかなか話す機会がないからドキドキしてしまう。椎名くん話しやすいんだよねなんか。
「桃、椎名くんと盛り上がってたね」
「うん。共通点があって」
「共通点?次の休み時間に聞かせてよ」
そう言って前を向く瑞希。昔の話を知ってるから話しても良いよね……?あれ、椎名くんの許可いるかな……?
授業が終わり、休み時間。約束通り共通点について軽く話す事にした。
「へぇ〜夏の夕暮れねぇ」
「うん。私も思い出があるから好きなんだ」
「私は無理だわ。蝉が」
とても嫌そうな顔をして見せる瑞希。よっぽど嫌いなのね。まぁ、私も虫は苦手だけど。
「橘さん虫苦手なんだ」
「女子は皆虫苦手よ」
明野くんが瑞希に近寄ってきて声を掛ける。どうやらまたしても話を聞いていたようだ。その隣には椎名くんもいる。ちょっと意識してる自分がいた。
「桐崎さんも虫は苦手?」
「うん。苦手かな」
そう言って苦笑いして見せた。うわぁ、どうしよう意識し出すとすごいドキドキして会話どころじゃないよ……。
「そういえば夏休み、この4人で遊ばない?」
「え?私達と明野くんと椎名くんの4人?」
「そう。朝の話聞いてる限り2人だけだと危ないし」
明野くんからの提案に少し悩む私達。顔を見合わせて頷く。答えは決まった。
「うん。4人で遊ぼう!」
「よし!決まり!グループトーク作ろう」
そう言って明野くんがスマホを取り出したのを合図に全員がスマホを取り出す。男の子の連絡先なんてお父さんとお兄ちゃん以外初めてだ。
「桐崎さん緊張してる?」
「え!?し、してる……」
椎名くんにズバリと言い当てられ、びっくりした。椎名くんて不思議だな。なんか私の事知ってる感じ……?
「ふはっ……桐崎さんって感情顔に出やすいでしょ?」
「そうかな……?自分ではそんな事無いと思ってるんだけど……」
「すごい顔に出てるよ」
椎名くんに笑いながらそう言われ顔が熱くなる。は、恥ずかしい……。そんなに顔に出てたかな……。瑞希と明野くんも話が弾んでるみたいでそこに割って入るわけにも行かないし……。
「あ!2人とももう休み時間終わるよ」
「ホントだ。じゃあまたね桐崎さん」
「うん、また」
今度は普通に返せてるよね。まだ顔が熱いけど。瑞希が不思議そうな顔してる。なんだろう?
「桃、何かあった?ほっぺ赤いよ」
「え!?何も無いよ!」
「本当に……?」
瑞希にジト目で見つめられる。まだバレたくないし、話したくない。私の気持ちがハッキリしないのに。誤魔化せた事を願って次の授業の準備を始める。
「桃。何かあったら何でも相談してよね」
「え?うん。分かった」
次の授業は理科だ。苦手だなぁ。私文系だから。って言い訳しちゃいけないよね。集中集中。
授業が終わり、昼休み。最初は瑞希と食べようとしてたのだけど、何故だか椎名くんと明野くんが私達の席までやってきた。
「お2人さん〜俺たちも一緒に良い?」
「え、いいけど。どうした今日?」
瑞希と明野くんが話してる。勝手に許可されたけどまぁいいか。いや、でも女子の視線が午前中からずっと凄い……。
「桃もいいでしょ?」
「え!?あ、うん。いいよ?」
けれど瑞希に言われたらいいよって言うしかない。だって親友だもん。断れないよ。
「ふふ。桐崎さんずっと緊張してるね」
「え、だって2人とも女子からの人気凄いし……」
「えーそんな事無いと思うけどなぁ」
そう言って周りを見回す椎名くん。自覚が無いのね……。教室に残っている女子はチラチラと私達の方を見ている。私はこれに耐えられるだろうか。
「もーも。大丈夫だって。何かあったら私が助けるから」
「ありがとう瑞希」
小学生の頃から瑞希は私の事を助けてくれていた。虐められていた私を助けてくれたのも瑞希。だからこそ瑞希のお願いは聞いてあげたい。
「で、夏休み最初どこ行くか決めてるの?2人は」
「あ、うん。まずは夏祭りかなって。7月の月末にあるやつ」
「地元のかー。それにするか」
すごいな、瑞希。男の子と普通に話せてる。私にはまだ無理、かな。椎名くん達だと余計緊張して話せなくなっちゃう。だってカッコイイんだもん2人。
「桐崎さんのお弁当美味しそうだね」
「わ、私?うん、自分で作ってるんだ」
「そうなの?すごいね」
わぁ……普通に話せてる、よね?今。私成長してるのかな。ふと瑞希を見ると何故かニコニコして私を見てる。後で瑞希に聞いてみようかな……?
「桐崎さん、その卵焼き1つちょうだい?」
「え……えぇ!?こんなのでいいの?」
「こら。こんなのとか言わない。一生懸命作ったんでしょ?」
椎名くんに突然そう言われ戸惑ってしまう。しかもちょっと怒られてしまった。優しい口調だったから怖くなかったけど。いいのかな、あげても……。
「桃。あげたら?」
「う……うん。椎名くん、1つ取っていいよ?」
「ありがとう桐崎さん」
瑞希に背中を押されて椎名くんにお弁当を差し出す。するとお礼を言いながら卵焼きを1つ取って口に含んだ。
「うん。美味しいね。俺好きだなこの味付け。なんか懐かしくなる」
「そう……?それなら良かった」
椎名くんの一言にほっとして、私も再びお弁当を食べ始める。
今月末の夏祭り、楽しみだな。
あの夏を取り戻す〜高校1年の夏休み〜 CocoA @cocoa_58
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