第30話 常識知らずの悪魔神、転生したので学園で二週目人生を謳歌する

こうして俺とルナ、二人だけの空間となった。

厳密には気絶しているやつらが何人もいるが。


「直ぐに助けてやれなくて、すまなかった」


「ううん……。今こうやって傍にいてくれてる。……それだけで十分……」


「なぁ、俺考えてたんだ。お前らの傍に居ない方がいいんじゃないかって」


「……!? だめっ……」


恥ずかしがり屋のルナが、思い切り抱きしめてきたものだから驚いてしまった。


それでも、ルナは離さない。


「ぜったい……だめ。はなさない……」


「こんな危険な目に会うこともなくなるんだぞ……? 」


「こんな目にあうくらいより……へるくと離れ離れになっちゃうほうが……やだ……居なくなるなんて言わないで……みんなだって……へるくが、思っている以上にへるくが……すき。そんな、すきな人が、……自分はいない方が幸せになれるとか……いっても、……へるくと一緒にいる時間より幸せなことなんて……ないの。それとも……るな嫌い……? 」


「嫌いなわけないだろ」


「じゃあ……」


そう言うと、ルナは瞼を閉じた。


エニナとさっき話してたのはこれだったか。

さすがに、しないわけにもいかないよな。


そして俺は本日二度目の口付けをしたのであった。

……意外なことにルナは意外と積極的で、中々離してくれなかった。


数分たって。


「……ぷはっ。……えへへ♡ びっくりした? へるく、驚いたかおしてる。かわいい」


いつもは天使なルナが、今日だけは小悪魔に見えた。

やられっぱなしでは悪魔神の沽券に関わる。


「んんっ……♡ もう、へるく……。ねぇねぇ」


「なんだ? 」


「すきです♡ 」


「いや、今更すぎるだろ……」


「あの時メリアが譲ってくれた……待たせすぎたらメリア怒っちゃう……」


そういえば、そんなことがあった気がする。

けどメリアは怒らないんじゃないだろうか。


「……勇気出してくれたんだな」


「2人きり……そう約束したから。……るなを殴ってきた人たち、血だらけで倒れてるから2人きりじゃ……ないかもだけど……」


ぴくりとも動かない。

名前も知らぬこいつらに無性に腹が立ってきた。せっかくいい雰囲気だったのに、周りが血まみれでは台無しである。


【物体操作】で、全員をふわりと中に浮かせると、倉庫の窓を開けて、バカカスたちが積み重なっているとこに、移動させた。


これだったら、こいつらがやり合ったと誰もが思うであろう。


「さて、メリアを待たせているし、そろそろ行くか」


「そう……だね♡ 」


外に出ると、壁に背中をつけてメリアが待っていた。


「またせたな」


「んーん、待ってないよ。……ルナちゃん、よかったね」


「うんっ! えになが……背中押してくれたおかげ」


そういや、今日だけで二人に口付けされたんだよな。

……今日は二人の顔を直視出来なさそうだ。


「今日は疲れただろうし、帰るか。サークル紹介は明日もやってるみたいだし」


「他の皆はもう決まったの? 」


「あいつらは入らない予定だ。……メリアとツムギの二人にはパフェとやらを食べさせに行かないといけなくなったが」


「私もそれ行きたいっ! 」


「るなも……」


「ははっ、じゃあ皆で食べに行こうか。学校が終われば、外出することも出来るみたいだしな」


「けどヘルク君、お金足りる? 」


エニナが言いづらそうに、汗をかきながら聞いてきた。


「食べ物くらいなら8人分は出せる……」


「王都のパフェとかスイーツって、高いんだよ? 一緒に泊まった時にヘルク君の全財産聞いたけど、行けて5人分くらい……だと思う」


まじか……。

王都のスイーツ、恐るべし……。


【ワープ】で空中にいる皆を、ここに移動させる。

急に現れたからか、エニナとルナはびっくりしている。


「も〜ダーリン遅いー! ってなんか二人とも肌ツヤツヤしてない? 」


メリアの観察力も恐るべし。


「……ねぇねぇめりあちゃん。るな、がんばったよ! だから……次はめりあちゃんがんばってね! 」


小さくピースをするルナ。

メリアは目を丸くする。


「……! 頑張ったじゃんっ! おーよしよし! 」


「えへへぇ……」


「はわわ……! 自分、分かっちゃいました! ……るなさんすごい! 」


「……ん? てことは姉御ももしかして? そういうこと? 」


面探偵メリアかおまえは。


エニナは嬉しそうに大きくピースした。


「えへへ……! これで皆もヘルク君とできるからねっ! 」


「姉御……器がデカすぎる」


「エニナさん〜!! 」


メリアとツムギの二人がエニナに抱きついて、やいのやいのする。


「ん? わたくしめには何が何だかさっぱり……」


「わたしはなんとなく分かりましたけど……ヘルクさん。あなた人を何十分も空で待たせておいて、自分たちはイチャコラしてたんですね」


「色々あったんだよ……。ただ、イチャついてただけじゃないってのは分かってくれ……」


「ヘルクさんの顔みたらそれは分かりますよ。……まぁ、お疲れ様です」


「ボクもいつかは……」


「しないからな」


「デスヨネ」


こうやって、しばらくの間みんなと話し込んだのだった。


夕暮れ。

太陽が沈んでいって、空が綺麗なオレンジ色になっている。


寮への帰り道、皆お腹が空いたと早歩きで先導して歩いている。


エニナとルナの二人が俺の両腕を絡めて、ゆっくり歩いていた。


「「助けてくれてありがと」」


二人がそう言ってきた。


「礼は何回も聞いたからもう気にしなくていいと言っているだろう。お前らにとっても、あまり思い出したくない出来事だろうし」


二人は微笑みながら、首を横にふる。


「色んな意味で忘れられない思い出になったよ! だ、だだだだだだって……! チューしちゃったしっ!! 」


「もう口ふけない……ゆすげない……うがいできない……」


こいつららしいっちゃらしいか。

あんな嫌な思い出を、俺のキスくらいで上書き出来たのなら、したかいはある。


けど、うがいはしないと風邪引くからな、ルナ。

それを伝えるとガーンとしていたルナだったが、エニナがとんでもない事を言った。


「何回でもしたらいいんだよっ! 今とか! 」


「……ぐっとあいであ! 」


いやいや君ら……。

少し前を皆が歩いているわけで……。振り返ったらどうするのよ。


「ヘルク君は私たちとキスするの嫌? 」


「いや……なの……? 」


「全然嫌じゃないです」


そう言うと同時に、二人は立ち止まって、キスをしてきた。

両頬に柔らかい感触がした。


限界まで身体をよせてきたからいい匂いもして。

今度は俺が顔を赤くする番だった。


「ふふっ、今日は満足ですっ♡ 」


「ん……♡ 」


「ほら〜3人ともっ! 早く行かないと席取られちゃうよ〜」


二人が頬から口を離して、すぐメリアが振り返ってきて、そう言った。


「へいへいっ。今日はカレーが食べたい気分だな」



俺の人生二週目は前よりも波乱万丈で、楽しいものになりそうだ。


この数日間だけで、前世よりも楽しくて色濃いものとなった。


それもこれも皆がいてくれるから。


俺がいていいのかと気持ちが揺らいだけど、皆は必要としてくれている。


俺を必要としてくれて、好きでいてくれる皆のために。


持てる力の全てを使って。


障壁も、邪魔者も、勇者も、何もかもぶち壊してやる。

俺の強くて楽しいニューゲームは始まったばかりだ。



【あとがき】

これにて1章完結です。ここまで読んでいただいて、ありがとうございました……!


そして新作を投稿予定です!

こちらも軸は最強主人公のハーレム無双です。

ちょっと変わった主人公ですが、本作を楽しんで頂けた方なら楽しめるかと!


こちらの2章もお楽しみに〜!


そして本作を最後まで読んでくださった皆様にお願いです。

是非【評価】をお願いします!

2章執筆や、新作のモチベーションに、何よりも直結します。


皆様の応援でここまでこれましたが、更に盛り上げて2章を迎えたいです……!


カクヨムでは初投稿でしたが、色んな方に見ていただけたようで、嬉しい限りですm(_ _)m


ありがとうございました!


別サイトでも色々書いてますのでこの作品が自分に合った!って方は覗きに来てくださいね〜

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常識知らずの悪魔神、転生したので学園で二週目人生を謳歌する〜一切の容赦をせずに無双していたら、何故か周りの剣聖の娘や大魔導師、その娘に溺愛される。やれやれ、これって普通じゃないのか?〜 雪鈴らぴな@第2グラスト大賞プロット受賞 @yukisuzu_rapina

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