第7話 大団円

 そんな二人は、

「そのうちに少し歩み寄るこおも大切ではないか?」

 と考えるようになった。

 というのも、

「自分たちが、吸血鬼ドラキュラであったり、オオカミ男という発想をしているだけではなく、今度は、フランケンシュタインの発想も組み込まなければ、自分たちだけでそれぞれの研究をしていてもうまくいかない」

 ということであった。

 そもそも、自分たちが、研究を行っているのは、

「戦争に勝つための兵器開発」

 ということだったはずだ。

 だから、本来なら、敗戦の時点で、もう、こんな開発など必要はないはずだ。

 もし、必要だったとしても、それは、

「アメリカを中心とした、民主主義」

 のためということになるのだろうが、

「アメリカというところは、自分中心でないと気が済まない」

 といえるだろう。

 ただ、その考えは、今まで自分たちが与してきた、

「大日本帝国」

 にも言えることだろう。

「大東亜共栄圏」

 の建設ということであるが、

 実際に建国したとしても、その中心にいるのは日本であり、日本が、

「アジアの盟主」

 でなければ意味がないということである。

 それは、戦争を行う大義名分の裏に隠されたものであり、代理戦争など、その最たる例ではないだろうか?

 日本においては、完膚なきまでに国土を焦土にされ、その後も、

「アメリカの属国」

 というべき、弱腰政府が、この国の中心にいるのだから、かつての大日本帝国にて、

「国を愁いて死んでいった人たちが、どのような気持ちでいるかということを考えると、やり切れない思いになるだろう」

 だから、無条件降伏をしても、まだまだ、再軍備を考えたり、大日本帝国の復興を考える人からすれば、

「死んでいった連中に、申し訳が立たない」

 という気持ちだったに違いない。

 しかし、時代はそれを許すわけではなく、

「今の国家が、いかに腑抜けであっても、敗戦国である以上、どうすることもできない」

 ということであった。

 しかも、かつての、軍部が中心で、さらに財閥が戦争を引き起こした原因ということで、それぞれに解体させられたが、それも、

「無理もないことだ」

 というのも、当然のことであった。

 二人の科学者は、それでも

「自分たちは研究を続けることは正しい」

 と思っていた。

 それは、あくまでも、

「軍国主義の復活」

 ということではない。

 どちらかというと、

「医学の発展」

 というものを考えていたのだ。

 だが、そもそも、核兵器というものが、

「本当はエネルギー改革」

 という、平和利用に使われるはずだったものが、いつの間にか、

「国防」

 としての、

「核抑止力だ」

 ということで考えられるようになると、二人もそれぞれに考えが次第に変わってくるのだった。

「湯川博士」

 の場合は、あくまでも、

「核抑止力」

 というものと近い考えであった。

「オオカミ男」

 というのは、普段は普通の人間であるが、

「満月の夜になると、顔も身体も変わってしまう」

 というものである。

 だから、自然と変わる染色体が二つあって、その時々で、臨機応変に相手を倒すまで戦うというオオカミに変身するというものだった。

 しかし、竹中博士の、

「吸血鬼」

 という発想は、話としては、まるで伝染病のようで恐ろしい発想であるが、実は、伝染病ではなく、

「お互いに抗体を作ることで、他の伝染病から自分たちを守るという、防衛本能が、身体に身につく」

 という考えであった。

 だから、血を吸われることで、吸血鬼になるのだが、その時に、

「どんな病気に対しても、抗体を作る」

 ということで、まるで、

「不老不死」

 の身体を作るという理想に燃えていたのだ。

 しかし、不老不死というのはm理想ではあるが、それが、

「人間にとって、本当にいいことなのか?」

 と考えられるということが、一番の問題だった。

 オオカミ男の場合は、そんな

「永遠の命」

 を求めているわけではない。

「肉体が滅べば、別の肉体に魂を入れることで、人間の精神だけが、永遠に生き続ける」

  という、

「不老不死」

 という意味では似ているが、身体に関しての執着が違うのだった。

 実際に、

「どちらの博士が、正しいのか?」

 ということが分かるわけではない。

 そももそ、お互いの発想が、それぞれを補った発想になっていて、そこに、フランケンシュタインという発想が絡むことで、

「ひょっとすると、二人が目指しているものが完成するのではないか?」

 と考えられていた。

 特に、

「これらの話を書いた、小説家というのは、それぞれに自分の発想だけで作り上げたのだろうか?」

 どれが先に発表されたのかは分からないが、先に発表されたものを見ながら、次の作品のヒントにしていくということだったのかも知れない。

 だとすると、

「後で発表された作品には、何かヒントがあるのかも知れない」

 と考え、後から発表された作品をもとに、自分も開発しようと考えたのではないだろうか?

 実際に、どっちが先なのかということは分かっているわけではないので、ハッキリとは分からないが、それをわかっている人が実は他にいたのだ。

 その人は、

「二人を、この村に呼び込んだ人であり、その人本人は、学者であるが、実際には、軍という組織の後ろに隠れていて、表には出ていない。

 そこで、自分が本来であれば、研究するべきところを、他の人にやらせようとして、その白羽の矢が立ったのが、この二人の博士、

「竹中博士」

 と、

「湯川博士」

 だったのだ。

 二人が、お互いに研究において、少し離れた考えを持っていることも分かっていた。そして、この研究がうまくいくことで、これからやってくるだろう。

「核の抑止力」

 という、

「核開発競争」

 の時代に対して、大きな警鐘を鳴らそうとしていたのだ。

 どうやら、この博士は、以前から、

「原爆開発」

 というものを、大統領に進言し、そのことを、その後、後悔したという人であった。

 ただ、この人は、表には出てきていない。

 実際に出てきた博士の手紙というのは、この博士が、アメリカ大統領に、進言するよりも、かなり後になってのことだったようだ。

 もっといえば、この科学者は、

「理論的に、核開発が可能である」

 ということを、証明した人だと言われている。

 その人は、実際に、表に出てきている人とは違う。それが、

「この世界の、あの時代に、パラレルワールドというものを創造したのだった」

 と言われてることだったのだ。

 だから、この時代に、

「竹中博士」

 と、

「湯川博士」

 の二人が存在下ということも、誰もしらないのだ。

 知っているのは、

「この村の人たちだけ」

 であり、この村が、日本の地図に残っているという証拠はないのだ。

 二人の博士の研究は、実際には、表の世界でも研究され、それが、どこかからか漏れたことで、

「例のSF作家の発想」

 につながったとうことである。

 そもそも、この

「パラレルワールド」

 という世界が、実際にあったのだということを、知っている人は結構いる。その人たちには、

「この世界をパラレルワールドというのだ」

 ということは分かってはいるが、それを証明することはできない。

 そして、この時代にも、

「オオカミ男」

 あるいは、

「吸血鬼ドラキュラ」

 という生物の存在が確認されたということも分かっている人もいる。

 しかし、それを公表すると、世界がパニックになるということで公表はできない。

 ただ、この生物が祖納するというのは、あくまでも、

「フランケンシュタイン」

 というものを存在させないための、これこそ、

「抑止力」

 というものになるのだろう。

 ということは、

「ドラキュラ」

 や、

「オオカミ男」

 というのは、パラレルワールドでの、

「核兵器」

 といえるのではないだろうか?

 核の抑止力の中には、

「フランケンシュタイン症候群」

 という考え方が入り込んでいて、パラレルワールドの証明になるということではないだろうか?

 この二つの研究が、

「こちらがパラレルワールドである」

 ということを分かっていて、こちらの研究を表世界に伝達することで、

「パラレルワールドが一つになる」

 という考えが生まれるということを、この村の長になっている博士は分かっているのだ。

 そして、博士は最終的に、

「フランケンシュタイン症候群を打破するために、フランケンシュタインを創造し」

 さらに、二人の研究員に、

「吸血鬼ドラキュラ」

 と、

「オオカミ男」

 というものを創造させることで、満月と血液から、

「フレーム問題」

 を解決させる、

 ということを考えたのだ。

 それができれば、一度歪んだ、

「パラレルワールド」

 と、今の世界が一緒になり、そこで、

「敗戦した日本国」

 であったが、時空の歪みで、少なくとも、

「敗戦国にしない」

 ということができるのだと考えていたのだ。

 そのことが、

「いかなる問題を引き起こすことになるのか?」

 ということまでは、頭が回らなかったのだろう。

 それが、パラレルワールドがなくなった時点で、

「この世界で、もう、パラレルワールドという、都合のいい世界はできないことになるのだ」

 ということであった。

 それを誰が証明できるというのか、

「すでに、表の世界のこの世は、核のボタンが押されているのであった……」


                 (  完  )

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満月と血液のパラレルワールド 森本 晃次 @kakku

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