才ある狐は尾を隠す 〜想ヰ屋奇譚

花守たすく

序章

《ニンゲン》という《イキモノ》の一生は、脆くて呆気ない。

どうにも面倒な《イキモノ》だとさえ思う。


人間の一生など、たかが知れた年月だ。

《大切なモノ》を想うこと自体が愚かで、浅はかだとさえ思う短い刻を生きる者。

たかが知れた年月しか想うことを許されやしない。

一生を終えてしまえば、うんもすんも言わさずその想いを手放さざる負えない。

神とか来世とか、そんな不確かなものに頼ることしかできない哀れな人間よ。


だが、そんな面倒な人間を羨ましくも思う。

大切なモノを想うことができる心を授かりし者。


長い刻を生き、心を失った捻くれ妖は今日も問う。

アナタノタイセツナモノハナンデスカ_

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